「記憶力がない」原因はご存じでしょうか？考えられる病気について医師が徹底解説！

記憶力がない時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか？Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

「記憶力がない」原因と対処法

日常生活において、記憶力の低下を感じることはありませんか？ 例えば、ここ最近すぐに物を忘れたり、予定を思い出せなかったりすることが増えたと感じるかもしれません。もちろん「年のせい」「認知症」という場合もあるでしょうが、特に若い方の場合、気が付けば治せる疾患のことも十分あり得るのです。 この記事では、記憶力が低下する原因とその対処法について、あまり知られていない疾患の治療法に至るまで医師の視点から詳しく解説します。

記憶力がない原因と対処法

そもそも「記憶力低下」には大きく２つに分かれます。「記憶することができない」という状態と「記憶することはできるば、すぐに忘れてしまう」という状態です。 「記憶力がない」という表現は、全体的に記憶を形成する能力が著しく低下してインプットできない状態を指します。この場合、情報を覚えること自体が難しいという問題が主ですね。したがって、例えば日常生活では以下のような問題が生じるでしょう。
●友人や上司と会話しても会話した内容を覚えられず仕事に支障がでる。
●初対面の人や久しぶりに会った知り合いの名前を覚えられず、失礼な印象を与えてしまう。
●職場で新しい機器の操作手順を読んでも覚えられず、毎回指示書を見直さなければならない。
このような場合、脳のインプットする部分に問題が生じていることがわかります。これをより詳しくすると、情報は目や耳などの感覚神経で注意を向けた情報だけを脳の中に入れる（全ての刺激を脳に蓄えると脳がパンクするため） 感覚神経から重要だと判断された情報が短期記憶（ワーキングメモリ）に移行される。短期記憶は情報を一時的に保持し、すぐに使える状態にしておくために必要。 そして、情報を脳が理解しやすい形に変換するプロセスをへて、長期記憶として脳に保存される。という流れを経てインプットされるので、この中のどこかに障害が起きていることがわかりますね。 医師はこれらのうちどの障害なのかを様々な検査から見極めて、正しい対処法を模索していきます。

記憶力がなく、すぐ忘れてしまう原因と対処法

一方、「記憶力がなく、すぐ忘れてしまう」というのは、例えば、日常生活では次の問題が生じることがありますね。
●友人や家族との会話の内容は頭に入るのにすぐに忘れてしまい、同じ話を何度も繰り返すことになる。
●外出する際に、鍵、財布、スマートフォンなどの持ち物を頻繁に忘れる。
●家事の最中に次に何をすべきかを忘れてしまい、タスクを中断してしまう。
要するに、一回は覚えていたけれど、他の作業をしているうちにすぐに記憶から外れてしまう状態です。実は、この状態は単純な記憶力低下よりもっと原因が絞られた状態になります。なぜなら一度記憶できているので「目や耳の感覚神経から情報を変換する過程」「感覚神経からの情報が一時的にワーキングメモリに移行する過程」は正常だとわかるからです。ですから「短期記憶として保持する時間が短い」のか「短期記憶の保持する容量が少ない」のか「短期記憶から長期記憶として保存される過程に問題があるのか」のいずれかになります。もちろん、ここの周囲の社会的環境やメンタルによる「一時的な脳の機能障害」も加わることでしょう。医師はこういった視点を持ちながら、注意深く対処法を考えていくのです。したがって、「記憶力がなくなっている」と考えるのであれば、病院にいって詳しく調べるのが大切になります。

すぐに病院へ行くべき「記憶力がない」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

重度の神経症状を伴う場合は、脳神経内科や脳神経外科へ

●急激な記憶力の低下：例えば、数週間前には普通に日常生活を送っていたのに、急に重要な情報を思い出せなくなったり、日常の簡単な作業を忘れてしまうようになった。
●徘徊や挙動不審が増えた：例えば、友人の家を訪れた際、帰り道が分からなくなり、数時間も迷ってしまうことが増えた。
これらの場合には、記憶力の低下が著しく、医療機関での治療が必要です。また、以下の場合には、重度の認知症というだけでなく、脳卒中などの緊急性を伴う疾患である可能性があるので、注意が必要です。
●片側の麻痺や感覚障害が現れた場合
●突然の言語障害が発生した場合
●突発的な視覚障害が起こる場合
●激しい頭痛が急に現れる場合
●歩行が急に困難になる場合
●強いめまいや立ち眩みが起こる場合
●嘔吐や吐き気が伴う場合
●意識が朦朧としている場合

重度の精神症状を伴う場合は、精神科へ

恐れるべきは脳疾患だけではありません。重度の精神疾患でもすぐに医療機関に行くべきです。例えば、以下の症状の場合はなるべく早く精神科にいくようにしましょう。
●重度のうつ症状：例えば、日常生活に興味を失い、常に気分が沈んでいて、記憶力の低下が著しい場合。
●異常なストレスや不安：日常的なストレスや不安が原因で、記憶力が急激に低下することがあります。うつや不安感が強いと、自傷や自殺につながることもあり危険です。
●幻覚や妄想：現実には存在しないものを見たり聞いたりする、あるいは現実と非現実の区別がつかなくなることがあります。

