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「鼠径部(足の付け根)の痛み」の対処法はご存知ですか?主な原因も医師が解説!

「鼠径部(足の付け根)の痛み」の対処法はご存知ですか?主な原因も医師が解説!

鼠径部の痛みを治すには?メディカルドック監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

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「鼠径部の痛み」症状で考えられる病気と対処法

鼠径部(足の付け根)が痛い症状はとても多く、ただの風邪から命に係わる疾患まで数多くあります。男性か女性か、チクチクした痛みか、腫れたような痛みか、しこりがある場合は柔らかいかゴリッとした固い感触かで原因は変わります。
くしゃみや咳の時だけ痛むなど、特徴のある疾患もあります。
鼠径部の痛みがどこにあるかで原因が分かるかもしれません。右側か、左側か、上側か、皮膚の表面か内側かで、原因が変わります。
何科に行けば良いか判断が難しいことがありますが、多くの症状は消化器内科で対応できます。不安になったら、できるだけ早く消化器内科の受診をおすすめします。

男性で鼠径部の痛みの症状で考えられる原因と対処法

男性、特に40代以上の男性によく見られるのは「鼠径ヘルニア」です。「脱腸」と呼ぶこともあります。力を入れると鼠径部にピンポン玉のようなコブが飛び出すのが特徴です。
男性の鼠径部には鼠径管(そけいかん)という器官があります。胎児のころに内臓にあった睾丸を外に出すための通り道で、通常は胎児の間にふさがります。
しかし、加齢で筋膜が弱くなると、ふさがった鼠径管がゆるんでしまい、この穴に腸が飛び出すのが原因です。
鼠径部の痛みに加え、くしゃみや咳、排便時など、お腹に力を入れると左右のどちらかの鼠径部からコブが飛び出すのが特徴です。
コブの中身は大腸で、放置すると壊死することがあります。痛みがなくても、すぐに消化器外科を受診しましょう。

女性で鼠径部の痛みの症状で考えられる原因と対処法

女性特有の鼠径部の痛みに「ヌック管水腫」があります。鼠径部にあるヌック管という器官に水が溜まり、痛みを起こすことがあります。
鼠径部にしこりが出来て、押しても引っ込まない、しこりが大きくなるときと小さくなるときがある場合は、この症状の可能性があります。
痛みが軽くても放置せず、できるだけ早く消化器外科を受診しましょう。月経周期に合わせて痛みが強くなる場合は、子宮内膜症を併発していることがあります。

鼠径部がチクチク痛む症状で考えられる原因と対処法

スポーツ、特にサッカーをしている方で鼠径部がチクチク痛む場合は、鼠径部痛症候群(グロイペイン症候群)の可能性があります。過度な運動や無理な動きが原因で発生し、発症すると治すのに時間がかかります。症状は、鼠径部だけでなく座骨、睾丸の裏側、下腹部や内股などの痛みです。
股関節や骨盤を支える筋量が減る、アンバランスで無理な姿勢で過度な運動をすると、痛みが発症します。
足首をねんざしたのに無理してプレーを続けると、足首からひざ、太もも、鼠径部、下半身へと負荷が増え、症状が悪化するため、注意が必要です。
悪化すると日常生活に支障が出るほど痛みが出ることがあります。ただちに運動を中止し、整形外科を受診しましょう。
左右どちらかの鼠径部に、皮膚の表面だけチクチク、ピリピリと歯痛のように傷む場合は帯状疱疹の可能性があります。痛みと同じ場所に水疱ができることが特徴です。しかし、痛みが先に発症して皮疹が遅れることもあるため皮疹がないこともあります。
放置すると症状が悪化して痛みが取れない後遺症が出ることがあるため、帯状疱疹が疑われた場合には、ただちに皮膚科を受診しましょう。発症後早めの治療で重症化を防ぎ、後遺症の軽減が期待できます。
また、50歳を超えたら帯状疱疹ワクチンを接種することで、発症、重症化を予防できます。

