膝の「筋肉からミシミシ音」は”女性に多い疾患”のサイン?他の症状も医師が解説!


監修医師:
松繁 治(医師)
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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
目次 -INDEX-
筋肉のミシミシ音とは
筋肉のミシミシ音とは、筋肉や靭帯が硬くなり、スムーズに動かなくなっている状態で動かそうとする際に発生する音です。そのほかにも、骨と骨がこすれたり、気泡が破裂したりするときにもミシミシ音が鳴る場合があります。 まずは体の部位別に、筋肉のミシミシ音の特徴を確認しておきましょう。- 膝からのミシミシ音: 膝のミシミシ音は、運動中や階段を上がるときよく聞こえます。関節内の気泡が破裂したり、靭帯や腱が骨の表面を滑ったりする際に生じる摩擦音が膝のミシミシ音の正体です。 そのほかにも、変形性膝関節症の初期症状として、軟骨がすり減って骨と骨がこすれている場合にもミシミシと音がすることがあります。
- 首からのミシミシ音: 首からのミシミシ音は、首を回したり、前後に動かしたりする際に聞こえることがあります。この音は、硬くなった首の筋肉を動かす際に筋肉や靭帯が擦れ合う摩擦や、関節内の気泡の破裂によって生じます。 首の骨が本来のS字カーブから真っすぐになっている「ストレートネック」の場合は、首を動かすとギシギシと音が鳴りやすい傾向です。
- 肩からのミシミシ音: 腕を上げたり回したりする際に聞かれる場合があります。この音は、肩の筋肉や腱が硬くなることで、動かす際に骨と擦れ合った場合や、関節内の気泡の破裂によって発生します。 そのほかにも、肩腱板断裂や五十肩(肩関節周囲炎)でも音が鳴ることがあります。肩腱板断裂や五十肩の場合には痛みを伴いやすい傾向です。
- 顎からのミシミシ音: 顎からのミシミシ音は、食事中やあくびの最中など口を大きく開いているときに聞こえることがあります。顎関節のクッションである関節円板がずれていたり、顎関節の構造が変形したりしていると顎のミシミシ音が発生しやすくなります。
- 手からのミシミシ音: 手からのミシミシ音は、おもに指を曲げたり伸ばしたりする際に生じやすいです。関節内の気泡の破裂や、腱が骨の表面を滑る際に生じる摩擦が原因で音が発生します。 そのほかにも、手首や前腕の腱が交差する部位で炎症が生じる「腱交差症候群」では、手を動かすときにミシミシ音が聞こえる場合があります。 また、加齢や過度な使用によって関節が変形し、動かす際に音が鳴ることがあります。
筋肉からミシミシ音がする場合に考えられる病気
ここでは、筋肉からミシミシ音がする場合に考えられる主な病気を紹介します。変形性膝関節症
変形性膝関節症とは、関節のクッションである軟骨がすり減って痛みが生じる病気です。変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症は主に以下のような原因で発症しやすくなります。- 性別: 男女比をみると、1:4と女性の方が多く発症する傾向です。
- 加齢: 関節軟骨は、年齢を重ねるとともに弾力性が低下し、使い過ぎによってすり減り、関節が変形します。
- 肥満: 肥満によって体重が増加すると、膝関節にかかる負担が大きくなり、関節軟骨のすり減りを加速させるおそれがあります。体重が5kg増加するごとに、変形性膝関節症を発症する可能性が30%以上高まるといわれています。
- 運動不足: 筋力や柔軟性が低下すると膝関節への負担がかかりやすくなります。特に、膝を支える筋力が低下すると、膝関節への負担が強くなるため注意が必要です。
- 職業的要因: 建設作業員など、ひざまずいたりしゃがんだりした姿勢で長時間作業をする職業は、変形性膝関節症を発症する原因の1つとして考えられています。
