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「全身が痛い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

「全身が痛い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

スポーツの後の全身筋肉痛は、ごく一般的な症状といえるでしょう。しかし、それらの要因がないのに全身が痛い場合は注意が必要です。

全身が痛む場合、感染症から自律神経失調症まで原因となる様々な病気が判明しています。そのため、特に思い当たる要因がないのに全身が痛む場合は注意が必要です。

ここでは、全身が痛む時に考えられる原因や病気について解説します。また、全身の痛みという症状とストレスとの関係についてもご紹介します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

全身が痛い症状と原因

久しぶりに長時間のスポーツをした後や、長時間歩いた後などが原因で全身が痛くなることはよくあることです。しかし、そういった思い当たる原因がないのに全身が痛くなるのは何らかの病気の症状として全身の痛みが現れている可能性があります。そこで、ここでは考えられる原因について痛みの種類に分けてご紹介します。

筋肉痛のような痛みが全身にある時に考えられる原因

もし思い当たる原因がないのに筋肉痛のような痛みがある場合、線維筋痛症リウマチ性多発筋痛症が疑われます。筋力の低下がある場合は横紋筋融解症も考えられます。リウマチ性多発筋痛症は、関節周辺の筋肉に炎症を起こす筋痛症です。50歳以上の高齢者に多くみられます。筋肉痛以外にも手指などの関節の腫れや手の甲のむくみといった症状が出ることがあるのです。横紋筋融解症は筋肉が壊れて壊死してしまう病気で、脂質異常症や一部の薬剤が原因で発症します。骨格筋の細胞が壊死してしまうため、全身の筋肉が痛みます。急性腎不全など腎機能障害を起こす可能性があるため、迅速な対応が必要になります。線維筋痛症は全身にかけて痛みを感じる慢性的な病気です。痛みに対するストレスを強く感じるため、抑うつ状態になったり不眠状態になったりと生活に支障が出やすい病気でもあります。

全身の痛みとだるさを感じる時に考えられる原因

全身の痛みと同時に強いだるさ(倦怠感)を感じる場合、慢性疲労症候群が当てはまる場合があります。発熱を伴う場合は感染症の可能性が高いです。慢性疲労症候群の明確な原因はわかっていませんが、ホルモンバランスや自律神経の乱れが原因だという説もあります。怪我をしたり感染症にかかったりといった病歴がある場合や、睡眠不足や運動不足が原因の方もいらっしゃいます。しかし、特に健康面で問題のなかった方でも発症するケースがあるようです。全身の痛みの他に、以下のような症状もみられます。

  • 集中力低下
  • 頭痛
  • 不眠、仮眠
  • 喉の痛みや腫れ

十分に休養をとると回復することがありますが、根本的な治療にはならないことが多いです。内科を受診して、投薬による治療を開始するようにしましょう。

全身の痛みに発熱を伴う時に考えられる原因

全身の関節や筋肉が痛み、発熱を伴う場合はインフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症が疑われます。また、細菌感染症による敗血症が原因で痛みがでるケースもあります。尿路感染症や胆道感染症などから敗血症になり全身に痛みがでている可能性があるのです。しかし、もし咳や鼻水などの症状がない場合は膠原病の可能性もあります。膠原病とは、全身の組織に原因不明の発熱を伴う炎症がみられる病気で、リウマチや全身性エリテマトーデスも膠原病の1種です。膠原病は、特に原因が思い当たらない不明熱として診察したら発見されたケースが多いため、もし心当たりがある場合は内科の診察を受けるようにしましょう。膠原病には、遺伝的な要因で発症するケースと、環境的な要因で発症するケースがあります。しかし、明確な原因は特定できないことが多いです。

全身が痛いときの受診の目安と診療科

もし全身の痛み以外に数日間の発熱等の症状が出ている場合は、内科を受診しましょう。その際は「いつから痛いか」「いつから発熱しているか」といった項目を具体的に説明できるようにしておくとスムーズに診察が行えます。発熱等の症状を伴わないが生活に支障が出るほど全身が痛い場合も受診の目安となります。この場合は原因がわからず診療科も判断がつかないことが多いかもしれません。そのため、まずは内科やかかりつけの医療機関を受診するようにすると良いでしょう。

全身の痛みが症状として現れる病気

全身の痛みが症状として現れる病気にはいくつかの種類があります。その中でも今回は「線維筋痛症」・「関節リウマチ」・「更年期障害」・「自律神経失調症」の4種類を解説します。

