「コーヒーを飲むとお腹を壊す」のはなぜ?コーヒーが合わない人の特徴も医師が解説!

コーヒーを飲むとお腹が壊れる原因とは?メディカルドック監修医が下痢の対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきか等を解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
コーヒーを飲んでお腹を壊す症状で考えられる病気と対処法
「コーヒーを飲むと便が緩くなる」など、コーヒーを飲んでお腹を壊す方は少なくありません。ここでは、コーヒーを飲んでお腹を壊す原因と対策について紹介します。
コーヒーを飲んでお腹を壊す症状で考えられる原因と対処法
コーヒーを飲んでお腹を壊す原因として代表的なものは、カフェインです。カフェインを適量摂取する分には眠気が覚めたり、頭が冴えたりと有用な効果が期待できます。またカフェインには消化管を刺激し、蠕動(ぜんどう)運動を活発にする働きもあります。ただし、蠕動運動が過剰に作用すると、お腹が痛くなったり下痢になったりとお腹を壊してしまうこともあるのです。
このような症状があるときには、水やカフェインの入っていないお茶などで水分を補いましょう。とくに下痢があるときは脱水になりやすいため、こまめな水分補給が大切です。症状がつらいときや、水分がうまく取れず脱水気味のときには、消化器内科を受診なさってください。
コーヒーを飲んですぐにお腹を壊す症状で考えられる原因と対処法
コーヒーを飲んでからお腹を壊すまでの時間には、個人差があります。したがって、すぐに症状が現れるのは体質が影響していると考えられます。また胃や腸が空っぽの状態(空腹時)では、カフェインの刺激が腸に届きやすく症状が早く出ることもあるでしょう。胃腸に不安のある方は、空腹時のコーヒーは控え、食後や食事と一緒に楽しむとよいですね。
少量でもコーヒーを飲むとお腹を壊す症状で考えられる原因と対処法
コーヒーを少量飲んだだけでお腹を壊してしまう方は、カフェインに敏感な体質かもしれません。カフェインの感受性には個人差があるため、少し摂取しただけでカフェインの作用が強く出てしまうこともあるのです。カフェインはコーヒー以外にも紅茶や緑茶、エナジードリンクなどに含まれます。これらを飲んでもお腹を壊してしまう場合は、カフェインに敏感な体質とも考えられます。カフェインを含む食品を把握し、できるだけカフェインを摂らないよう心がけましょう。
症状が一時的であればあまり心配いりませんが、長引くときやつらいときにはためらわずに消化器内科を受診してください。
コーヒーを飲み過ぎてお腹を壊す症状で考えられる原因と対処法
コーヒーを飲み過ぎてお腹を壊したときには、カフェイン中毒になっている可能性も考えられます。お腹を壊す以外にもめまいや動機、震え、吐き気などの症状はありませんか?コーヒーを数杯飲む程度ではカフェインの過剰摂取につながる可能性は低いですが、極端に多く飲んだり、エナジードリンクやカフェインを含む医薬品と同時に摂取したりしないよう注意が必要です。
またコーヒーの成分であるクロロゲン酸には、カフェインと同じく胃酸の分泌を促す働きがあります。したがって、クロロゲン酸やカフェインをたくさん摂ると胃酸が過剰に分泌され、胃痛や腹痛の原因になる可能性もあるのです。
症状が続く場合には、消化器内科で相談すると安心ですね。
コーヒーに牛乳やコーヒーフレッシュ・クリーム類を入れるとお腹を壊す症状で考えられる原因と対処法
「ブラックコーヒーでは大丈夫なのに、カフェオレを飲んだらお腹を壊した」という方は、乳糖不耐症かもしれません。なぜなら、乳糖不耐症の方は牛乳を飲むと下痢を引き起こすことがあるからです。カフェオレやカフェラテには牛乳が多く使用されているため、乳糖不耐症の症状が現れることがあります。牛乳入りのコーヒーでお腹を壊してしまう場合は、牛乳の代わりに豆乳やオーツミルクなど植物性ミルクを使用したコーヒーを楽しむのがおすすめです。
牛乳入りのコーヒーを飲んでお腹を壊してしまったときには、牛乳など乳糖を含む食品の摂取を中止し、症状が落ち着くまで様子をみましょう。著しい下痢が続くなど症状がつらいときには、消化器内科を受診してください。
なお、コーヒーフレッシュは見た目こそ牛乳と似ていますが、植物性油脂を主原料としているため乳糖不耐症の方でも安心して使用できます。ただし、体質によってはコーヒーフレッシュが体に合わずお腹を壊す原因にもなります。ご自身の体調、体質に合わせて、コーヒーを楽しむとよいですね。
すぐに病院へ行くべきコーヒーと下痢に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
コーヒーを飲んで下痢とお腹の痛みが続く場合は、消化器内科へ
下痢やお腹の痛みが慢性的に続く場合は、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患などの病気も疑われます。これらの病気は症状がずっと続くわけではなく、お腹の不調が繰り返し現れます。そして、コーヒーなどカフェインを多く含む食品によって症状が引き起こされることも、珍しくありません。