- 過去の怪我: 膝の怪我や手術歴があると、将来的に変形性膝関節症を発症するリスクが高くなるといわれています。 過去に前十字靭帯を損傷した場合は、手術しても変形性膝関節症を発症する可能性が3倍以上になるといわれています。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症の主な症状は下記の通りです。- 膝関節の痛み: 膝関節を動かした際に生じる痛みが代表的な変形性膝関節症の症状です。初期の段階では立ち上がりや歩き始め、階段の上り下りの時に痛みを感じるものの少し休めば痛みが軽減します。しかし、症状が進行すると歩くことが難しくなるほどの強い痛みや、安静時の痛みが生じます。
- 腫れ: 膝関節を繰り返し曲げ伸ばしすることで炎症が生じた結果、膝関節周囲に水がたまり、膝が腫れる場合があります。
- 可動域の制限: 変形性膝関節症においては、膝関節の動きが制限され、曲げ伸ばしが難しくなります。
変形性肩関節症
変形性肩関節症は、激しいスポーツや使いすぎなどによって、肩関節の軟骨がすり減り、関節が変形することで発生し、肩への痛みや動かしにくさが生じる病気です。具体的な原因や症状を確認しましょう。変形性肩関節症の原因
変形性肩関節症は主に以下のような原因で発症しやすくなります。- 加齢: 加齢とともに、関節軟骨が劣化しやすくなり、変形性肩関節症の危険性が高まります。
- 過度の使用: 重い物を持ち上げたり、同じ動作を繰り返したりすることで関節軟骨が損傷する場合があります。
- 外傷や怪我: 肩関節の脱臼や骨折、靭帯の損傷などの外傷を負ったことがある場合は、関節の安定性が低下し、変形性肩関節症を引き起こす可能性があります。
変形性肩関節症の症状
変形性肩関節症の代表的な症状は下記の通りです。- 肩の痛み: 動作時や重い物を持ち上げた時に、脇の部分である腋窩から肩の外側に痛みを生じやすい傾向です。また、症状が進行すれば着替えや家事を行うことが不便に感じられ、安静時や夜間にも痛みがみられる場合があります。
- 可動域の制限: 肩の軟骨が損傷することで肩の可動域が制限され、腕を上げたり前後左右に動かしたりすることが難しくなります。
- 腫れ: 変形性肩関節症の症状が進行すると、肩周囲の組織が炎症をおこし、腫れる場合があります。
肩腱板断裂
腱板とは、肩を安定させ、腕を動かす際に重要な役割を持っている以下の4つの筋肉の総称です。- 棘上筋
- 棘下筋
- 肩甲下筋
- 小円筋
肩腱板断裂の原因
肩腱板断裂の主な原因は下記の通りです。- 加齢: 年齢を重ねるにつれて、肩周囲の筋肉や靭帯の弾力性が低下し、腱板が断裂しやすくなります。
- 過度の使用: 重労働などで、肩を頻繁に使う場合は腱板に過度の負担がかかり、断裂のリスクが高まります。肩腱板断裂は、40歳以上の男性で、右肩に発症しやすい傾向です。
- 外傷: 事故や転倒などの外的な衝撃で、肩を強く打ったり、腕を急に引っ張られたりすることが原因で、腱板が断裂する場合があります。
- 肩の不安定性: 肩周囲の筋肉や靭帯などの軟部組織が緩く肩自体が不安定な場合は、動かした際の腱板への負担が増加するため、断裂を引き起こす可能性が高くなります。
肩腱板断裂の症状
肩腱板断裂の主な症状は下記の通りです。- 肩の痛み: 肩腱板断裂が生じると、肩を動かすときに痛みを感じます。初期段階では、動かしたときに痛みが生じる程度ですが、症状が進行すると安静時や夜間でも痛みが出現する場合があります。
- 可動域の制限: 肩関節周囲炎(五十肩)とは違い、初期は関節の動きが固くはなりにくいものの、痛みが強いため、いつも通りのように肩を動かすことが難しくなります。悪化してくると、関節自体の可動域が低下してきます。
- 筋力低下: 腱板が断裂するため、肩の筋力が低下し物を持ち上げるなどの肩を使った動作が難しくなります。
- 腫れや炎症: 肩の周囲が腫れたり、炎症が生じたりする場合があります。
腱交差症候群
腱交差症候群は手首や前腕の腱が交差する部位で炎症を起こす疾患です。初期段階では軽い不快感や痛み程度ですが、進行すると痛みが強くなり、手首の動きが制限される場合があります。腱交差症候群の原因
