「こめかみが痛い」原因はご存知ですか?医師が監修!
目の疲れが溜まったりストレスが蓄積したりしたときに、こめかみが痛くなった経験はあるでしょうか?こめかみの痛みはさまざまな頭痛のサインですが、一過性のものに限らず重病を発症する前兆の可能性もあります。
病名や原因を特定するときは、頭痛以外にみられる症状で判断するとわかりやすいです。
そこで以下では、こめかみの痛み方を基準に原因を探り、想定される病気の症状や治療方法をご紹介していきます。市販薬で対処できるものもあるので、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
こめかみが痛い症状と原因
こめかみの痛みはどのような状況下で発生するかを調べると、おおよその原因が特定しやすくなります。ここでは痛みのパターンを3つに分類して、考えられる原因や症状をご紹介していきます。
こめかみの左右片方だけ痛いときの原因
こめかみの片方だけが痛む場合、最も可能性が高いのは「片頭痛」です。片頭痛はその字のとおり、頭の片側のみ発症することが多い症状です。主な原因は気温の寒暖差・飲酒や入浴による血管の膨張・低気圧の影響などが考えられます。脈を打つような激しい痛みが続くうえ、慢性になると数日間長引くこともあります。なかにはストレスによって発症することもあるので、頭痛を訴えやすい人は環境を見直すことも大切です。
こめかみの両側が痛いときの原因
両方のこめかみが痛む状況は特に考え得る原因が多いです。前項でご紹介した原因に加え、眼精疲労の蓄積・寝すぎ・肩や首の凝りなどが挙げられます。これらは「緊張性頭痛」と呼ばれるもので、筋肉が凝りなどで引っ張られてしまうことで発症するものです。血液の循環が悪いことが根本の原因なので、目元のマッサージや保温を意識してみてください。
こめかみを押すと痛いときの原因
こめかみを押したときに痛みを感じる場合は、さまざまな疲労が蓄積している可能性があります。例としてはデスクワークによる肩や首の張り・顔周りの筋肉の凝り・眼精疲労などです。またこめかみを押したときに一瞬だけ痛みが走る程度であれば「三叉神経痛」の疑いもあります。電気が走るような痛みが特徴で、抗てんかん薬を服用して解消していきます。
こめかみに痛みが現れる代表的な病気
こめかみの痛みはさまざまな病気で発症しやすいものですが、一時的な頭痛だと軽視してはいけません。天候やストレスなど外的な要因もあれば、生活習慣が影響している内的なものまで原因は幅広く考えられます。なかには重症化する病気もあるので、事前の知識として学んでおきましょう。ここでは代表的な4つの病気をご紹介していきます。
片頭痛
片頭痛はズキズキと強い痛みが繰り返される症状で、10代から50代の女性に多く見られます。頭の片側だけが痛くなることがほとんどですが、検査を行っても脳に異常がみられないので非常に厄介です。頭痛以外にも身体を動かしたときに悪化したり、吐き気を催したりと日常生活に大きな影響を与えます。その他にも光や音に過敏になっていることが要因であることも考えられるので、併せて診断の基準となっています。これまでに知られている片頭痛の原因としては、ホルモンバランスや体温の調節機能がある「視床下部」の異常です。月経によるホルモンバランスの乱れや季節の変わり目など、引き金となりやすい環境は日常にありふれています。もし発症した場合は冷たいタオルで痛む箇所を冷やし、静かな場所で仮眠を取ることが最適です。人によっては3日間も症状が表れ続けるため、頭痛がひどくなる前に鎮痛薬で対処することもおすすめします。
副鼻腔炎
副鼻腔は喉と鼻をつなぐ空間で、鼻詰まりや鼻水に悩まされる人はこの部分が患部です。一般的に副鼻腔炎はアレルギー性鼻炎持ちの人が発症しやすく、痰のような粘り気のあるものが絡んできます。これによって喉の奥に炎症を起こす流れが多いですが、症状が重くなると目やこめかみまで痛くなることがあります。副鼻腔炎は慢性化しやすいので、花粉の時期などは毎日頭痛に悩まされてもおかしくはありません。治療は抗炎症作用のある薬を服用しながら、溜まった膿を除去する施術を行っていきます。頭痛は一過性であることが多いですが、場合によっては鎮痛剤を投与します。こめかみが痛く、鼻のトラブルにも悩まされている人は副鼻腔炎を疑ってみてください。
