「長引く咳」ですぐに病院へ行った方が良い症状はご存知ですか?医師が監修!
咳は、風邪などの病気の症状として出ることが多いです。しかし、すぐに治らず咳が長引くことがあります。
長引く咳が症状として見られる場合、他の病気によって生じているケースもあります。中には重症化すると危険なものもあるため注意が必要です。
そこで本記事では、長引く咳の原因について解説します。考えられる病気・対処の方法・重症リスクの判断のポイントもご紹介するので参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
長引く咳の原因・対処法
長引く咳の原因は、どのようなものがあるのでしょうか。咳は身近な病気の症状であると思われがちであるため、軽視してしまう傾向があります。
しかし原因は様々であるため、把握しておくことは非常に大切です。ここでは、長引く咳の原因と対処法についてご紹介します。
長引く咳が起こる原因は様々ある
長引く咳は、その持続期間によって3つに分けられます。急性咳そう・遷延性咳そう・慢性咳そうの3つです。急性咳そうは3週間以内のものであり、遷延性咳そうは3~8週間長引くもので、慢性咳そうは8週間以上続くものをいいます。
長引く咳が起こる原因には、様々なものが挙げられます。
- 感染後咳そう
- 肺結核
- 百日咳
- 喫煙による咳
- 胃食道逆流症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 後鼻漏症候群
- 心不全
感染後咳そうとは、風邪や気道感染によって、咳をする神経が過敏な状態になっているために起こる病気です。風邪や気道感染後のため、3週間以上の咳が続く可能性があります。しかし、一般的には自然に治ることの多い病気です。
肺結核とは、結核菌の感染により発症する病気です。咳だけでなく、痰・血痰・倦怠感・発熱・寝汗などの症状を伴うことがあります。また、肺結核は飛沫感染ないし、空間に漂う飛沫核を吸い込む空気感染をする可能性があるため注意が必要です。
百日咳とは、百日咳菌の感染により起こる病気です。こちらは咳やくしゃみなどによる飛沫感染や接触感染の可能性があります。風邪のような症状ですが、咳が徐々に悪化して、場合によっては咳の刺激で嘔吐に至る場合もあるため注意が必要です。
喫煙によって咳が長引くケースもあります。長期にわたる喫煙は、慢性閉塞性肺疾患や肺がんなどの発症リスクを高める可能性も高いです。
胃食道逆流症は、主に胃酸が食道に逆流することで、胸やけ・咳・食道粘膜のただれなどを伴う病気です。
慢性閉塞性肺疾患とは、長期にわたる喫煙や遺伝を原因として発症する病気で、咳・痰・息切れなどの症状を起こすことがあります。
後鼻漏症候群とは、鼻水が喉へ落ちていく病気です。鼻炎や慢性副鼻腔炎などで後鼻漏が生じ、のどの痛み・咳・痰などの症状が生じます。
また、重篤な病気のひとつである心不全によって咳が長引くこともあります。心筋梗塞・狭心症・不整脈・弁膜症などの心臓の負担が原因となり、心臓のポンプの機能が弱くなると十分な血液が全身に送られなくなってしまうのです。その結果、酸素や栄養不足となり、息切れ・咳・疲労感などの症状を引き起こします。
このように様々な原因から咳が長引くケースがあり、中には緊急性が高いものもあるため、原因をある程度把握しておくことは非常に大切です。
2週間咳が続けば風邪ではない可能性が高い
長引く咳は、風邪などによって生じていると思う方も多いです。しかし、実は風邪によって2週間以上咳が続くことは多くありません。
風邪の原因は、80~90%がウイルスによるもので、残りは細菌によるものが一般的です。ウイルス性の場合、通常は免疫機能が働くため、安静にしていればほとんど自然に治ります。
細菌感染を合併した場合は、通常の風邪よりも重くなるケースもありますが、抗生剤の治療が有効です。そのため、風邪による咳であれば2週間以上続くことはほとんどありません。
2週間も咳が長引くようであれば、風邪以外の原因で咳が生じている可能性が高いです。
長引く咳の症状で考えられる病気
風邪により咳が長引くことは少ないとご紹介しましたが、どのような病気を原因として咳が長引くのでしょうか。先述したように長引く咳は様々な病気によって生じる可能性があります。
ここでは、先述した病気以外で長引く咳の症状で考えられる代表的な病気をご紹介します。
副鼻腔気管支症候群
長引く咳の症状で考えられる病気が、副鼻腔気管支症候群です。この病気は、慢性的に繰り返し上気道と下気道の炎症が起こります。気管支拡張症・慢性気管支炎・びまん性汎細気管支炎などの慢性的な下気道炎症をきっかけに、慢性副鼻腔炎などの上気道炎症が合併症として生じるのです。
この状態になると、粘り気のある鼻汁・鼻づまり・後鼻漏・咳払い・咳・痰など幅広い症状が現れます。この病気の原因は、明確にはわかっていません。
寝ている間に副鼻腔から鼻汁が気道に流れ込んだり、異物を外に排出するために機能する線毛に機能障害が起こったりすることを原因として発症するのではないかと考えられています。
咳喘息
咳喘息は、咳が2~3週間程度、場合によっては数カ月にわたって続く可能性のある病気です。日本における慢性的な咳の原因としては最も頻度が高いといわれています。
この病気の特徴として、咳を唯一の症状とする点が挙げられます。気管支喘息と混同されがちですが、咳喘息は喘鳴や息苦しさを伴いません。
咳だけが症状で、気管支喘息のように気管支が細くならないのです。咳喘息の主な原因としては、煙草の煙・花粉・ハウスダストによるアレルギー・寒暖差など多岐にわたります。
アトピー咳そう
長引く咳の原因としては、アトピー咳そうも代表的です。この病気は、咳受容体の感受性が高くなることで発症すると考えられています。
通常咳は、咳受容体が刺激されて脳に信号が伝わることで生じます。アトピー咳そうは、この咳受容体の感度が上がっているため、通常では反応しないような刺激にも反応してしまい咳が出てしまうのです。
反応する刺激としては、煙草の煙や会話による刺激などが挙げられます。
長引く咳の重症リスクを見極めるポイントとは?
