「嘔吐と下痢」の原因はご存知ですか?二次感染を防ぐ対処法も解説!
嘔吐と下痢の症状がみられたら、どんな病気である可能性が考えられるでしょうか。
本記事では、嘔吐と下痢の原因となる病気をはじめ、症状への対処方法や二次感染の対策方法などを紹介します。
病気の治癒・予防には、正しい知識を身につけることが欠かせません。知識に基づいて適切な対処を行えば、病気の早期回復や症状の軽快も見込めるでしょう。
ぜひ本記事で得た知識を活かして、嘔吐と下痢に関する問題を解消していってください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
嘔吐と下痢の原因は?
嘔吐と下痢の症状が現れた場合、胃腸炎などの病気にかかっている可能性が高いです。しかし、病気に関係なく嘔吐や下痢が生じる場合もあります。例えば、精神的ストレスが原因で胃腸の調子が悪くなるケースです。不安や緊張によって引き起こされることがあります。
また、がんなどの病気の治療を行っている場合、薬の副作用として嘔吐・下痢が生じることもあるでしょう。食事の量や内容が原因になる場合もあります。特に子どもは消化機能が十分に発達していないため、食事によって消化器の症状が引き起こされやすいです。
嘔吐と下痢で考えられる病気
嘔吐と下痢が症状として現れた場合、様々な病気の可能性が考えられます。それらの病気は、大きく3つに分類することが可能です。
ウイルス性胃腸炎
考えられる病気の中で最も数が多いのは、ウイルス性胃腸炎です。ウイルスに感染することで胃腸炎を発症し、嘔吐・下痢の症状が現れます。代表的なウイルスは、ノロウイルス・ロタウイルスです。この病気は、秋季から冬季にかけて流行します。症状として、嘔吐と下痢だけでなく発熱や腹痛も伴う場合があるでしょう。
ノロウイルスは非常に感染力が強い点も特徴です。汚染された二枚貝や水を摂取することで感染するケースもみられます。症状は1〜2日ほど続きます。ロタウイルスによる胃腸炎は、0〜6歳頃の子どもがかかりやすい病気です。こちらも感染力が強く、手洗いをしていても感染を防げない可能性があるでしょう。症状は数日間続き、場合によってはけいれんなどの合併症が引き起こされることもあります。
予防法として、任意でワクチンを接種することが可能です。どちらのウイルスも有効な抗ウイルス剤はないため、対症療法で治療を行うことになります。
細菌性胃腸炎
胃腸炎は細菌に感染することによっても引き起こされます。代表的な細菌は、腸炎ビブリオ・カンピロバクター・サルモネラ菌などです。食物から感染することが多く、その場合は食中毒とも呼ばれます。細菌性胃腸炎の感染者が増えるのは、6月〜9月にかけてです。暖かい環境は細菌が増殖しやすくなるため、食物の管理に気を配ることが大切になります。
ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎の区別をつけることは、最初の段階では難しいです。しかし、経過中に腹痛が強くなったり、血便が出たりすると細菌性胃腸炎の可能性が考えられます。また、症状が嘔吐のみ、あるいは下痢のみの場合もウイルス性ではない可能性が高いです。
抗菌薬がある細菌の場合もあるため、症状によっては薬を投与することで治療を行います。軽症で自然治癒が見込める場合は、対症療法を行うことが多いです。
嘔吐と下痢を伴うその他の病気
その他にも、嘔吐と下痢を引き起こす可能性のある病気が存在します。例えば、食物によって起こるアレルギーで生じる場合があるでしょう。この病気は消化管アレルギーと呼ばれ、症状として下痢だけでなく血便がみられることもあります。乳児が発症しやすい病気ですが、大人が発症する場合もあるでしょう。
また、乳児期の嘔吐・下痢の症状は、尿路感染症の可能性も考えられます。その場合、発熱の症状がみられる他、顔色不良や哺乳力低下などの症状が現れることもあるでしょう。
嘔吐と下痢以外の症状がある場合は、病院を受診して症状の原因を特定しましょう。原因となる病気の適切な治療法を行うことで、病気の完治・症状の緩和が期待できます。
嘔吐と下痢の対処法
嘔吐と下痢の症状がみられた場合、適切な対処法を施すことが大切です。対処法を間違えると病状が長く続いたり悪化したりする可能性があるため、注意して対処を行いましょう。
嘔吐の症状がみられる場合
嘔吐の症状がある場合、吐物が気管に入ることを防ぐ必要があります。寝た状態で嘔吐した際は、身体を横向きにして気管に入らないようにしましょう。
特に高齢者は気管に吐物が入ることが原因で肺炎を起こす可能性があるため、注意が必要です。嘔吐が治まったら、水分補給を行ってください。ただし、一気に飲むと吐いてしまう可能性があるので、少量ずつ飲むようにしましょう。
嘔吐が続いている乳幼児の場合は、ティースプーン一杯程度の水分を与えるようにします。それで嘔吐をしなければ、5分ほどおいてから少し量を増やして再び与えます。水分量を少しずつ増やしながら、30分間ほど続けましょう。飲めなかった場合でも、時間をおいて再び少量の水分を飲ませるようにしてください。
