「口を開けると顎が痛い」原因とは?左だけ・右だけ・何科を受診するべきかも解説!
口を開けると顎が痛いのを治すには?Medical DOC監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修歯科医師:
D0997(歯科医師)
「口を開けると顎が痛い」症状で考えられる病気と対処法
お口を開け閉めしていると、急に左右どちらか、もしくは両方の顎が痛いというお悩みをよく見聞きます。痛みの出る場所がこめかみ、耳の前のこともあれば、頬の筋肉あたりが痛かったりするなど、パターンはいくつかあるようです。口を開けると痛い時、どういう原因で痛みが出て、どうやって治していけばいいのでしょうか?
口を開けると顎が痛い症状で考えられる原因と治し方
口を開けると痛いという症状だけで考えられるのは、顎関節症、顎関節打撲、顎関節脱臼、咬筋の打撲、顎の骨の骨折、智歯周囲炎などが考えられます。
すぐにできる処置法は、市販の痛み止めを決められた用法・用量で内服すること、そして痛みのある部分を氷枕などで冷やすことです。顎関節症、顎関節打撲、咬筋の打撲などはこの方法を基本にして開口訓練を徐々に行うことがほとんどです。
一方、顎関節脱臼の場合は、なるべく早期に元に戻す処置(整復処置)を受けなければいけません。脱臼した顎が元に戻りにくくなるからです。
顎の骨の骨折の場合は手術(観血的整復固定術)もしくは安静(保存的治療)にする治療の必要性を検討しなければいけません。これらは痛みに気づいてから数日以内に歯科医院で診てもらうことが必要です。
一番侮ってはいけないのが、智歯周囲炎です。智歯とは親知らずのことで、親知らずの周囲に急性炎症が起きている場合を指します。この智歯周囲炎は症状の初期のうちに洗浄や抗菌薬投与などで消炎させないといけません。
炎症が拡大する方向は、すぐ後ろにある首・喉の周囲に拡がり、呼吸など生命にかかわる部分に影響していきます。また仰向けで寝ているとこめかみ(側頭部)の方向にも拡大することがあります。緊急の全身麻酔手術で切開排膿させることも十分ありえます。
いずれの症状も、まずは歯科医師、耳鼻咽喉科の医師による診断があってからの治療となりますので、症状に気づいたら早めに歯科、口腔外科、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
口を開けると左だけ右だけなど片方の顎が痛い症状で考えられる原因と治し方
顎の片方だけが痛い場合は、顎関節症、顎関節打撲、咬筋の打撲、智歯周囲炎が考えられます。ただし、顎関節症においては痛みがある側をかばって痛くない側で食事をすると、痛くない側の顎の関節の仕事量が増え、遅れて痛みが出てくる可能性があります。歯科医院を受診する際にもし痛みが出始めた時期に違いがある場合は、その時期についても歯科医院で話してください。より正確な診断につながることでしょう。
顎関節打撲、咬筋の打撲は顎を強く打ち付けたことがある、ボールなどが飛んできて顔(顎)に当たったなど、思い当たるイベントがあると、判断しやすいです。智歯周囲炎は親知らず周囲の診察・レントゲン検査で判断できます。
いずれにせよ、痛み止めを内服し、痛い患部を氷枕で冷やすなどして痛みの変化をみつつ、早めに歯科医院で相談しましょう。
口を開けると顎と耳・耳の下が痛い症状で考えられる原因と治し方
口を開けると顎と耳・耳の下が痛い、という場合、このエリアにあるのは胸鎖乳突筋という太い筋肉、そして扁桃腺、喉です。まず、この胸鎖乳突筋という太い筋肉をつまんでみて、痛みが増す、もしくはマッサージすると気持ちがいい場合は胸鎖乳突筋の筋肉痛を考えます。それよりももっと深い内部に痛みがある場合は、喉の周囲の炎症などを考えます。
痛み止めを内服してどれくらい効果があるのか診てください。そして、耳鼻咽喉科で相談してみましょう。その時にどの痛み止めを内服したらどれくらいの時間効いたか(もしくはあまり効かなかったのか)も医師に伝えましょう。そして鏡もしくは内視鏡などで喉を観察したり、CTなどの画像検査をしてもらうなどで、診断をしてもらいましょう。
口を開けると音がして顎が痛い症状で考えられる原因と治し方
