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「肛門がかゆい」原因と対処法はご存知ですか?考えられる病気も解説!

「肛門がかゆい」原因と対処法はご存知ですか?考えられる病気も解説!

肛門のかゆさに悩む人は意外に多いのですが、誰にも相談できずひとりで辛い思いをしているのではないでしょうか。

そこで今回は肛門のかゆさの原因やその対処法について解説していきます。

考えられる病気にはどのようなものがあるのか、そして市販薬の使い方や肛門掻痒症の治療中にはどのようなことに注意すべきなのかも紹介しています。

適切に治療することで改善する症状です。肛門のかゆみに悩んでいる人はぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

肛門かゆい原因と対処法

聴診器とカルテ
肛門のかゆみは肛門の周りの傷やかぶれが原因となることが多いです。かゆみがひどいときには、つい強く洗ってしまいがちですがかえって逆効果です。かゆみの原因や対処法について詳しく解説しましょう。

肛門の拭きすぎ・洗いすぎが原因の対処法

肛門がかゆい原因には肛門の拭きすぎや洗いすぎが挙げられます。特にかゆみがあるときには必要以上に肛門を拭いたり洗ったりしがちですが、かえって傷を作るもとになってしまうこともあります。傷やかぶれがさらにかゆみを増す原因となることも多いので注意してください。拭きすぎや洗いすぎで肛門がかゆい場合には、傷やかぶれが生じている可能性から次のような対処や注意が必要です。

・洗いすぎない
・拭きすぎない
・ケア商品を一旦中止する
・消毒はしない

洗いすぎは肛門の周りの皮膚を刺激し傷のもとになるだけでなく、皮脂膜が無くなる原因です。皮脂膜が無くなると皮膚をバリアする機能が薄れ、かゆみを感じやすい皮膚になってしまいます。拭きすぎも同様で、トイレットペーパーで過度に拭き取ることでより傷がつきやすい状態になります。
拭き取る回数は3回くらいにとどめて押さえるように拭きましょう。こすって拭くことは厳禁です。拭き取れない場合には便通そのものに問題があることも考えられます。おしりケア商品が原因でかぶれやかゆみを起こしている可能性もあるので、一旦ケア商品の使用は中止してみてください。
肛門周りを消毒する人がいますが、消毒することで皮膚バリアの常在菌まで殺してしまうので至急止めてください。清潔にすることは大切なのですが、過剰に洗浄してしまうことは皮膚のバリア機能を低下させる原因になります。
皮膚のバリア機能が低下すると神経線維が皮膚の表面で過敏に反応し、かゆみを引き起こす原因にもなります。

肛門の汚れが原因の対処法

肛門の汚れが原因の場合はまず汚れを取り除きます。排便後はトイレットペーパーでやわらかく叩くようにして拭けば汚れはきれいに取り除けます。もしも拭き取りにくかったりすぐに汚れたりする場合は便通に問題がないか確認する必要があるでしょう。
必要以上に洗うことで傷をつけることもあるので注意してください。またウォシュレットを使用するときは3秒から5秒以内にとどめて、過度な洗浄でバリア機能を低下させることのないようより充分な注意が必要です。

肛門かゆい場合に考えられる病気

パソコンの前で雄弁に語る医師
肛門がかゆい症状で最も多いのは肛門掻痒症と呼ばれる病気ですが、その他にもさまざまな病気が考えられます。それぞれについて詳しく解説していきます。

肛門掻痒症

肛門のかゆみは大きく分けて、肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)と肛門掻痒症以外の疾病に分類されます。そしてその多くは肛門掻痒症といってよいでしょう。肛門掻痒症には次のような明確な定義があります。

・肛門やその周りに原発疹がない
・肛門のかゆさが人工的な続発疹を原因とする
・原疾患が明かなものは含まない

肛門のかゆみがアレルギーなどを原因とする湿疹ではなく、かゆみで掻いたりこすったりすることにより傷やかぶれを起こした疾病が肛門掻痒症です。また疾病名が解明されているものに関しては肛門掻痒症には含まれず、肛門掻痒症以外の病気として扱われます。
肛門掻痒症は皮膚病ではなくさまざまな外からの刺激で起こる疾病といえるでしょう。かゆみや痛みが続くために掻きむしってしまったり過剰に洗ってしまったりして皮膚に傷ができ、洗うことで乾燥も起こります。そのために肛門掻痒症の肛門周辺の皮膚には次のような症状がみられます。

・色素脱失
・浮腫状皮膚
・皮膚亀裂
・掻き傷
・苔癬化
・色素沈着

皮膚の色が白くなる・亀裂や浮腫や掻き傷ができる・ゴワゴワと厚くなる・シミになるなどが肛門掻痒症の皮膚に現れる症状です。肛門掻痒症の治療では排便の管理や肛門の手入れの仕方などの指導を行います。
軽い湿疹なら白色ワセリンなどを塗布することで症状が軽減しますが、ひどい場合にはステロイド外用剤を使用し漸減療法を行います。漸減療法とはステロイドの強さを徐々に弱めていき最終的にやめるという療法で、2・3週間を目処に行う方法です。

