「腹痛と下痢」が続く時の対処法はご存知ですか?考えられる病気も解説!
腹痛と下痢はストレスや風邪でも生じる症状で、多くの方が経験しているでしょう。しかし、腹痛や下痢は風邪だけでなく大きな病気の可能性もあるのです。
辛い症状が続いている方などは病院の受診が必要なこともあります。腹痛や下痢の症状を起こす病気にはどのようなものがあるのか、代表的なものを抜粋して紹介します。
下痢をしているときの対処法も解説しますのでぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
腹痛と下痢が続く原因は?
腹痛と下痢が続く原因は様々あります。原因の1つが食物中毒や感染症です。食物中毒は、食品に含まれる病原体に感染することで下痢や腹痛の症状が生じます。
特に冷凍食品や生の肉や魚などを食べるとより食中毒になりやすいです。感染症は、ウイルスや細菌によって引き起こされることが多く、具体的にいうと黄色ブドウ球菌やサルモネラなどです。
また、消化器疾患が原因の場合もあります。例えば、胃腸潰瘍やクローン病などが該当です。これらの疾患は、消化器官に異常を来すことで腹痛や下痢を引き起こすことがあります。
さらに、薬物やサプリメントの服用でも腹痛や下痢を引き起こすことがあります。例えば、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)や抗生物質などです。
これら以外にも下痢や腹痛が生じる疾患は様々あります。腹痛や下痢が続く場合は、医師に診察を受けることをおすすめします。
腹痛と下痢が起こる病気
腹痛と下痢が起こる病気は非常に多くあります。今回は食中毒や薬剤性のもの以外に代表的な疾患を紹介します。
- 食中毒
- 薬剤性
- 感染性胃腸炎
- 過敏性腸症候群
- 潰瘍性大腸炎
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎とは、ノロウイルス、ロタウイルスなどのウイルスが体内に侵入し、胃腸の働きを低下させることで発症します。原因となる病原体は細菌性のものでは以下のようなものがあります
- 腸炎ビブリオ
- 病原性大腸菌
- サルモネラ
- カンピロバクタなど
ウイルス性のものでは以下のようなものが代表的です。
- SRSV
- ロタウイルス
- 腸管アデノウイルス
潜伏期間は原因となる病原体にもよりますが約1〜3日間といわれ、突然の嘔吐で始まることが多いです。他にも吐き気や下痢・発熱・腹痛などの症状がみられます。有症期間はノロウイルスの場合、おおよそ24〜48時間とされています。
ロタウイルス感染症も嘔吐・下痢・発熱が主症状ですが他に特徴があり、それは乳幼児では痙攣がみられる場合があるなどです。ロタウイルスが原因の感染性胃腸炎による有症期間は5〜6日間とノロウイルスより長いです。感染しても症状が軽く風邪のような症状で済む場合もあります。
この病気は、手などに付着したウイルスが体内に入ることで発症するため、手洗いうがいで予防できます。ロタウイルスは予防接種ワクチンもあるため、ワクチンによっても予防することが可能です。
感染している人の便や嘔吐物からも感染するため注意が必要です。処理する場合は手袋やエプロン・マスクを使用し、処理後は必ず手を洗い感染予防に努めましょう。
感染してしまった場合は、早期に医療機関を受診することをおすすめします。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome,略してIBS)は、下痢・便秘・腹痛・腹部膨満感などの症状を引き起こす疾患です。IBSは、約10%程度の人がこの病気であるといわれており、多くの人が経験する可能性があります。
IBSはストレスによって不安状態になると、腸の収縮運動が激しくなり、痛みを感じやすくなってしまうことで下痢や腹痛を起こすとされています。
IBSの診断に使用する診断基準は、 Rome III 基準や Rome IV 基準などです。
IBSの診断基準(ローマIII基準)
最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こること、加えて下記の2項目以上の特徴を示す場合ISBとされます。
- 排便によって症状がやわらぐ
- 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
- 症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
IBSと確定するためには下痢や腹痛を呈する他の疾患が無いことを証明しなければいけません。そのため、必要に応じて大腸内視鏡検査や大腸造影検査・腹部超音波検査・腹部CT検査・血液検査、尿・便検査を行うこともあります。
IBSを発症する原因はわかっていません。しかし、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった後にIBSになりやすいことが知られています。これは、腸の粘膜が弱くなることや腸内細菌が変化することで、運動や知覚機能が敏感になるためです。
IBSの治療は、生活習慣の改善・ストレスの管理・栄養バランスの調整などがあります。刺激物・高脂肪の食べものやアルコールは控えるとよいでしょう。ストレスをためないように睡眠や休養をしっかりとるように心掛けてください。
それでも症状が改善しない場合は薬物療法を行います。使用する薬剤は消化管機能調節薬という腸の運動を整える薬やビフィズス菌や乳酸菌など生体にとって有用な菌の製剤のプロバイオティクスなどです。
他にも高分子重合体という水分を吸収し便の水分バランスを調整する薬を使用する場合もあります。これらの薬剤は下痢が主症状の方と便秘が主症状の方両方へ使用されます。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。主症状は下痢とよく起こる腹痛で、下痢には血便を伴うこともあります。重症になると発熱・体重減少・貧血などの全身の症状が起こります。
原因不明で難病指定されている病気です。潰瘍性大腸炎は直腸から連続的に上行性(口側)へ広がる性質があり、病変の拡大や経過などにより下記のように分類されます。
- 病変の拡がりによる分類:全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型、分節型
- 病期の分類:活動期、 寛解期
- 重症度による分類:軽症、中等症、重症、激症
- 臨床経過による分類: 再燃寛解型、慢性持続型、急性激症型、初回発作型
血性下痢を引き起こす感染症と区別する必要があるため、細菌や他の感染症を検査します。その後、X線や内視鏡による大腸検査や大腸粘膜の一部を採取する生検によって病理診断を行い鑑別します。
基本系には薬物療法ですが、重症になり効果が表れない場合は手術が必要です。多くの方が症状の改善や寛解しますが、再発することも多い特徴があります。発病して7~8年すると大腸がんを合併するリスクが高くなるため定期的な検査がおすすめです。
食中毒
食中毒を起こすもととなる細菌やウイルス・有毒な物質がついた食べ物を食べることによって、下痢・腹痛・発熱・吐き気などの症状を引き起こす病気です。
経験したことがある方もいると思いますが、死に至る可能性もあるため侮れません。飲食店だけでなく自宅でも発生することもあります。自宅で発生した場合は風邪などと間違われ、発見が遅れ重症化してしまうこともあるため注意が必要です。
予防するためには、生肉など食材にしっかり火を通すこと・手洗いをしっかりして細菌やウイルスを口にしないようにすること・適切な温度で保管し菌を増殖させないことが重要です。
食中毒は気温が高くなる6月~9月頃に多く発生します。これは、菌が増殖しやすくなるためです。常温で食べ物を保管していると菌が増え、食中毒の発症に繋がります。そのため、食べ物は冷蔵庫に入れておくなど、保管方法が重要です。
下痢はどのくらいで治る?
