「正座ができない、膝が曲がらない」原因はご存じですか?対処法も医師が解説!

膝が曲がらず、正座ができないと感じたことはないでしょうか。原因がわからないまま放置をしてしまうと、症状はさらに悪化する可能性があります。適切な処置が遅れてしまい、取り返しのつかない状態になるのは避けたいものです。
この記事では、正座ができない、膝が曲がらない原因やそれらに対する治療方法、そして日常生活で行えるセルフケアを解説します。早めの対処が健康的な生活を守るためには大切です。ぜひ、参考にしてみてください。

監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
目次 -INDEX-
正座ができない、膝が曲がらない主な原因

膝が曲がらなくなる主な原因はさまざまです。太ももやふくらはぎの筋肉、膝関節など、どこの部位に問題があるのかによって原因と対処法も異なります。
- ・太ももやふくらはぎの凝りやハリ
- ・膝関節の炎症や怪我
- ・筋力低下や柔軟性の不足
- ・変形性膝関節症や加齢の影響
これらの原因について詳しく解説します。
太ももやふくらはぎの凝りやハリ
正座ができない原因として、太ももやふくらはぎの凝りや、緊張によるハリが考えられます。太ももやふくらはぎの筋肉が硬直すると、膝が曲がりにくくなり正座ができなくなってしまいます。
筋肉の凝りやハリは以下の理由によって引き起こされます。
- ・長時間同じ姿勢を続けることで血液の循環が悪くなる
- ・運動不足によって筋肉が硬直している
- ・水分やミネラルの不足で筋肉の機能が低下している
- ・塩分の過剰摂取で水分が溜まりむくんでいる
これらは生活環境だけではなく、病気によっても起こり得ます。そのため、筋肉の凝りやハリを引き起こす原因を知ることが大切です。
膝関節の炎症や怪我
膝関節に炎症や怪我があると、痛みや違和感を感じて正座ができなくなることがあります。
- ・変形性膝関節症
- ・関節リウマチ
- ・半月板損傷
これらは、膝関節に炎症を引き起こす代表的なものです。
関節リウマチは、免疫系の異常によって引き起こされる慢性的な自己免疫疾患です。膝関節の炎症と痛みを引き起こしてしまいます。また、半月板損傷では、スポーツや転倒などによる怪我で半月板が損傷をして炎症を伴います。
膝が曲がらない原因がこのような場合、安静を保ちながら適切な治療を受けなければなりません。痛みや違和感が強い場合は、炎症を抑えるための薬物療法が効果的です。
筋力低下や柔軟性の不足
膝を動かす筋力や柔軟性が低下してしまうと、正座をするのが難しくなります。
加齢に伴って筋力は自然に低下していきますが、適度な運動やストレッチをすることで改善も期待できます。日頃からの身体づくりが大切です。
変形性膝関節症や加齢の影響
加齢による変形性膝関節症も正座ができない原因の一つです。
膝関節の軟骨がすり減ることで関節がスムーズに動かせなくなり、痛みや曲げにくいといった症状を引き起こします。変形性膝関節症は、放置をしていても改善することはありませんので、専門医の診断を受けて適切な治療を開始することが重要です。
病院に行くべきタイミング

膝の悩みで病院に行くべきタイミングは、以下を判断基準にしてください。
- ・膝の痛みが数日続く場合
- ・膝が腫れて動かせない場合
- ・歩行や日常動作に支障が出た場合
放置をしていても改善することはありませんので、早めに受診を検討しましょう。
膝の痛みが数日続く場合
膝の痛みが数日間続いている場合は、病院への受診が推奨されます。3日以上症状が続いているのなら、自然治癒を待つのではなく医師に診断をしてもらいましょう。
膝が腫れて動かせない場合
膝が腫れてしまって動かせないような状態なら、早急に病院の受診が必要です。慢性的な病気が悪化していたり、半月板や靭帯を損傷していたりする可能性があります。
歩行や日常動作に支障が出た場合
日常動作に支障があり生活に影響が出ているなら、すぐに受診するようにしましょう。
- ・膝が曲がなくて歩きにくい
- ・椅子から立ち上がるときに痛みを感じる
- ・自転車のペダルを漕ぐ際に違和感がある
- ・階段の昇降がつらく感じる
これらが気になる場合は要注意です。早めに専門の医師に相談してください。
膝が曲がらない場合の治療方法