「記憶力がない」症状の特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「記憶力がない」症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

発達障害

発達障害とは、子供の頃に発症し、注意力や行動の調整、社会的なスキルに影響を及ぼす一連の障害のこと。代表的なものには、注意欠陥・多動性障害（ADHD）、自閉スペクトラム症（ASD）、学習障害（LD）などがあります。それぞれの特徴は以下の通りです。
●ADHD：注意力の欠如、多動性、衝動性が主な特徴です。これにより、情報を短期間に保持する能力が低下し、記憶力がないように見えることがある。
●ASD：社会的なコミュニケーションの障害や特定の行動のパターンが生じ、特定のルーチンや興味に固執する傾向がある。
●LD：読み書きや計算といった特定の学習スキルに困難を感じる。
発症の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因が関与していると考えられています。発達障害の主な治療法は行動療法、薬物療法、教育支援など多岐にわたります。 このようにさまざまな面からのサポートが必要なので、医療機関への受診は必須。小児科、児童精神科、神経科などに行くようにしましょう。

認知症

認知症は、記憶、思考、行動に影響を及ぼす脳の疾患のこと。実は認知症は総称であり色んなタイプの認知症があります。代表的な認知症のタイプは、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症があげられます。
●アルツハイマー病：最も一般的な認知症で、脳内の異常なタンパク質(タウ蛋白)の蓄積が原因とされます。記憶力の低下が初期症状として現れ、徐々に思考力や判断力も低下します。
●血管性認知症：脳への血流が不足することで発症します。脳卒中後に発症することが多く、記憶力の低下とともに局所的な神経症状が現れます。
●レビー小体型認知症：レビー小体という異常なタンパク質が脳内に蓄積することで発症します。記憶力の低下に加えて、幻覚やパーキンソン病に似た運動障害が見られるのが特徴です。
●前頭側頭型認知症：前頭葉や側頭葉の神経細胞が減少することで発症し、行動や人格の変化が顕著なのが特徴です。
このように認知症のタイプもそれぞれなので、治療法も種類によって変わります。受診すべき科は、脳神経内科、精神科、老年医学科などです。

若年性認知症

若年性認知症は、65歳未満の比較的若い年齢で発症する認知症の総称のこと。通常の認知症と同様に記憶、思考、行動に影響を及ぼしますが、発症年齢が若いため、仕事や家庭生活に大きな影響が出てきます。通常の認知症ではアルツハイマー病が原因のトップですが、若年性認知症では血管性認知症がトップになります。その原因も頭部外傷、感染症、脳腫瘍、変性疾患など原因が多様ですね。そのため、対処法も通常の認知症と異なることがあります。いずれにせよ受診すべき科は認知症専門の神経内科や脳神経外科になります。

「記憶力がない」症状の正しい対処法は？

①そもそも市販薬・睡眠薬を飲んでも良いのか
記憶力が低下していると感じたとき、市販薬や睡眠薬を安易に使用するのは避けるべきです。 根本的な原因を解決するものではありませんし、副作用や依存のリスクがあるため、使用する際は医師に相談してください。
②症状を緩和させる市販薬・睡眠薬・漢方薬はありますか
ビタミンB群やオメガ3脂肪酸を含むサプリメントは、脳の健康をサポートする可能性があります。イチョウ葉エキスも有名ですね。 漢方薬では抑肝散が認知症の周辺症状に効果的です
③記憶がない症状を和らげるツボは何か
有名なツボとして「百会（ひゃくえ」があげられます。頭頂部にあり、集中力や記憶力を高める効果があるとされています。
④記憶力をあげたい方がすべき、生活習慣、喫煙、ストレスなど日常生活の注意点
もちろん生活習慣は記憶力にも大切です。規則正しい睡眠を心がけ、バランスの取れた食事を摂る。禁煙する。こうした基本的なことは脳の健康を保つのにも欠かせません。 特に運動は脳を活性化させるのに非常に役立ちます。有酸素運動を積極的に行うようにしましょう。

まとめ

記憶がない、というだけで脳になんらかの障害が加わっていることがわかります。これを自分たちで解決するのは非常に困難です。まずは脳や精神に関わる医師に必ず相談するようにしましょう。

「記憶力がない」で考えられる病気

「記憶力がない」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。 一時的な症状であることも多いのですが、治りづらい病気も原因として考えられるため、お困りの際には専門家への相談をした方が良いでしょう。

「記憶力がない」に似ている症状・関連する症状

一時的な症状であることも多いのですが、治りづらい病気も原因として考えられるため、お困りの際には専門家への相談をした方が良いでしょう。 自分自身で解決することは難しい症状が多いので、早めに医療機関への受診をお勧めいたします。