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「腸が痛い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

「腸が痛い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

一言に腹痛と言っても、どこが痛むのかで潜んでいる病気が変わります。痛む部分が腹部の上の方か下の方かでも原因となる臓器が変わります。

その中でももし下腹部や腸が痛い場合、どういった病気が潜んでいる可能性があるのでしょうか?医療機関を受診するべきなのでしょうか?

ここでは、腸が痛い場合の原因や対処法について解説します。痛む部位ごとに対処法・受診のタイミング・使える市販薬もご紹介します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

腸が痛い症状で考えられる原因と対処法

それではまず、腸が痛いという症状から考えられる原因となる病気や対処法について解説します。腸が痛いと一口にいっても、どういう風に痛むのかによって原因が異なるのです。ここでは、慢性的に痛い場合・押すと痛い場合・食後に痛む場合の3種類に分けてご紹介します。

慢性的に腸が痛い原因と対処法

まず慢性的に腸が痛い場合です。ここで疑われるのは過敏性腸症候群という病気です。緊張したり、ふとしたときに腸の辺りが痛んだりという慢性的な腹痛が特徴の病気です。ほとんどの場合、排便をすることで腹痛が改善されます。その際の排便は普通と違って下痢のようだったり柔らかかったりします。原因は内因性外因性の2種類あるといわれていますが、明確な原因はまだ明らかになっていません。内因性として考えられる原因は、ストレスによる自律神経の失調や食べた物です。一方、外因性としては腸粘膜の炎症、もしくは遺伝的要因があると考えられています。治療には腸の動きを抑える薬や腹痛を和らげる薬が処方されます。自然治癒することはほとんどないといわれているため、3ヶ月以上慢性的に腸が痛い状態が続くようなら医療機関を受診するようにしましょう。

押すと腸が痛い原因と対処法

なでたり押したりすると腸が痛む場合、一緒に出ている症状によっても疑われる原因が変わります。たとえば、発熱と血便を伴う場合は憩室炎・腸炎・炎症性腸疾患が疑われます。高齢者で吐き気や嘔吐を伴う場合は虚血性腸炎も疑われます。いずれにせよ、腸を押すと痛みが強くなる上に血便を伴う場合は考えられる病気が多岐に渡るため、原因解明のために医療機関を受診するようにしましょう。

食後に腸が痛いと対処法

食後の腹痛は胃が原因となることが多いですが、腸が痛いとなると過敏性腸症候群や腸炎を疑われます。また、何らかの病気によって腸管の狭窄が起こっている可能性もあるので注意が必要です。腸管が狭窄している場合、腸が狭くなっているために食物を無理に通そうと激しくぜん動運動を起こし、結果として腸が痛いと感じます。どの病気なのかは検査をしなければわからないため、食後高確率で腸が痛いと感じるのであれば、なるべく早めに医療機関を受診するようにしましょう。

部位別に考えられる原因と対処法

次に、お腹のどの辺りが痛いかによって考えられる原因と対処法を解説します。原因となる病気によって、痛む部分が異なるため、腹痛を感じたらどの部分が痛むか探ってみましょう。

おへその周りが痛い原因と対処法

おへその辺りは中腹部と呼ばれています。中腹部が痛む場合は腸もしくは膵臓の病気が原因である場合が多いです。疑われる病気は、主に急性膵炎・初期の虫垂炎・小腸疾患です。急性膵炎はアルコールと胆石が原因で起こる場合が多く、嘔吐や発熱を伴うことがあります。突き刺すような痛みが特徴的で、ほとんどの方は背中まで突き抜けるような痛みを感じるようです。ただし、痛みが引いていくとほとんどは治まります。重症化していると入院と手術が必要です。腸の病気ではありませんが、痛む部位によってはこういった別の臓器の病気も疑ったほうがよいでしょう。

腹部全体が痛い原因と対処法

もし腹部のどこが痛いとピンポイントで感じることが不可能で、腹部が全体的に痛みを感じる場合は急性腹膜炎が疑われます。腹膜とは、腹部にある胃腸などの臓器全体を覆う膜のことをいいます。この膜が炎症を起こすと、腹部全体に痛みを感じます。急性腹膜炎には原因となる病気がいくつかあるため、痛みだした時にはすでに原因となる病気の症状が進行している場合が多いです。原因として考えられるのは、大腸穿孔・虫垂炎・胆嚢炎などです。治療時には原因となる病気を治療するための手術が必要になります。そのため、急性腹膜炎と診断された場合は緊急手術を行います。

腹部の右下が痛い原因と対処法

腹部の右下が痛い場合は、様々な原因が考えられます。腹部右下には腸の他にも右尿管や、女性は卵巣・卵管も位置しています。そのため、様々な病気を想定しなければいけません。最も多いのが虫垂炎です。ただし、女性の場合は婦人科疾患の場合もあります。いずれの場合でも急に右下腹部が激しく痛みだした場合、痛みが引いてもまた痛むことが多いです。婦人科疾患の場合は治療が必要な病気の場合もあるため、医療機関を受診するようにしましょう。