くしゃみをした時に鼠径部が痛む症状で考えられる原因と対処法

くしゃみや咳など、腹部に力が入るときに鼠径部が痛む原因は、鼠径ヘルニアが考えられます。
鼠径ヘルニアは放置しても自然治癒せず、悪化するだけです。飛び出した大腸が戻らなくなると大腸が壊死し、命を落とすことがあります。すぐ消化器外科を受診しましょう。

ストレッチをした時に、鼠径部が痛む症状で考えられる原因と対処法

ストレッチなど軽い運動を行うときに鼠径部が痛むときは、筋肉や腱の損傷、鼠径ヘルニア、ヌック管水腫、仙腸関節障害などの疑いがあります。運動選手の場合はグロイペイン症候群の可能性もあります。
姿勢が悪いとさらに症状が悪化することがあるため、普段から正しい姿勢を維持する習慣も身に付けましょう。
複数の原因が考えられるため、数日経っても改善しない場合はまずは整形外科を受診することをおすすめします。

左側の鼠径部の痛みの症状で考えられる原因と対処法

鼠径ヘルニア、筋肉や腱の損傷、尿路結石、仙腸関節障害など、さまざまな症状が考えられます。
まれに尿路結石が原因のことがあります。尿路結石は腰背部に激痛を伴うことが多いですが、時に鼠径部が痛むこともあります。
尿路結石が疑われる場合には、泌尿器科を受診しましょう。

右側の鼠径部の痛みの症状で考えられる原因と対処法

右側の鼠径部の痛みは左側の原因に加え、虫垂炎の可能性があります。虫垂(盲腸)は下腹部の右側にあり、炎症を起こすと下腹部痛から腹部全体に痛みが広がります。下腹部でなく鼠径部の痛みというふうに感じることがあります。
虫垂炎は10歳~20歳代での発症が多いですが、全年齢で発症します。発熱や嘔吐がある、症状が悪化する場合は、早急に救急外来を受診して下さい。
できるだけ早く、消化器内科もしくは消化器外科を受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「鼠径部の痛み」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

激痛を伴う場合は、消化器内科か救急外来へ

歩けないほど激しく痛む、時間が経つごとにどんどん痛みが強まる場合は、迷わず救急車を呼ぶか、救急外来を受診して下さい。発熱、関節の痛みなど、ほかの症状がある時は、同伴者が症状と、できれば発生時間をメモして救急隊と医療機関に提示しましょう。鼠径部に「痛くない」しこりが出来て治らない場合は、悪性腫瘍(癌)や良性腫瘍の可能性があります。
痛くないからと放置せず、できるだけ早く消化器外科を受診しましょう。

受診・予防の目安となる「鼠径部の痛み」ときのセルフチェック法

・鼠径部の痛みに腫れが伴う場合
・鼠径部の痛みが持続する場合
・鼠径部の痛みに腹痛を伴う場合
・鼠径部の痛みに皮疹(水疱)を伴う場合
これらの症状がある場合には、早めに消化器内科もしくは消化器外科の受診が望ましいです。皮疹を伴う場合には、皮膚科を受診しましょう。

「鼠径部の痛み」症状が特徴的な病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「鼠径部の痛み」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

鼠径ヘルニア

男性の鼠径部の痛みで代表的な症状です。鼠径ヘルニアは、大腸など腹部の臓器が鼠径部の筋膜を通してコブ状に飛び出す病気です。くしゃみや咳、排便時など、お腹に力を入れた時だけコブができることもあります。脱腸のコブは押せば戻ることがあり、この段階では痛みがないことがあります。しかし次第にコブを押し戻そうとしても戻らなくなり(嵌頓・かんとん)、そのまま放置するとうっ血した大腸が壊死してしまいます。鼠径ヘルニアは加齢、筋肉の衰え、重い物を持つ、くしゃみや咳が続くことで発症します。治療は外科手術です。腹部の鼠径管にメッシュ状の板を入れて、大腸の漏れを遮断するのが一般的な方法です。痛みが強い場合や、押しても引っ込まない場合は早急に外科または消化器外科を受診しましょう。男性に多い疾患ですが、女性が発症することもあります。女性は出産、加齢などで筋肉が衰えたときに発症します。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)