脳血管障害
脳血管障害は脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称で、命にも関わる重大な疾患です。頭痛やめまいの他に以下のような症状が挙げられます。
- 手足が思うように動かず、しびれを伴う
- 思考が鈍り、普段通りに話すことができない
- ものを認識する能力が低下する
このように他者から見ても異常事態とわかるほど、大きな障害をもたらすのが特徴です。一刻も早く専門治療が必要な状態で、発症すると意識を保つことすらも難しくなります。これらの症状が起こる原因は動脈硬化である場合が多いです。元をたどると高血圧・糖尿病・肥満などが挙げられます。治療は症状によって異なりますが、いずれも急を要する疾患なので手術を行うことが大半です。日常からバランスの良い食事を摂っていればリスクが低減するので、発症予防のために心がけてください。
脳腫瘍
脳腫瘍とは、脳に何らかの影響によって腫瘍ができてしまう病気です。脳の正常な細胞が腫瘍に変わってしまう「原発性脳腫瘍」と、脳以外で発生した悪性の腫瘍が転移したことによって生じる「転移性脳腫瘍」に分類されます。どちらも症状としては頭痛や吐き気を基本として、視野が狭くなったり耳が聞こえなくなったりと重大です。前項でご紹介した脳血管障害と似ていますが、脳腫瘍の場合は徐々に症状が進行していく点で異なります。ただし発生する原因は現在でも不明です。転移性の場合は明らかですが、一般的には遺伝的要因が大きいのではないかといわれています。治療として摘出手術を行うものの、なかには全摘ができない症状もあります。もし日に日に頭痛がひどくなるときは、脳神経外科などで専門的な検査を受けてみてください。
こめかみが痛いときに使用できる市販薬
前提として、市販薬で解消できるのは一過性の頭痛のみと考えてください。成分で注目すると、鎮痛作用が大きいロキソプロフェンナトリウムやイブプロフェンが代表的です。いわゆる痛み止めの薬には、このどちらかが必ずと言ってもいいほど含まれています。ロキソプロフェンナトリウムは市販薬「ロキソニン」の主成分です。眠くなる成分が入っていないので、外出中でも服用しやすくなっています。一方のイブプロフェンは「EVE」シリーズで有名です。この製品は胃への負担を軽減する成分も含まれているので安心です。季節の変わり目や低気圧による影響で頭痛が発生する場合には、用法用量を守って取り入れてみてください。ただし同じ痛みが数日間続くようであればすぐに服用を禁止し、専門医を受診することが大切です。
こめかみが痛い症状で病院へ行く目安は?
こめかみに痛みが出る症状は数が多いので、一概に目安をつけるのが難しいです。しかし以下のような症状が併発している場合には、すぐに専門医を受診してください。
- ろれつが回らず、うまく言葉を発せない
- 強い頭痛とめまいに襲われる
- 手足がしびれまともに歩くことができない
- 痛みが顎や首など広範囲にわたる
- 2~3日痛みが続き治る気配がない
このような状況のときは、市販薬で対処できる範囲を超えています。診療科は内科・脳神経内科・脳神経外科のいずれかを受診すれば、専門的な治療を受けることができます。不安な人は突然状況が悪化する前に診てもらいましょう。
まとめ
こめかみの痛みは単なる頭痛の表れだけでなく、時には死に至る脳腫瘍や脳血管障害のサインかもしれません。これらは頭痛を感じてから短時間で容態が変わる病気なので、頭痛の他に少しでも違和感があるときは早急に対応してください。
ただし食生活やストレスの対処に気を遣っている人は、重病に発展する危険性はほとんどありません。気候などが原因の一時的な頭痛であれば、市販薬で対処しましょう。
もし頭痛の原因がわからない場合は、内科や脳神経外科などに相談してみてください。