脱水症状に注意しよう
嘔吐と下痢の症状があると、脱水症状を起こすリスクが高いです。脱水症状が酷くなると、病院で点滴などの治療を受けることになります。特に乳幼児や高齢者は起こりやすいため、水分補給を欠かさず行いましょう。
おすすめは経口補水液です。吸収効率が良く、脱水予防の効果が高い飲み物になります。スポーツドリンクやリンゴジュースもおすすめです。ただし、柑橘類は症状を悪化させる可能性があるため、オレンジジュースなどは避けてください。
また、脱水を防ごうと下痢止め薬を飲む方がいらっしゃいますが、下痢は無理に止めない方が良いです。消化管内に毒素が溜まり、回復が遅くなったり症状が悪化したりします。薬は服用せず、水分補給をすることで脱水を防ぐようにしましょう。
食事は消化に良いものを
嘔吐の症状がある間は、無理に食事を摂らなくてもかまいません。吐き気がなくなったら、消化に良いものを食べるようにしましょう。
お粥・うどん・鶏のささみ・白身魚などがおすすめです。症状が完全になくなっても、発症後数日は胃腸を労わった食事を心がけると良いでしょう。アルコール類や揚げ物は避けてください。生魚・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品も症状を再発させる可能性があります。
離乳食を食べている乳幼児の場合は、段階を1つ戻した柔らかいものを与えましょう。母乳・ミルクは普通に飲ませても問題ありません。
二次感染を防ぐための対処法
ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎の場合、二次感染が起きるリスクがあります。特にウイルス性胃腸炎は感染力が高いため、二次感染を防ぐことが重要になります。
ウイルスや細菌を体内に入れないためには、手洗いが効果的です。患者さんと接触した後・トイレ後・食事前など、定期的に手を洗うようにしましょう。石鹸と流水でしっかり洗い流すことが大切です。また、嘔吐物や排泄物の処理は慎重に行う必要があります。嘔吐物・排泄物の中には大量のウイルスや細菌が含まれており、そこから感染する可能性が高いためです。
処理を行う際には、使い捨て手袋・マスク・エプロンを装着しましょう。汚物が飛び散らないように、ペーパータオルや使い捨ての雑巾で静かに拭き取ります。拭いたタオルなどはすぐにビニール袋の中に入れ、密閉して廃棄しましょう。この際、袋に中身が浸るほどの次亜塩素酸ナトリウムなどを入れると良いでしょう。汚物が落ちていた床なども消毒を行ってください。
乳幼児のオムツ交換の際も、同様に行います。処理が終わったら、手洗いを必ず行ってください。加えて、嘔吐物などが乾燥すると空気感染が起こりやすくなるため、処理は早めに行うことが大切です。換気も感染防止に有効であるため、定期的に窓を開けて空気を入れ換えるようにしましょう。
なお、嘔吐と下痢を伴うその他の病気が疑われる場合は、まずは医療機関を受診して原因を特定しましょう。症状の原因が分かったら、医師の指示に従って治療や感染の予防に取り組むようにしてください。
すぐに病院に行った方が良い「嘔吐と下痢」症状は?
- 高熱や下痢に血や膿が混じっている場合
- 水分が取れない、ぐったりしている場合
これらの症状の場合には、すぐに病院受診を検討しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、内科、消化器内科です。
問診、診察、血液検査、画像検査(レントゲンやCTなど)、便検査などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから、どのような症状があるか、きっかけに心当たりがあるかなどを医師に伝えましょう。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
嘔吐と下痢の症状の多くは、病気によって引き起こされています。特にウイルス性・細菌性の胃腸炎である可能性が高いでしょう。
嘔吐と下痢の症状がみられると、脱水症状を起こすリスクがあります。そのため、水分補給を行うことが大切です。経口補水液などを少量ずつ飲むようにしましょう。
吐き気がなくなったら、消化の良い食事を摂りましょう。発症後数日は、アルコールや揚げ物などの胃腸に負担がかかる食べものは避けてください。
感染性胃腸炎の場合は二次感染に気をつける必要があります。嘔吐物・排泄物は適切に処理し、手洗いは徹底して行うようにしてください。
特に感染力が高いウイルス性胃腸炎は、すぐに感染が広まってしまいます。適切な感染対策を知識として身につけ、万全に予防するようにしましょう。
その他の病気が疑われる場合は、まずは医療機関を受診してみてください。医師の診断を受けて、適切な対処を行うようにしましょう。