痔疾患には痔核・痔瘻・裂肛があり、いずれも肛門にかゆみや痛みをともなうのが特徴です。痔核はいぼ痔と呼ばれ通常痔というと痔核を指すことが多いです。痔瘻は細菌の感染が原因で起こるもので膿が溜り肛門や周辺に痛みが出ます。
裂肛はきれ痔・裂け痔とも呼ばれ便秘がちな人に多い痔です。排便時などに肛門上皮がきれたり裂けたりして起こりますが、なり始めや治りかけにはかゆみが出る場合が多いです。裂肛が繰り返されるとポリープとなる可能性もあり、肛門狭窄の原因になることもあります。

カンジダ

カンジダは肛門のカビで、肛門カンジダ症と呼ばれます。女性の膣や外陰などに発症するものを耳にすることがあるでしょうが、肛門にもカンジダは繁殖します。汗をよくかく人が発症しやすく、特に蒸れて湿りがちな肛門はカンジダが繁殖しやすいです。
病後やストレスなどにより免疫力の落ちているときに発症することが多いです。症状は肛門全体に赤い湿疹ができ、かぶれた状態で痛みや掻痒感があります。カンジダの治療には抗真菌剤を用います。
湿疹の治療ではステロイドが使われることが多いのですが、カンジダの場合にはかえって症状を悪化させてしまうので注意が必要です。自己判断で薬を使わないようにしてください。

ギョウ虫症

ギョウ虫は人の大腸や直腸に寄生する寄生虫です。このギョウ虫に寄生され発症するのがギョウ虫症です。メスは就寝中に肛門周辺に卵を産み付け、その卵を触った人からさらに別の人に寄生し感染を広げます。
そのため学校検診などでギョウ虫検査が実施されていましたが2015年を最後に現在は実施されていません。しかし現在もギョウ虫がまったくいなくなった訳では無いので、ギョウ虫症を発症する人ももちろんいます。
ギョウ虫が肛門周辺に産卵するため、ギョウ虫症の人は肛門のかゆみや違和感で掻きむしり肛門が傷ついたりかぶれたりする原因にもなってしまいます。肛門のかゆみがひどい場合はギョウ虫症も視野に入れて検査を行うとよいでしょう。

肛門がかゆい症状に対する市販薬の使い方

塗り薬
肛門が我慢できないほどかゆいときには、自己判断で市販の薬を使用してしまいがちです。通常の湿疹ならステロイド系の塗り薬を使うことが多いですが、疾病によってはステロイドの含まれたもので逆に症状が悪化してしまうものもあります。応急的に市販薬を利用するのは悪くありませんが、充分に注意して選ぶようにしてください。
カサカサと乾燥してかゆい場合には市販のワセリンなどで対応するとよいでしょう。市販の塗り薬で一旦はかゆみが治まったけれど、またすぐに再発してしまった、という人は多いです。自分で判断せずに肛門科を受診してかゆみの原因を知った上で対処してください。

肛門掻痒症の治療中の注意点

イエローカードを出す医師
肛門掻痒症の治療中には症状を早く改善させるためにいくつかの注意点があります。症状を繰り返さないためにも、注意点を守り治療を行ってください。

食生活での注意点

肛門搔痒症はアレルギーやアトピーなどが原因で湿疹ができて肛門がかゆいのではなく、掻いてしまったために傷ができ湿疹となった症状をいいます。かゆみの原因はさまざまですが食生活ではかゆみの原因となるものを摂取しないことも必要です。
特にかゆみを誘発する食品にはコーヒー・生にんにく・生わさび・唐辛子などの刺激物が挙げられます。過度な摂取は控えるようにしてください。その他にもアルコールの摂取もかゆみを増長させる可能性があるのでできるだけ控えてください。

入浴時の注意点

かゆみがひどいときにはつい何度も肛門を洗いがちですが、刺激を与えることでよりかゆみがひどくなる場合もあります。何度も洗わずに、洗うときはこすらず流すようにしてください。かゆみや痛みのあるうちは石鹸なども使わないようにしましょう。

すぐに病院に行ったほうが良い「肛門がかゆい」症状は?

  • かゆみが持続する、湿疹や硬結を触れる場合
  • 血の混じった下痢や膿みがある場合

これらの場合は早めに医療機関を受診しましょう。

行くならどの診療科が良い?

主な受診科目は、外科、肛門科です。
問診、診察、細菌培養検査などを実施する可能性があります。

病院を受診する際の注意点は?

持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから症状があるのか、他にも気になる症状があるのかなどを医師に伝えましょう。
問診の際に発症原因を探るため、性行為に関する質問をされる可能性があります。

治療する場合の費用や注意事項は?

保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。

まとめ

右手を上げる看護師
肛門のかゆみに悩む人は多いです。ただ1人で悩み、自己判断で塗り薬を使うなどして完治にいたらない場合も多いのではないでしょうか。

肛門のかゆみのほとんどは肛門搔痒症と考えられます。かゆさで掻きむしってしまい、さらに湿疹となってしまった症状です。

他にも肛門のかゆさの原因はたくさんあり、重大な病気が潜んでいる可能性もあります。

1人で悩んでいないで、肛門科を受診して正しい治療で完治を目指してください。

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