「睾丸が少し痛む」症状で考えられる病気は?放置した場合のリスクも解説!


監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科
目次 -INDEX-
睾丸が少し痛むときに考えられる病気
早速ですが、睾丸が少し痛むときに考えられる病気をみていきましょう。睾丸に痛みが生じる病気は以下のとおりです。
- 睾丸炎
- 睾丸上体炎
- 睾丸捻転
- 精索静脈瘤
- 陰嚢水腫
- 睾丸腫瘍
睾丸炎
睾丸炎は、睾丸に炎症が起こる病気です。主に細菌やウイルス感染が原因で起こるものです。症状としては睾丸の痛み・腫れ・発熱が伴い、尿道や前立腺から感染が広がることがあります。流行性耳下腺炎(おたふく風邪)を思春期以降に発症した場合、約20%が睾丸炎を引き起こすとされています。
流行性耳下腺炎を発症してから3~5日目に痛みとともに睾丸が腫れて、症状が悪化すると、精子形成障害を起こす可能性があるため注意が必要です。
睾丸上体炎
睾丸上体炎は、精子を一時的に貯蔵する睾丸の横につながる部位に炎症が起こる病気です。クラミジアや淋菌などの細菌やウイルス感染が原因で発症することもあります。一方で、どの細菌によって睾丸上体炎を引き起こしているのかをはっきりさせることが困難な場合もあります。痛み・腫れ・発熱といった症状がみられますが、片方の睾丸に限局して現れることがほとんどです。
睾丸捻転
睾丸捻転(せいそうねんてん)は、睾丸が陰嚢内でねじれる病気です。どの年齢にも発症しますが、特に乳児期あるいは思春期に発症しやすいとされています。痛みが激しく現れるため、症状には気付きやすいですが、ねじれによって血流が遮断されると睾丸が壊死する危険性があります。
処置が遅れると睾丸機能を失う可能性があるため、緊急の治療が必要です。突然痛みが現れた場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。
精索静脈瘤
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)は、睾丸の静脈が膨らんで血液が逆流する病気です。思春期に発症しやすく、発症する割合は睾丸の左側が約80%・両側が約15%・右側が約5%と報告されています。精索静脈瘤の発症原因は、いまだ解明されていません。鈍い痛みを感じる・長時間立っていると痛みが強くなる・運動後に不快感があるなどの症状が現れます。ほかにも精索静脈瘤を発症すると起こる症状は以下のとおりです。
- 睾丸内温度が2~3度ほど上昇
- 酸化物質(活性酸素)・腎臓・副腎の代謝産物の増加
- 睾丸内の低酸素状態
造精機能と精子の質の低下は、不妊の原因になります。実際に男性の約10〜20%に精索静脈瘤が認められ、約30〜40%が男性不妊症の原因を占めているため、注意が必要です。
陰嚢水腫
陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)は、男性の性器を包む袋の部分である陰嚢にお腹のなかの水分が降りてきて溜まる病気です。生まれたばかりの男の子に発症しやすく、通常であれば良性の疾患であり、痛みを伴わないことがほとんどとされています。しかし、急激に痛みが強くなることもあるため、早期発見と早期治療が求められます。
無症状で進行することがほとんどですが、睾丸に圧迫感・不快感・重さを感じるなどの症状を自覚した場合には陰嚢水腫である可能性が高いといえるでしょう。
子どもの陰嚢水腫は、暗くした部屋のなかで陰嚢に懐中電灯を押し当てると、陰嚢全体が赤く透けてみえることが特徴です。ただし、極めて稀な例ですが、精巣腫瘍を発症している場合もあります。
陰嚢水腫かもしれないと感じたら、医療機関を受診するように留意しましょう。
睾丸腫瘍
睾丸腫瘍は、その名のとおり睾丸に悪性腫瘍(がん)が発生する病気です。初期症状はほとんどありませんが、睾丸にしこりや腫れが現れて発見される傾向にあります。しかし、約30〜40%の割合で下腹部痛や重圧感を覚えたり、睾丸に痛みがあったりすると約10%が訴えているとの報告もあります。
睾丸腫瘍は若い男性が発症しやすく、転移する危険性もあるため注意が必要です。発見が遅れると治療が難しくなることもあり、定期的な検診が推奨されています。
睾丸が少し痛むときは何科を受診すべきか
「睾丸が少し痛むな」と感じた場合には、泌尿器科を受診しましょう。泌尿器科は、男性の生殖器や泌尿器に関する病気に特化した診察を行っています。睾丸に関連する痛みや異常にも迅速に対応してくれるため、安心感があります。痛みよりもしこりや腫れが気になる場合は、泌尿器科または腫瘍内科の受診がおすすめです。睾丸捻転のように緊急を要する症状がみられる場合があるため、あらかじめ通院しやすい医療機関をみつけておきましょう。