膝が曲がらず生活に支障がある際は、以下の治療法が行われます。ここでは手術以外の4つの治療方法を解説します。
運動療法
理学療法士の指導を受けながら、膝周辺の筋トレをしたり柔軟性を高めるストレッチを行うのが運動療法です。軽いストレッチや筋トレを行うのが一般的です。
筋肉量を増やして柔軟性を高めることで、膝の安定性が高まり、痛みや病気の進行を予防することが期待できます。
薬物療法
薬物療法では、膝の痛みや炎症を抑えることを目的に、鎮痛や抗炎症効果のある薬剤を内服、もしくは塗布をします。痛みの程度や症状に応じて処方する薬剤が選択されます。
- ・ロキソニン
- ・セレコックス
- ・カロナール
- ・ボルタレン
- ・モーラステープ
これらの非ステロイド抗炎症薬、いわゆるNSAIDsが一般的には使用されています。
痛みを抑える効果はありますが、長期的な仕様は副作用のリスクがあることには注意しておきましょう。
注射療法
注射療法には、目的に合わせて以下の2種類があります。
- ・ステロイド注射:鎮痛と抗炎症が目的
- ・ヒアルロン酸注射:軟骨の保護と可動域の改善が目的
強い痛みに対して、ステロイド注射は一定の効果が期待できますが、数週間で抗炎症効果は減弱していきます。ヒアルロン酸注射も同様に、痛みの緩和は期待できますが、病気が進行するとコントロールが難しくなってしまいます。
再生医療
再生医療は、膝の痛みを緩和するだけでなく、病気の進行を遅らせる可能性がある治療として期待されています。患者さん自身の細胞を利用した治療法で、膝軟骨の再生を目指した治療法です。
- ・PRP(多血小板血漿)療法
- ・培養幹細胞治療
幹細胞を用いた治療では、炎症を鎮めたり、損傷した膝組織を修復する働きがあります。手術のような侵襲もありませんので、治療時間や患者さんの身体的な負担を軽減させる治療法として注目されています。
日常生活でできる予防と対策

膝が曲がらなくて正座ができないといった、症状がひどくならないために、日常生活で行えるセルフケアのポイントを紹介します。
- ・バランスのとれた食事をする
- ・運動習慣を身につける
- ・ストレッチなどを心がける
- ・膝に負担がかからない生活習慣の改善に努める
- ・膝を冷やさないようにする
これらを生活にうまく取り入れることで、病院への受診を遅らせたり症状の改善が期待できるでしょう。
バランスのとれた食事をする
膝関節を健康に保つためにはバランスのとれた食事が大切です。以下の栄養素を意識して食生活のなかに取り入れましょう。
| 栄養素 | 役割 | 食品例 |
| カルシウム | 骨を生成して関節の安定性を保つ | 牛乳、チーズ、小魚 |
| ビタミンD | カルシウムの吸収を助ける | 鮭、卵黄、きのこ類 |
| ビタミンC | コラーゲンの生成を助ける | パプリカ、ブロッコリー |
| オメガ3脂肪酸 | 炎症を抑える働きがある | イワシ、アマニ油、クルミ |
| マグネシウム | 筋肉の緊張を緩和させる | ほうれん草、アーモンド |
| 亜鉛 | 組織の修復を促す | 牡蠣、牛肉、豚レバー |
暴飲暴食で食生活が乱れ、肥満になってしまうと膝への負担も大きくなってしまいます。肥満は、さまざまな生活習慣病の原因にもなるため、健康的な食生活の意識が大切です。
運動習慣を身につける
適度な運動で筋力や柔軟性を保つことも、膝への負担軽減に役立ちます。ウォーキングや軽いジョギングなど、膝に負担がかかりすぎない範囲での運動習慣が大切です。
毎日運動するのが難しければ、3日1回のペースで始めてみるのもよいでしょう。少しずつでも習慣として身につけることを検討してみてください。
ストレッチなどを心がける
筋肉の柔軟性に保つためには、日常的なストレッチを取り入れましょう。入浴後は筋肉が温まっているためストレッチのタイミングとしておすすめです。ストレッチの方法はさまざまですが、膝への負担を減らすためには下記のようなストレッチ方法があります。
- ・ハムストリングストレッチ
- ・ふくらはぎのストレッチ
- ・膝回りのストレッチ
- ・太ももの前のストレッチ
ハムストリングストレッチは、座った状態で片足を伸ばし、つま先に手を伸ばして太ももの裏側を伸ばします。太ももの前の部分のストレッチは、立った状態で片足を後ろに引き、足首をつかんで太ももの前を伸ばします。転倒しないように、手すりにつかまって行うのがよいでしょう。
太ももの筋肉の柔軟性は、膝への負担軽減にも効果的です。生活のなかにストレッチを取り入れるようにしてみてください。
膝に負担がかからない生活習慣の改善に努める
膝に負担がかからないよう、生活習慣を意識して改善させることも大切です。普段から正しい姿勢を心がけて、長時間の立ち仕事や無理な運動は避けるようにしましょう。
また、現在の生活スタイルが和式中心の方は、ベッドの使用や椅子の使用など洋式の生活スタイルに変えることもおすすめです。床に座ったり、布団で寝たりする和式の生活スタイルは、起き上がる際に膝関節への負担が大きい動きも少なくありません。そのため、椅子やベッドを使用すれば、膝を深く曲げる機会も減らすことができるでしょう。
膝を冷やさないようにする
膝が冷えると血行が悪くなって、痛みを引き起こしている原因物質が排出されにくくなります。そのため、痛みを感じやすくなることがあります。
日頃から膝を露出させない服装にしたり、膝かけを持ち歩いて防寒対策をしっかり行うようにしましょう。
まとめ
膝が曲がらない原因は、筋肉の凝りや柔軟性の低下、そして病気などさまざまです。これ以上膝が曲がらない状態を避けるため、できるだけ早く原因を特定して、適切な治療や予防策を受けることがおすすめです。膝に痛みや違和感を感じた場合は、放置せずに整形外科などを受診して、早めに原因の解消に努めてみましょう。