腹部の左下が痛い原因と対処法

腹部の左下が痛い場合は、大腸(S状結腸)憩室炎など大腸や結腸の病気が隠れている可能性があります。また、左下腹部が痛む場合でも婦人科疾患の可能性があります。疑われる腸の病気としては、S状結腸軸捻転潰瘍性大腸炎が多いです。S状結腸軸捻転が起きている場合は、結腸の血行が悪くなり壊死を起こす可能性もあるため、早めの処置が必要になります。すぐ引く痛みであれば、医療機関の受診を検討しましょう。もし激しい痛みが続く場合は早めに医療機関を受診するようにしてください。

病院を受診すべきタイミング

迷うのが病院を受診すべきタイミングです。腹痛には色んな種類があり、それによって受診すべきかどうかが変わります。まず、気がついたら痛くなくなっていたような痛みであればすぐに受診すべきというわけではありません。注意すべきは以下のような腹痛です。

  • ずっと響くように痛い
  • 血便が出る
  • 発疹が出る
  • 持病がある方の腹痛

上記の腹痛の場合は、なるべく早く受診を検討するようにしましょう。また、突然激しい痛みが数時間続くなどといったような症状の場合も注意が必要です。あまりにも痛み、耐えられないようであれば救急要請が必要なこともあります。下腿の発疹(紫斑)を伴う場合は紫斑病(IgA血管炎)が疑われ、腎臓も悪くなるケースがあるため注意をしましょう。また、腸管動脈の血栓症に伴う腹痛は腸管に壊死をきたす場合あり、緊急手術を要する場合もあります。症状が重い場合はできるだけ早めに受診をしてください。

腸が痛いとき症状で考えられる病気

ここでは「腸が痛くなる」という症状がある病気について紹介します。多くの患者さんにみられるのが胃腸炎・大腸憩室・虫垂炎(盲腸)です。

胃腸炎

胃腸炎の原因はほとんどがウイルスです。最も多いのが「ノロウイルス」によるウイルス性胃腸炎で、ほぼ1年中発生例があります。他にも乳幼児に多い「ロタウイルス」「アデノウイルス」も原因として多くなっています。これらのウイルスによって胃腸炎になると、胃や腸など上腹部から下腹部にかけての激痛が起きるのが特徴です。また、激しい嘔吐・下痢・発熱も伴います。吐瀉物や糞便から感染することがあるため、家族内で患者さんが出るとそのまま広がってしまうことが多いです。これらのウイルス性胃腸炎の治療は、ウイルス自体の効果を弱める薬はないため、基本的には対症療法となります。下痢や嘔吐で脱水症状を起こす場合があるため、お子さんや高齢者の場合特に注意が必要です。胃腸炎の他に潰瘍性大腸炎・クローン病などの「炎症性腸疾患」の可能性がある点も覚えておいてください。

大腸憩室

憩室とは、大腸の壁が膨らみ風船上になってしまった状態のことを指します。大腸憩室は大腸のどこでも発生する可能性がありますが、詳しい原因は判明していません。また、小さなものであれば症状がなく、憩室ができている状態だけではまだ危険な状態ではないとされています。しかし、ごくたまにこの憩室が炎症を起こし、それによって腸が痛いと感じることがあります。憩室から出血してしまっている場合は血便が起こる場合もあるようです。基本的に治療は必要ないことが多いです。ただし、検査の結果憩室が巨大化している場合は細菌感染により破裂する可能性があるため、手術が必要になる場合があります。

虫垂炎

虫垂炎は、いわゆる「盲腸」と呼ばれる病気です。大腸の一部には虫垂という部位があり、ここに炎症が起こると虫垂炎の症状を引き起こします。症状は下腹部の痛みと発熱です。重症化するとお腹が突っ張ったり、腹部全体が強く痛みだします。原因は虫垂に膿が溜まってしまうことです。虫垂の入り口は盲腸と繋がっていますが、ここには便の塊が詰まりやすくなります。すると細菌が繁殖して膿が溜まり、虫垂自体が腫れて痛みの原因となってしまうのです。進行すると腹膜炎を併発することもあるため、早めの手術が必要になることが多いです。

まとめ

腸が痛いという症状には、様々な病気が隠れていることが多いです。場合によっては膵臓や婦人科系の疾患の可能性もあります。

そのため、腸が痛くなったら痛みの度合いや痛む場所を観察するようにしましょう。安静にして治まるようなら、急いで受診する必要はないかもしれません。

しかし、またしばらくして痛くなるようであれば医療機関を受診するようにしましょう。もし激しく痛むようなら、救急要請も検討してください。

医療機関を受診する際は、医師にどこがどう痛いのかを伝えるようにしましょう。そうすることで、医師もスムーズに診断を進めることができます。

この記事の監修医師

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