泌尿器科では、性病に関連した検査も受けられるため、定期的な検診が推奨されています。また、定期的な検診であれば保健所でも受診が可能です。保健所では一般的な視診・血液検査・尿検査・PCR検査が受けられます。
地域によっては保健所で無料匿名検査を行っている場合もあるため、興味のある方はぜひご自身の地域の保健所にあらかじめ確認を取ることをおすすめします。適切な治療を受けて、症状の悪化を防いでいきましょう。
睾丸が少し痛むときに行われる検査
睾丸が少し痛む場合には、痛みの原因を特定するためにいくつかの検査が行われます。考えられる検査は以下のとおりです。
- 視診・触診
- 超音波検査
- 血液検査
- 尿検査
- CT検査
視診・触診
まずは視診・触診が行われます。視診は、痛みや腫れの場所を確認することが目的です。触診では、睾丸の硬さ・大きさ・腫れの位置を確認し、睾丸捻転や睾丸腫瘍の兆候がないかをチェックします。
視診・触診によってこの後に解説する検査を駆使して、病気の特定と治療方法を検討していきます。
超音波検査
超音波検査は、睾丸の状態をより詳細に調べるためのものです。睾丸の血流の確認・腫瘍の有無・睾丸上体炎や陰嚢水腫を発症していないかを可視化できます。痛みや副作用がほとんどない状態で、内部を検査できます。
血液検査
血液検査は、感染症や炎症反応がないかを調べるためのものです。視診・触診で睾丸炎・睾丸上体炎・性病などが疑われる場合に、細菌やウイルスに対する抗体が体内にあるかを調べることがあります。ほかにも睾丸腫瘍をはじめとしたがんマーカーとして、さまざまながんによって作られるタンパク質を数値化して、診断補助や治療の効果判定として使用されます。
がんマーカーはあくまでもがんの種類や臓器ごとに特徴のある物質を数値化する補助の役割を持つ検査であり、がんマーカーだけで病気を特定するものではないことに留意しましょう。
尿検査
尿検査は、性病が疑われる場合に適用されるものです。尿から細菌やウイルスに感染している兆候がないかを調べます。この尿検査によって、クラミジアや淋菌を特定できる検査方法です。クラミジアや淋菌は初期症状がほとんどなく、無自覚なままパートナーにも感染させてしまう恐れがあります。
子どもを望んでいるパートナーが性感染症に罹患した場合には、母親から赤ちゃんへ感染する母子感染により、先天性の身体障害を引き起こす可能性は否定できません。
このようなリスクを軽減させるために有効となるのが尿検査です。痛みや副作用もなく検査できます。
CT検査
CT検査は、X線を用いて睾丸周囲の構造を詳細に撮影して、状態を調べるために使用するものです。さまざまな方向から撮影して、身体のなかにある骨・脂肪・水分・空気などの成分によるX線の吸収率の違いによって身体の断面を画像化します。
断面の連続画像を作成することで、身体のなかの状態を立体的に把握できるため、特に腫瘍をはじめとした大きな病変が疑われる場合に適用される検査方法になります。
がんの転移の有無を調べることが目的とした検査方法です。
睾丸の痛みを放置した場合のリスク
睾丸の痛みを放置してしまうと、いくつかの深刻なリスクを伴う可能性があります。例えば、睾丸捻転は睾丸がねじれて血流が遮断されると睾丸が壊死するため、処置が遅れると睾丸の摘出が余儀なくされることがあります。またクラミジアや淋菌などの感染症が進行すると、睾丸や睾丸上体の痛みが悪化するだけでなく、膿が溜まって不妊症を引き起こす危険性があるため注意が必要です。
さらに睾丸腫瘍を発症していた場合には、早期発見と早期治療を受けられないと、がんが身体全体に転移して治療が困難になるといったリスクを伴います。
睾丸の痛みだけでなく、腫れ・しこり・発熱などの症状を自覚した場合には、速やかに医療機関を受診することが大変重要です。急激に症状が現れることもあるため、定期的な検診を受けるよう留意しましょう。
まとめ
今回は、睾丸に痛みが生じる病気・何科を受診すべきか・検査内容・放置した場合のリスクについて解説しました。睾丸に少しでも痛みを感じた場合は、何らかの病気が隠れている可能性が大いにあります。我慢したり痛みを放置したりせず、自覚症状が現れたら速やかに医療機関を受診しましょう。
早期発見と早期治療につなげるために、通いやすい泌尿器科や腫瘍内科をあらかじめみつけておくことも大切です。定期的な検診や、すぐに医療機関を受診できる環境を整えておきましょう。