スポーツを行う方、特に片足でボールを蹴るサッカー選手に多く見られるスポーツ障害です。体幹と下半身の連動性不良による機能障害で、足の捻挫や肉離れを放置してプレーを続けると、どんどん悪化します。いったん発症すると、完治まで時間がかかる厄介な症状です。怪我から復帰直後やオフが終わった直後は、特に発症リスクが上がります。痛みはチクチクした違和感から、足が動かせなくなるほどの激痛まで個人差があります。運動時だけ痛む、何もしなくても痛みが治まらないなど、症状はさまざまです。治療法はマッサージとリハビリで、下半身の可動性、安定性、協調性を強化するために行います。
発症させないためにも、足の捻挫や肉離れを放置しない、不調があればその場で治療と入念なケアを行いましょう。症状が軽いうちに整形外科を受診し、適切な指導を受けることをおすすめします。

鼠径部リンパ節腫脹

鼠径部のリンパ節にできる腫れは、感染症や自己免疫疾患、腫瘍が原因で発生します。リンパとはウイルスや細菌から体を守る免疫機構の一つで、血管のように体中に張り巡らされています。リンパ節はリンパの関所のような役目があり、免疫細胞を活性化し、細菌やウイルスを捕まえます。一番多い原因は感染症で、何らかの原因で体内に細菌やウイルスが入るとリンパ節が腫れ、痛みを伴います。ウイルス性感染症は病状が改善すると、腫れが自然にひくことが多いです。細菌性感染症や結核、梅毒などが原因の場合は抗生剤や抗結核剤などを使用し、治療を行います。これらの腫れは「痛みがある」ことが特徴です。腫瘍が原因の場合は、腫れは硬く、触っても「痛くない」ことがあります。癌の一種の悪性リンパ腫、白血病や胃がん、乳がんの転移などで発生します。
鼠径部に限らず、リンパ節が腫れて痛い、痛くない腫れがある場合は、早急に内科を受診しましょう。

ヌック管水腫

ヌック管水腫は、女性特有の症状です。胎児期の女児に形成される「ヌック管」が塞がらずに残り、そこに体液がたまることで発症する病気です。小児から成人まで、女性には発症リスクがあります。小児の場合は自然治癒する可能性があり、症状が軽い時は経過観察を行います。しかし成人が発症すると子宮内膜症や鼠経ヘルニアの合併症を起こすことがあります。症状が重い場合やリスクがある場合は手術が必要です。
腫れや痛みがある、痛みがなくても鼠径部にしこりができて治らない場合は、早めに病院を受診しましょう。成人は消化器外科、小児は小児科(できれば小児外科)が対応します。

仙腸関節障害

仙腸関節障害は、腰骨と骨盤をつなぐ「仙腸関節」に異常が起こり、腰や骨盤に痛みを生じる病気です。仙腸関節は2~3mmしか動かない関節で、何らかの理由で動かなくなると周囲の部位に痛みなど悪影響を与えます。原因は姿勢の悪さ、過度な運動、外傷、出産などで「産後の腰痛」「ぎっくり腰」などが有名です。仙腸関節障害は腰痛が多いですが、20%ほどは鼠径部に痛みが発生します。歩き始めだけ痛いが歩き続けると痛みが治まる、椅子に座る、前かがみになると痛む、あおむけに寝られないなど、さまざまな症状が現れます。対処法は炎症を抑えるための薬物療法や骨盤ゴムベルトの着用、リハビリなど理学療法が一般的です。痛みが強い場合は、仙腸関節に仙腸関節ブロックを行います。
痛みが持続する、日常生活に支障が出る場合は、早めに整形外科を受診しましょう。

慢性疼痛

慢性疼痛は、3ヶ月以上持続する痛みの総称です。全身のあちこちに痛みが現れますが、鼠径部など一部だけに発症することもあります。
原因は神経の異常や炎症、心理的ストレスなど多岐にわたります。治療法は痛みの緩和を目的とし、薬物療法、理学療法、心理療法が用いられます。痛みが日常生活に支障をきたす場合や、自己管理が難しい場合は早めに病院を受診しましょう。
ペインクリニックや麻酔科、整形外科で治療を行います。医師と相談し、適切な治療計画を立てることが改善の近道です。

「鼠径部の痛み」の正しい対処法は?