長引く咳は、そのほとんどが風邪以外の病気によって生じることをご紹介しました。しかし、どのようにして長引く咳の重症リスクを見極めればよいのか気になる方も多いでしょう。
重症リスクを見極めるポイントとしては、次のようなものが挙げられます。
- 咳が続く期間
- 急に咳こんで止まらなくなる
- 天気により咳がひどくなる
- 夜間や明け方に咳が出る
- 会話中に咳が出る
- エアコンの風に反応して咳が出る
- 少しの運動で息切れする
- 喘鳴がする
上記のポイントに1つでも当てはまるものがあれば、風邪以外の病気の可能性が疑われます。
特に咳が続いている期間が2週間以上であれば、風邪以外の原因で生じている可能性が高いでしょう。
また天気や会話などの刺激によって咳が出るケースや、一度咳が出ると止まりにくいなどのポイントに当てはまるようであれば、重症リスクもあるため早期に医療機関を受診する方が良いでしょう。
長引く咳の治療法
長引く咳の原因をご紹介しましたが、このような症状が現れている場合の治療法はどういったものがあるのでしょうか。あらかじめ治療法を知っておくことも非常に大切です。
ここでは、長引く咳の治療法をご紹介するので参考にしてください。
喘息の治療薬
喘息の治療薬としては、主に吸入のステロイド薬と気管支拡張薬、およびその組み合わせが使われます。
吸入ステロイド薬が普及してから、喘息で死亡する人や入院する人の数が大幅に減りました。気管支拡張薬は、吸入タイプを主体として、吸入がうまくできない人は貼り付けタイプ・内服タイプを使い分けて治療を進めます。
吸入気管支拡張薬の吸いすぎは不整脈をおこすことがあり注意が必要です。決められた回数を守りましょう。ステロイド薬は、重症の人をのぞいて一般的には吸入タイプですが、使用後は必ずうがいをして口腔内カンジダ症や嗄声の予防が必要です。
喘息以外の治療薬
喘息以外の治療薬としては、それぞれの病気に併せて治療薬を使用する必要があります。例えば、先述した副鼻腔気管支症候群の場合、症状の重症度に合わせて薬を使い分けます。
軽症の場合は去痰薬を使用し、症状が進行している場合にはエリスロマイシン・クラリスロマイシン・アジスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬を使用するのです。
また、アトピー咳そうの場合は、まずヒスタミンH1受容体拮抗薬を使用します。この薬でも効果が見られない場合には、ステロイド薬を吸入するなどの治療が進められます。
このように、各種病気とその症状の度合いに応じて、適切な治療薬を使って治療を進めるのです。
すぐに病院に行った方が良い「長引く咳」症状は?
長引く咳に加えて「呼吸が苦しい」「ゼーゼー、ヒューヒューする」「胸が痛い」「血痰が出る」方は重大な病気が隠れている可能性があります。ただちに医療機関を受診しましょう。
症状が突然発症した場合は、特に注意が必要です。夜間に起こった場合は、朝まで我慢せず、救急対応可能な医療機関へ受診することも考慮してください。
行くならどの診療科が良い?
長引く咳の診療は吸器内科がおすすめです。
検査としては胸部X線や呼吸機能検査、必要に応じて血液検査が行われます。
受診料の目安(自己負担金額3割、薬代は含まない)
- 初診+胸部X線+呼吸機能検査:3,000~3,500円
- 初診+胸部X線+呼吸機能検査+炎症反応検査:3,500円~4,000円
- 初診+胸部X線+呼吸機能検査+アレルゲン検査:9,000円~10,000円
病院を受診する際の注意点は?
1週間以内に発熱があった場合は、受診される前に医療機関へ確認をしましょう(医療機関により受診方法が異なる場合があります)。
治療する場合の費用や注意事項は?
呼吸器内科では、吸入薬が処方されることが多いと思います。吸入薬は使い方を正しく理解することが大切です。医療機関か調剤薬局で吸入指導を受けましょう。
また、吸入薬を使用した後は副作用予防のためうがいを行ってください。個人差がありますが、抗アレルギー薬で眠気やだるさが強く出ることがあります。
特に、車の運転をよくする方(ドライバー)や精密機器の取り扱いを行う仕事の方は事前に医師へ相談しておきましょう。
まとめ
咳は風邪などの身近な病気の症状であるため、軽視してしまう方は多いです。咳が長引いても、風邪の延長ではないかと考えてしまう方は少なくありません。
しかし、咳が長引く場合はほとんどが風邪によるものではありません。そのため、隠れた病気が、気づかないうちに悪化している可能性があります。
長引く咳を引き起こす病気の早期発見や治療を行うためにも、咳の原因となる病気を把握して、違和感を感じた場合にはすぐに専門の医療機関を受診しましょう。
参考文献