したがって、下痢やお腹の痛みが慢性的に繰り返される場合は、消化器内科への受診をおすすめします。どのような症状が、どのようなタイミングで起こるのか、便の状態などご自身に起こっていることを医師に伝えられるようにしておくとよいですね。
「コーヒーでお腹を壊す」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「コーヒーでお腹を壊す」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
乳糖不耐症
乳糖不耐症とは、牛乳などの乳製品に含まれる糖質である乳糖を消化できずに、下痢や腹鳴(ふくめい)などの症状を引き起こす病気のことです。したがって、「コーヒーに牛乳を入れて飲むとお腹を壊す」という方は、乳糖不耐症の可能性が考えられます。
本来、乳糖はラクターゼという消化酵素により、小腸でブドウ糖とガラクトースに分解されます。このラクターゼの活性が低下していると、乳糖を消化吸収できずにお腹を壊してしまうのです。乳糖の摂取を中止すれば、下痢や腹鳴などの症状は数時間から1日程度で治まるでしょう。
乳糖不耐症には生まれつき(先天性)のものと、成長や感染性腸炎に罹患したことで発症する二次性のものがあります。牛乳のように乳糖を含む食品を摂取した後に、著しい下痢や腹鳴、腹部の膨満感がある場合には、消化器内科の受診を検討しましょう。子どもの場合には、小児科を受診するとよいですね。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群( irritable bowel syndrome:IBS)とは、消化器に明らかな異常がないにもかかわらず慢性的にお腹の調子が悪くなる病気です。具体的な症状には、便秘や下痢、お腹の痛みなどがあります。
原因はわかっていませんが、カフェインや乳製品、香辛料、脂質が多い食事は過敏性腸症候群を誘発しやすいといわれています。ゆえに、カフェインを多く含むコーヒーを飲むことで過敏性腸症候群の症状が現れる可能性があるのです。
過敏性腸症候群の症状を和らげるには、暴飲暴食、過食をやめ、規則正しい食生活、十分な睡眠と休養が大切です。症状が長引くときには、消化器内科に相談しましょう。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは、その名のとおり腸に炎症を起こす病気のことで、代表的なものに「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」があります。腸に炎症が起こると、下痢や腹痛、血便などの症状が現れます。とくに潰瘍性大腸炎では血便や下痢が、クローン病では下痢や腹痛が生じやすいです。
炎症性腸疾患の原因は明らかになっていませんが、コーヒーに含まれるカフェインが腸を刺激し、症状の悪化につながることも少なくありません。下痢や血便、腹痛などの症状が繰り返されるときには、消化器内科を受診しましょう。病状ごとに治療法が異なるため、主治医によく相談することが大切です。
カフェイン過敏症
カフェイン過敏症とは、カフェインの摂取量が少なくても身体が過剰に反応し、めまいや心拍数の増加、興奮、下痢などカフェインを過剰摂取したような症状が現れることです。なお、カフェイン過敏症という病気はありません。カフェインは感受性の個人差が大きいため、少量の摂取でも症状が強く現れることもあり、このように表現されることがあるのです。
カフェインに敏感な方は、日頃からカフェインを摂らないよう心がけましょう。コーヒー以外にも、どのような飲み物や食べ物にカフェインが含まれるかを把握しておくとよいですね。眠れない、お腹を壊したなど一時的な症状であれば過度に心配する必要はありませんが、症状が長引くときや辛いときには消化器内科の受診をおすすめします。
「コーヒーでお腹を壊した」ときの正しい対処法は?
コーヒーでお腹を壊してしまったら、すぐにコーヒーの摂取を中止しましょう。乳糖不耐症が疑われるときには、牛乳など乳糖を含む食品の摂取も控えてください。そして、腸を休ませることが重要です。コーヒー以外にもカフェインを含む紅茶やエナジードリンクの摂取は避け、常温の水や白湯などで適宜水分を補給してください。とくに下痢がある場合は、脱水にならないよう少量の水分をこまめに補います。
食事をする際には、香辛料や脂質の多いものは避け、お粥やうどんなど消化によいものをよく噛んで食べましょう。お腹を温めたり、市販の整腸剤を利用したりすると症状が和らぐこともあります。症状がなかなか治まらないときには、消化器内科を受診なさってください。
健康的にコーヒーを楽しむには、新鮮な豆を使用し、ご自身に適した量を飲むことが大切です。コーヒー豆は焙煎後、徐々に鮮度が落ちていきます。その際、コーヒー豆に含まれる油分が酸化して過酸化脂質となり、お腹を壊す原因となることもあるのです。
コーヒーの適量は体質によって異なりますが、1日2〜3杯までが目安となります。なぜなら、アメリカやカナダではカフェインの摂取量について1日あたり400mgまでを推奨しているからです。カフェイン400mgをコーヒーで換算すると、マグカップ(1杯約220ml)約3杯分となります。ほかの食品からのカフェイン摂取も考慮して、コーヒーは1日2杯程度にとどめておくとよいでしょう。
コーヒーが合わない・お腹を壊しやすい体質の人の特徴とは?