まずは安静にして、痛みが和らぐか確認しましょう。休めば痛みが消える、和らぐなら、安静にして徐々に回復していくなら様子見でも良いでしょう。ただし運動をしている方はグロインペイン症候群の可能性があります。ただちに整形外科を受診し、適切な治療とリハビリを行い、重症化を防ぎましょう。痛みが身体の内側か、表面かでも原因が異なります。もし左右どちらかの鼠径部だけ、皮膚の表面がピリピリ傷む場合は帯状疱疹の可能性があります。放置すると後遺症で痛みが長期間痛むことがあるので、早急に皮膚科を受診しましょう。
お腹に力を入れると鼠径部にコブが飛び出す、月経周期でコブの大きさや腹痛が変化するなどで原因が分かることがあります。
数日経っても痛みが続く、痛みがどんどん強くなる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
どこの科に行けば良いか分からないときは、消化器外科をおすすめします。

「鼠径部の痛み」症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「鼠径部の痛み」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

鼠径部の痛みは何が原因ですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

原因はとても多く、生まれつきのものから生活習慣、感染症、免疫疾患、加齢や出産後、スポーツ、事故までさまざまです。鼠径部が痛くなる原因に心当たりがあるでしょうか。たとえば無理な運動をしていると、体幹と下半身の筋肉が連動できなくなり、グロインペイン症候群を発症します。出産後に発生したら、仙腸関節障害かもしれません。風邪をひいた後に発生したら、リンパ節が腫れる鼠径部リンパ節腫脹が考えられます。

鼠径部の痛みはストレスが原因ですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

慢性疼痛という、原因不明の痛みが続く症状があります。慢性疼痛はストレスで悪化することがあります。まずは、原因が何かを調べましょう。原因が特定できず、痛みのみ持続する場合には、ペインクリニックで痛みをコントロールしながら、リラックスできる時間を増やしましょう。

鼠径部の痛みは何か病気でしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

鼠径部ヘルニアや仙腸関節障害、リンパ節の腫れ(鼠径部リンパ節腫脹)など、さまざまな病気の可能性があります。鼠径部にコブができる、発熱など、痛み以外の自覚症状がある場合は、できるだけ正確に医師に伝えて下さい。問診に痛み以外の症状を記載する、箇条書きのメモを渡すのがおすすめです。単なる風邪が原因のこともありますが、悪性腫瘍や自己免疫疾患など、長期間の治療が必要になる病気が隠れているかもしれません。

まとめ 鼠径部の痛みはまず消化器内科受診を

鼠径部の痛みは原因になる疾患がとても多いです。そのため、自己判断で放置すると危険なこともあります。数日経っても痛みが取れない場合は、ただちに消化器内科など医療機関を受診しましょう。「鼠径部にコブができる」「発熱」「鼠径部だけでなく、下腹部なども痛い」などの症状が併発するときは、必ず医師に伝えましょう。特に、サッカーなどスポーツをする方は、軽い足首の捻挫や肉離れでもただちに休み、治療するなどケアが必要です。
放置すると症状がどんどん悪化することがあるので、気になる症状がある場合はできるだけ早く医療機関への受診をおすすめします。

「鼠径部の痛み」症状で考えられる病気

「鼠径部の痛み」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器外科の病気

  • 鼠径部ヘルニア
  • 仙腸関節障害
  • 慢性疼痛
  • ヌック管水腫

整形外科の病気

  • グロインペイン症候群

皮膚科の病気

外科の病気

  • リンパ節の腫脹

「鼠径部の痛み」に似ている症状・関連する症状

「鼠径部の痛み」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • ひざが痛い
  • 発熱がある
  • 皮疹(水疱)がある

鼠径部から下腹部や内股など、他の部位に痛みが広がることがあります。虫垂炎など意外な疾患が原因のこともあります。痛みがどんどん強くなり、痛い範囲が広がる場合はただちに救急車を呼ぶか、救急外来を受診しましょう。

この記事の監修医師