口を開けると音がして顎が痛い場合、顎関節症をまず疑います。
顎関節の構造は、耳の前あたりにおいて、下顎の骨の突き出した部分(凸)と、上顎の骨にそれを受けるへこみ(凹)があります。そしてその間に関節円板という軟骨の座布団があります。お口を開け閉めする際にはこの関節円板も前後の移動を繰り返しています。関節円板がスムーズに動けるだけのスペース(関節腔)があれば、音はしません。
しかし、頬杖をついたり、片方で噛む癖が長いと、この関節円板の動くスペースが狭くなることから、骨と関節円板が擦れあうようになります。
この「音がする」というのは、関節円板が骨をこすれあって生じる音です。この音は「カクカク」や「ジャリジャリ」など、いくつかの種類があります。
痛みがある時は痛み止めを内服しましょう。そして早めに歯科医院を受診し、レントゲン撮影などで顎の関節をチェックしてもらいましょう。
顎関節症の診断がついた時、治療はまず開口訓練です。顎の関節に負担をかけないように安静にする方がおられますが、痛くてもしっかり動かすことが大事です。また、スプリントはその次に検討する治療法であり、開口訓練もせずいきなりスプリント、ではありません。
すぐに病院へ行くべき「口を開けると顎が痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
痛みが長時間持続する場合は、歯科・口腔外科・耳鼻咽喉科へ
顎の痛みのきっかけが口を開けることであり、その後も開け閉めをしなくても痛みが持続している場合は、打撲や急性炎症が顎や喉の周囲に存在する可能性があります。夜間などは病院も閉まっているため、とりあえず市販の痛み止めを内服することで痛みのコントロールをしますが、その後はなるべく早く近くの歯科医院(歯科・口腔外科)で相談し、正確な診断をつけてもらう必要があります。
受診・予防の目安となる「口を開けると顎が痛い」ときのセルフチェック法
- ・口を開けると、顎が痛い以外にいつもよりお口が開けにくい症状がある場合
- →顎関節症もしくは顎関節脱臼の可能性があります。耳の前に指先を当て、お口の開け閉めをしてみて、左右で差があるかを診てください。
- ・口を開けると顎が痛い以外にあご先が左右どちらかに流れる症状がある場合
- →口を開ける時、左右両方の顎関節が同じように動いていれば、あご先は真っ直ぐ真下に動きます。しかし、顎の関節の動きに左右差がある場合、あご先が右か左のどちらかに流れるように動きます。この場合は顎関節症の可能性があります。
- ・口を開けると顎が痛い以外に飲み込みもしづらい症状がある場合
- →この場合は、智歯周囲炎(親知らずの炎症)など、急性炎症の可能性がありますので、早めに歯科もしくは耳鼻咽喉科を受診しましょう。
「口を開けると顎が痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「口を開けると顎が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
顎関節症
顎関節症とは、顎の関節に関する様々な症状を指します。顎関節そのものの痛み、口を開け閉めする筋肉の痛み、耳の前あたり(顎関節)のカクカクッ、ジャリジャリなどの雑音、口が開けにくい開口障害などの症状があります。
これらの症状を認めたら、歯科医院で相談しましょう。レントゲンで顎の関節の状況を確認し、痛みや雑音などの症状から、顎関節症か、もしくはそれ以外の疾患なのかを診断してもらいましょう。
すぐに医療機関を受診できない場合の対処法はいくつかあります。痛みは市販の痛み止めを使います。そして痛くてもしっかりお口を開けることです。日中に時々あくびをして、顎の関節を動かします。
食事をする際は両方の顎で噛むことを意識しましょう。しっかり噛めるからといって片方の顎で噛んでいると、仕事量の多い側の顎関節に負担がかかります。
また、テレビやスマホを操作する際に頬杖の癖がある人は意識してやめるようにしましょう。
あと、寝始める際は仰向けで寝ることを意識してください。左右どちらかを下にすると、顎の関節に突き上げの力がかかることになり、顎関節症になることがあります。
「口を開けると顎が痛い」ときの正しい対処法は?