線維筋痛症

激しい運動をしたわけでもなく、特に考えられる原因がないのに筋肉痛のような痛みが全身に現れた時、考えられるのは線維筋痛症です。線維筋痛症は、全身に痛み・こわばり・疼痛の症状が出る病気で、特に首・肩・胸・腰・手足に痛みが多くみられます。原因は判明していません。ただし、睡眠不足・ストレス・外傷が発症リスクを高めるといわれています。症状である全身痛ですが、これは痛い部分に何らかの異常があるわけではありません。脳の痛みを感じる部分が、普通の人よりも痛みを強く感じやすくなってしまっていることから感じる痛みです。痛みを強く感じるため、全身がこわばったり症状に対して不安になりやすくなったりします。そのため命に関わる病気ではないですが、日常生活に大きく支障が出るといわれている病気です。基本的には対症療法が一般的で、あまりにも痛みが強い場合はステロイド剤や鎮痛剤が処方されることがあります。

関節リウマチ

関節リウマチとは、免疫異常によって全身の関節に炎症が起きる病気です。症状によっては全身の痛みを感じることがありますが、痛みの程度をよく確認してみると関節周辺に集中しています。症状が進行すると関節が変形したり、機能障害をきたしたりといった症状が現れます。関節リウマチが疑われる場合、行われる検査は主に血液検査です。血液中のリウマトイド因子や抗CCP抗体をチェックします。どちらも陽性の場合は関節リウマチと診断されます。関節リウマチの原因は明らかにされていません。ただし、遺伝的要因や喫煙、歯周病を始めとした病気が発症リスクを上げると考えられています。

更年期障害

更年期障害の女性には様々な症状が起こります。その中には関節痛など全身の痛みを伴う症状も多くみられます。女性ホルモンであるエストロゲンは、コラーゲンの生成を促進する働きをもつホルモンです。コラーゲンといえば肌というイメージが一般的ですが、実は軟骨もコラーゲンが作っています。更年期障害によりエストロゲンの分泌が減少するとコラーゲンの生成も減少し、軟骨がすり減ってしまうのです。それによって関節痛が引き起こされると考えられています。

自律神経失調症

自律神経失調症は様々な症状を引き起こしますが、その中には全身倦怠感や全身の筋肉痛も含まれています。特定の病気でないのにそういった症状がある場合にも、自律神経失調症と診断されることが多いです。自律神経失調症と診断されても、慢性的に痛む部位によって緊張性頭痛や線維筋痛症など別の病名に変わることもあります。いずれにせよ、自律神経失調症が起こる要因を特定しない限りは完治が難しい病気とされています。

全身が痛い原因はストレスと関係がある?

ストレスが原因で様々な病気になることは多く知られるようになりました。全身の痛みという症状を引き起こす病気にも、ストレスが関係して起こることのある病気があります。始めは原因がわからず、不定愁訴とされることが多いです。しかし、心療内科などで診察を進めているうちに原因がストレスだと判明することもあります。ストレスが原因の場合、対処法はストレスの原因となる環境(仕事や学校など)から離れるという対処が一般的になります。また、投薬治療は補助的な役割を持つことが多いです。ほとんどがストレスをできる限り排除することが治療の近道となります。

全身が痛いときの対処法

もし突然全身が痛くなったらどうやって対処したら良いのでしょうか?自宅でできる対処法についてご紹介します。

使用できる市販薬

まず全身が痛くなった場合に効果の期待できる市販薬は、内服の痛み止めです。普通の筋肉痛と違い、湿布などの外用薬が効くことはあまりありません。何故かというと、なんらかの病気が原因の全身の痛みは、筋肉の炎症が原因の痛みではなく神経性の痛みが原因であることが多いからです。また痛みの箇所も多くなり、何処に湿布を貼ればよいのかわからないことがあります。そのため、痛み止めは内服薬を服用すると良いでしょう。ただし、1週間以上市販薬を飲み続けている場合は、医療機関を受診するようにしましょう。痛み止めだけでは原因が取り除けない可能性が高いです。

自分でできる対処法

全身が痛む時に自分でできる対処法は、とにかく安静にすることです。もし運動などによる筋肉痛であった場合、安静にすると成長ホルモンが分泌されて壊れた筋繊維がスムーズに修復されます。病気が原因の場合も安静にすることで痛みが落ち着く場合があるため、まずは安静にすることが必要です。また、市販の痛み止めで痛みが和らぐことがあります。ただし、あまりにも痛みが続く場合や痛み以外の症状が出る場合は医療機関を受診することを検討しましょう。

まとめ

全身が痛いと生活に支障が出るため、できればすぐに治ってほしいものです。しかし、その裏には思わぬ病気が隠れている可能性もあります。

そのため、痛みと共に発熱やだるさ等の症状を伴う場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。

痛くて動けない場合は、市販の内服薬(痛み止め)が有効なこともあります。痛みが和らいでから医療機関を受診するというのも1つの選択肢です。

この記事の監修医師