腱交差症候群の主な原因は下記の通りです。- 解剖学的な特性: 手首・前腕の腱の走行や関節の形状に異常がある場合は、腱が擦れ合いやすくなり、腱交差症候群の症状を引き起こす場合があります。
- 過度の使用: 手首をよく使う仕事やスポーツをする場合は注意が必要です。具体的には、大工仕事や手作業の多いデスクワーク、スポーツでは、野球やテニス、バドミントンなどが該当します。
- 加齢: 年齢を重ねると、腱や靭帯の弾力性が低下するため、発症しやすくなります。
腱交差症候群の症状
腱交差症候群の場合は、以下のような症状がよくみられます。- 痛み: 腱が交差する部分で痛みを感じます。この痛みは、手首を反らすなどの動作を行った際に強くなります。
- 腫れ: 腱の周囲が腫れたり、炎症が生じたりします。これによって、動きが制限される場合もあります。
顎関節症
顎関節症は、口を開こうとすると顎関節や顎を動かす筋肉に痛みが出たり、大きく口を開けられなくなったりする疾患です。顎関節症の原因は、いくつかの要素が複合的に関与することがほとんどです。顎関節症の原因
顎関節症の主な原因は下記の通りです。- 歯の噛み合わせの異常: 上下の歯の噛み合わせが悪いと、顎へ継続的に不均等な力がかかることで発症する場合があります。
- ストレス: 精神的なストレスや緊張が顎の筋肉に影響を与え、無意識に歯を食いしばるなど、無理な力がかかることが原因となります。
- 歯ぎしり: 睡眠中の歯ぎしりも、顎に過度の負担をかけ顎関節症を引き起こす原因となります。
顎関節症の症状
顎関節症の主な症状には以下のようなものがあります。- 顎の痛み: 顎や周囲の筋肉に痛みを感じることが多く、特に口を開けたり閉じたりする際に痛みが強くなります。
- 顎の音: 動かす際に「カックン」「コッキン」などのような音が鳴る場合があります。
- 口の開閉の制限: 口を大きく開けることが難しくなる場合があります。
- 頭痛: 顎の筋肉が緊張することで、頭痛が生じることがあります。
病気以外の筋肉からミシミシ音がする原因
とくに原因となる疾患がない場合でも、筋肉が硬くなって擦れ合った結果、ミシミシと音がすることがあります。痛みが生じていたり、動かしにくさを感じたりしていなければ様子をみてもよいでしょう。 ただし、膝や顎などの関節でミシミシといった音が鳴る場合は、病気の前兆として、関節の軟骨や半月板がすり減っている可能性もあるため注意が必要です。筋肉からミシミシ音がする場合に注意すべき症状
筋肉から「ミシミシ」と音がする場合、音以外で注意すべき症状や受診の際の注意点があります。筋肉のミシミシ音以外で注意すべき症状
音がするだけでなく、痛みや腫れを伴う場合は、筋肉や関節に何らかの問題が生じている可能性があります。また、音がする部分の動きが制限され、動かした際に生じる、一時的な音ではなく、運動時に常に音が鳴る際は注意が必要です。これらの症状がみられる場合は、早めに専門医の診断を受けましょう。診療科と受診する際の注意点
筋肉や関節の音に関する問題は、整形外科が主な診療科です。それ以外に、顎の音に関しては、歯科や口腔外科を受診しましょう。 また受診した際は、音が鳴る部位、痛みや不快感の有無、音が鳴る動作、過去の怪我や病歴などを伝えておくと、より正確な診断に役立ちます。まとめ
筋肉や靭帯が硬くなっている状態で、関節を動かした時に、筋肉がミシミシと鳴る場合があります。音が気になったとしても、必ずしも深刻な問題にはなるとは限りません。しかし、音が鳴るだけでなく、動かした際に痛みが生じたり、関節自体が動かしにくいなどの症状が生じる場合は、病気が隠れているかもしれません。少しでも気になる症状があったら、医療機関を受診しましょう。「筋肉のミシミシ音」で考えられる病気と特徴
関連する症状
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 変形性肩関節症
- 肩腱板断裂
- 肩関節周囲炎
- 腱交差症候群
- 顎関節症
- 関節リウマチ
- 頚椎症