下痢とは、通常よりも水分を多く含むような排便をすることを指します。下痢は、消化器官に問題があることが原因で起こることが多いですが、感染症や薬物の副作用などによっても起こることがあります。
下痢は、その原因によって治るまでの時間は様々です。感染症の場合は、抗生物質を処方されることで、数日から1週間程度で治ることがあります。一方、潰瘍性大腸炎などの消化器官に問題がある場合は、根本的な治療をすることで症状が軽減しますが数週間から数ヶ月かかることもあります。
また、下痢を引き起こす薬物の副作用の場合は、薬物を中止することで治ることができることもあります。しかし、薬物を中止する前には、必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。
その他にも、下痢を引き起こす原因は様々であり、それぞれに対応する治療方法があります。また、下痢を引き起こす原因を特定できない場合は、治療することが難しいこともあります。そのため、下痢が長期間続く場合や、重篤な症状がある場合は、医師の診察を受けることが重要です。
腹痛と下痢が起きたときの対処法
腹痛と下痢が起きたときの対処法は次のようなものがあります。
- 水分補給
- 塩分補給
- 消化のいい食べ物を食べる
- 薬
水分補給して脱水を防ぐ
下痢は正常の便よりも多くの水分を含みます。そのため、下痢をしていると体内の水分が減り脱水症状になってしまうことがあります。
下痢を頻繁にしている場合は、水分補給をして体内の水分を補充することが重要です。具体的には、水やスプライト、ゼリーなどを飲むことで水分を補充することができます。
また、下痢をしていると水分だけでなく体内の塩分(詳しくはナトリウムやカリウム)も減りやすくなります。そのため、水ではなくスポーツドリンクや経口補水液を摂取することがおすすめです。
消化のいいものを食べる
消化の良い炭水化物をしっかり摂りましょう。消化のいい炭水化物は、おかゆやうどん・味噌汁・すりおろしたリンゴ・野菜スープなどです。
消化吸収の悪い脂肪が多い肉や魚・そば・ラーメン・玄米や赤飯・生野菜や海藻・ケーキ・パンなどは摂取しないようにしましょう。コーヒーや炭酸飲料、アルコール類もお腹に刺激を与えるので控えましょう。
市販薬の服用には注意が必要
下痢止めなどの市販薬もありますが、服用するときは注意事項を必ず確認しましょう。市販薬を服用する際には、以下の点に注意することが重要です。
- 薬の副作用や禁忌症を確認する。特に、他の薬との相互作用や、アレルギー反応が起きる可能性がある場合は、医師や薬剤師に相談すること。
- 薬の服用方法や用量を正確に守る。服用方法や用量を間違えると、副作用や有効性の低下が起きる可能性があるため。
- 服用期間を守る。薬を服用する期間を途中で中断すると、病気が治りにくくなる可能性があるため。
副作用ではないかと思われる症状(尿が出にくくなる、口が渇くといった変化)がみられたら、服用を中止して医療機関を受診してください。
また、腹痛や下痢が強い場合や、体調が悪化している場合は、医師に診てもらうことをおすすめします。
すぐに病院に行った方が良い「腹痛と下痢」症状は?
- 激しい腹痛や嘔吐、高熱がある場合
- 血便や下血がある場合
- 水分をとることができない場合
これらの症状の場合には、すぐに病院受診を検討しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、内科、消化器内科です。
問診、診察、血液検査、画像検査(レントゲンやCTなど)、便検査などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから、どのような症状があるか、きっかけに心当たりがあるかなどを医師に伝えましょう。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
腹痛と下痢について解説しました。腹痛や下痢はストレスや感染性胃腸炎のような誰でもかかる病気から潰瘍性大腸炎などの重大な病気など様々な疾患で見られる症状です。
潰瘍性大腸炎は突然の下痢に日常生活に支障を出してしまうこともあるのです。不安な方は医療機関で調べてもらうことをおすすめします。また、繰り返し症状を起こすと脱水症状などを引き起こすため注意しましょう。