コーヒーを飲むとお腹を壊してしまう方がいる一方で、まったく平気な方もいます。この違いには、どのようなものがあるのでしょうか?また、コーヒーが合わなくても紅茶は大丈夫という方もいますが、それはなぜなのでしょうか?ここでは、コーヒーが合わない人の特徴と、紅茶との違いについて紹介します。
コーヒーが体に合わない人の特徴とは?
胃腸の弱い方は、コーヒーに含まれるカフェインの刺激によってもお腹を壊しやすいと考えられます。少し飲んだだけで下痢や、吐き気が生じる場合は、コーヒーを控えた方が安心です。
どうしてもコーヒーが飲みたいときには、カフェインレスコーヒーやデカフェコーヒーを試してみるのもよいでしょう。ただしこれらも微量のカフェインを含むため、カフェインに敏感な方は体調の変化に注意しつつ、少量から試すのがおすすめです。
コーヒーを飲むと下痢をしやすい人は紅茶を飲んでも大丈夫?
コーヒーが合わない体質でも、紅茶は大丈夫という方は少なくありません。これは、紅茶のカフェイン量がコーヒーの半分程度と少ないため、胃腸への刺激が少ないためです。
ただし、紅茶でお腹を壊すかは体質やその時の体調にもよりますし、カフェイン以外の原因があるかもしれません。お腹の不調が続く場合や原因がわからないときには、消化器内科に相談すると安心です。
「コーヒーでお腹を壊す」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「コーヒーでお腹を壊す」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
コーヒーが体質的に合わない場合、どんな症状が出ますか?
伊藤 陽子(医師)
コーヒーが体質に合わない場合、お腹を壊す以外にも吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。ほかにもめまいや動機、興奮、不安、震え、不眠などが起こりやすくなります。
コーヒーを飲みすぎると下痢以外にも体に影響が出ますか?
伊藤 陽子(医師)
コーヒーを飲み過ぎると、体質的には問題がなくてもカフェインの過剰摂取による影響が現れやすいです。具体的な症状としては吐き気や嘔吐、めまい、動機など体質的に合わない場合と同じような変化が懸念されます。また、コーヒーは胃酸の分泌が亢進するため、コーヒーを飲みすぎると胃炎を起こすことも少なくありません。胃がむかついたり、胃痛が出たりする場合には、コーヒーを控えるようにしましょう。
コーヒー飲料を飲むとお腹がぐるぐるします。デカフェに変えるべきでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
お腹がぐるぐるする原因がカフェインであれば、デカフェにすることで症状が現れにくくなるかもしれません。ただし、デカフェにも少量のカフェインが含まれますので体質によっては、症状が現れることもあります。またお腹がぐるぐるする原因が乳糖によるものなどカフェイン以外にあるとすれば、デカフェに変えても症状は改善しません。お腹がぐるぐるする原因を明らかにし、それに適した対策ができるとよいですね。
最近カフェインを摂るとお腹が壊れがちです。治し方を教えてください。
伊藤 陽子(医師)
寝不足やストレス、胃腸が弱っているなど体調の変化により、カフェインの影響を受けやすくなることもあります。胃腸に優しい食事をする、規則正しく生活するなど身体を労わる生活を心がけてください。また、加齢によってカフェインの感受性が高まっていることも考えられます。空腹時はカフェインを避ける、カフェインの摂取量を減らすなど飲むタイミングや量を見直してみるのもよいでしょう。
まとめ コーヒーでお腹を壊すときは体質を把握し飲み方を見直そう
コーヒーを飲むとお腹を壊してしまう原因は、カフェインによる刺激や乳糖不耐症などさまざまです。体調や飲むタイミングによっても症状が出やすくなるため、いつ、どんなときに不調が起こりやすいのかを把握することが大切です。
場合によっては、カフェインレスコーヒーへの切り替えや、食後に飲むなどの工夫で改善できることもあります。一方で、下痢や腹痛が続く、血便があるなど症状が強い場合は、我慢せずに消化器内科を受診なさってください。ご自身の体質に合わせてコーヒーを楽しめるとよいですね。
「コーヒーでお腹を壊す」症状で考えられる病気
「コーヒーでお腹を壊す」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
コーヒーでおなかを壊している可能性がある場合には、まずコーヒーを控えてみましょう。コーヒーを控えたり、カフェインレスとしてもお腹を壊す場合には、コーヒー以外にもあるかもしれません。お腹を壊す頻度が高い方は、速やかに消化器内科などの医療機関を受診しましょう。