口を開けて痛い時は、まず市販の痛み止めを内服してみましょう。ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン(アセチルサリチル酸)など、ドラッグストアで購入できるものを決められた用法・用量で内服し、何時間くらい痛み止めが効いているかもみてください。
薬剤アレルギーがある場合は、それ以外の痛み止めを選んで内服しましょう。また、これらの痛み止めは胃腸に副作用が出ることがありますので、胃炎など胃腸に疾患がある方は、薬剤師に相談してから内服するようにしてください。
痛い場所を冷やすことができそうであれば、氷枕や冷却シートをあてがうのも1つです。
頰の筋肉(頬筋)、こめかみあたりの筋肉(側頭筋)、首の両側にある筋肉(胸鎖乳突筋)など筋肉の痛みの場合は、軽くマッサージすることも試してください、お風呂上がりなど血流がいい時期にマッサージすると効果的です。
口が開けにくい場合は、大きさや硬さなど、食べられる食事を選んでみてください。痛い側で噛むことは自ずと避けると思いますが、これらの対処をしても痛みが持続する場合は、早めに歯科、口腔外科、耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。
「口を開けると顎が痛い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「口を開けると顎が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
顎関節症で口を開けるとあごが痛いのは治療できますか?
(歯科医師)
ここでは顎の痛みが顎関節症と歯科医師に診断された前提での話です。というのも、腫瘍や膿瘍などにより顎が痛い場合は治療戦略が全く異なるからです。
顎関節症の治療は、開口訓練、習癖をやめること、必要に応じてマウスピースによる治療になります。もちろん歯が欠けたり抜けたままにしているなど、噛み合わせに問題がある場合は、歯の被せ物、ブリッジ、インプラント、義歯(入れ歯)、歯列矯正治療などを行うことがあります。
しかし、これらの治療を行なっても、どうしても顎関節症の症状が残る方もおられます。
口が開きにくくあごが痛い・音がするときの対処法はありますか?
(歯科医師)
口が開きにくくあごが痛い・音がする場合は、痛み止めを飲んでまずはあくびを頑張りましょう。連続で開け閉めする必要はありませんが、最大開口、つまり一番大きく口を開けるようにします。握り寿司がそのまま食べられるくらい開けることが目標です。
次にできることは、両側で咀嚼することです。最初は左右どちらかで噛んでもいいのですが、左右それぞれで5回づつ噛んで飲み込む、というように、両方の顎の仕事量を同じにするよう意識しましょう。
口を開けると顎が痛い時は何科に行けばいいですか?
(歯科医師)
口を開けた時に顎が痛い場合、まず歯科医院を受診してください。かかりつけの歯科医院があるとより良いですが、かかりつけの歯科医院を持ってないという方も、通院しやすい場所にある歯科医院がいいでしょう。
また、歯科医院でも口腔外科を標榜している(看板に記載している)と、より専門的な診断、治療を受けられることでしょう。
口を開けると顎が痛いのは虫歯が原因ですか?
(歯科医師)
虫歯によって顎に痛みが出る可能性は大いにあります。特に、大臼歯のあたりは上下ともに、虫歯で痛みが出ると、その周囲に痛みが出てきます。初期の虫歯は痛くありませんが、虫歯がだんだん深くなってきた場合、痛みは歯だけでなく、周囲の顎のあたりまでひどくなります。
口を開けると顎が痛いのは親知らずが原因ですか?
(歯科医師)
親知らずは、まっすぐ生えていても歯ブラシが届きにくいため、歯磨きがしにくいことがよくみられます。また、近年は斜め・もしくは真横になって歯ぐきの下に埋もれたまま生えてこない、という場合もよくあります。斜め・もしくは真横になっている親知らずは、周囲に食べかすが入りやすいことが多く、体力が落ちた時に親知らずの周囲が痛むことがあります。その痛みを、顎の痛みとして感じます。
まとめ
今回は「お口を開けると顎が痛い」という症状から、よくみられる疾患について説明しました。もちろんこれ以外の疾患の可能性もありますし、早期の治療開始により悪化を防ぐことができる可能性も十分あります。自己判断だけでは危険な場合もありますので、早めに医療機関で診察を受けましょう。
「口を開けると顎が痛い」症状で考えられる病気
「口を開けると顎が痛い」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
口の中は自分でよく見ることのできない場所ですので、早めに歯科受診をすることを検討してください。
「口を開けると顎が痛い」に似ている症状・関連する症状
「口を開けると顎が痛い」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 口を開けると耳付近が痛い
- 口を開けると変な音がする
- 口を大きく開けられない
- 噛むと痛い
「口をあげると顎が痛い」症状の他にこれらの症状がある場合でも「扁桃炎」「扁桃周囲膿瘍」「咽頭炎」「咽頭がん」「顎関節症」「顎関節打撲」「咬筋打撲」「智歯周囲炎」などの疾患の可能性が考えられます。
症状がなかなか改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
・顎関節症治療の指針2020(日本顎関節学会)2020