「舌の口内炎」ができる原因・舌がんとの見分け方はご存知ですか?【医師監修】
「舌にできた口内炎が痛くて食事が食べられない」「舌にできた口内炎がなかなか治らない」と悩んでいる方もいるでしょう。
口内炎は頬の内側や歯茎にできることが多いため、舌に口内炎ができると不安になってしまうかもしれません。
しかし、疲れやストレスなどが原因で舌に口内炎ができることはあります。また、義歯や矯正器具との接触も原因の1つです。
この記事では、舌の口内炎の原因・舌がんとの見分け方・治療方法も詳しく解説します。
監修歯科医師:
酒向 誠(酒向歯科口腔外科クリニック)
舌の口内炎の原因
舌の口内炎が引き起こされる原因には、主に3つあります。原因を取り除くことで改善できることもありますので、思い当たる原因がないか確認してみてください。
舌で虫歯などを触る
舌でむし歯などを触ったり口の中が不衛生な状態になっていたりすることが口内炎の原因の1つです。このような口内炎を「カタル性口内炎」といいます。
カタル性口内炎の主な症状は以下の通りです。
- 粘膜が赤く腫れる
- 水泡ができる
- 味覚を感じにくくなる
舌でむし歯を触ること以外にも以下のようなことが原因となることがあります。
- 舌を噛んでしまった
- 舌を火傷してしまった
- 義歯や矯正器具が舌に接触している
歯や口の中に違和感を覚えると、無意識に舌で何度も触ってしまうこともあるでしょう。しかし、それが原因で舌の口内炎を発症することもあります。口の中に違和感がある場合には、歯科を受診して原因を取り除くことも大切です。
また、カタル性口内炎を防ぐためには口の中を清潔に保つことが重要です。毎日の口腔ケアを丁寧に行うようにしてください。
義歯や矯正器具の装着によりケアが十分に行えないような場合には、歯科でクリーニングを受けることも検討しましょう。
不規則な生活習慣
ストレスや疲れを感じたときに口内炎になりやすい方は多いのではないでしょうか。実際に、不規則な生活習慣により免疫力が低下してしまうと口内炎を発症しやすくなります。
不規則な生活習慣により発症する口内炎を「アフタ性口内炎」といいます。アフタ性口内炎の主な症状は以下の通りです。
- 赤や白の丸い形の潰瘍ができる
- 食べ物や飲み物がしみる
例えば、以下のような生活に思い当たるようであれば免疫力が低下している可能性も考えられるでしょう。
- 十分な睡眠時間が確保できていない
- 夜勤などで不規則な生活を送っている
- 悩みやストレスを抱えている
- 夜更かしをしている
- 食生活が乱れている
免疫力が低下してしまうと口の中の細菌が繁殖しやすくなります。舌の口内炎を繰り返すことが多い方は生活習慣を見直すことも大切です。
なお、ここまでご紹介した原因の他にも、矯正器具によるアレルギー性口内炎や喫煙によるニコチン性口内炎などもあります。
アレルギー性の口内炎では金属に接触している頬や舌が赤くただれてしまうのが特徴です。一方、ニコチン性口内炎の場合は粘膜に白い点々が現れることがあります。
このように舌が白くなる症状は舌がんでもみられる症状です。一般の方が見た目だけで判断することは非常に難しいため、医療機関へ受診するようにしてください。
また、歯科で定期的にお口の中をチェック・メンテナンスすることも病気の早期発見・早期治療に繋がります。
ビタミン不足
皮膚や粘膜の健康維持に欠かせないビタミンが不足することも口内炎の原因になります。ビタミンB1・B2・Eなどが不足することで粘膜の抵抗力が低下してしまうと、細菌やウイルスによる口内炎も発症しやすくなります。
細菌やウイルスによる口内炎の主な症状は以下の通りです。
- 小さな水泡が複数できる
- 発熱
- 強い痛み
細菌やウイルスによる口内炎では、単純ヘルペスウイルスやカンジダ菌などが原因となることがあります。
接触感染や飛沫感染に加え、性行為による感染も考えられるでしょう。西院やウイルスへの抵抗力を高めるためにも、食事の際にはビタミンを積極的に摂取するように心がけましょう。
特に、ビタミンB2は口内炎の予防や改善に欠かせない役割を担ってくれる重要な栄養素です。主に、以下のような食品に多く含まれます。
- 納豆
- レバー
- うなぎ
- チーズ
- 卵
- 牛乳
- ほうれん草
- しじみ
- 干ししいたけ
- 海苔
普段の食事にビタミンが不足していると感じる場合には、積極的に取り入れてみてください。なお、健康の維持にはバランスの良い食事を心がけることも大切です。
舌の口内炎と舌がんとの見分け方
舌に口内炎ができた際、「悪性腫瘍ではないか…」と気になってしまう方も少なくないでしょう。ここでは、舌の口内炎と舌がんとの見分け方について解説します。
舌の口内炎が白くないか
舌がんの特徴的な症状として、「白斑病変」というものが挙げられます。
白斑病変とは、まわりの粘膜に比べて色が真っ白になってしまう症状です。このように明らかに病変が見つかることもありますが、中には病変が小さくて気づきにくいケースもあります。
また、この白斑病変は舌の側面にできることが多いです。さらに病気が進行すると、しこりや潰瘍が形成されることもあります。
痛みがないか
口腔がんの中でも最も多く発症するのが「舌がん」といわれています。
口の中に悪性腫瘍ができた場合、初期の段階では痛みを感じないことも多いです。しかし、病気の進行に伴って痛みが現れるのが特徴です。
また、痛み以外にも様々な症状が現れることがあります。具体的な症状は、以下の通りです。
- 食べ物がしみる
- 患部が出血しやすい
- 患部の腫れが引かない
- しこりのように硬くなる
- ザラザラとしたかさぶたのようなものができる
- 口の中に痛みやしびれを感じる
- 舌や口の中の粘膜の色が変化する
- 食べ物が噛みにくい
- 飲み込みにくい
食べ物がしみることは通常の口内炎でもよくあることですが、舌や口の中の粘膜に変化がみられたり飲食や会話の際に違和感を覚えたりする場合には、医療機関に相談しましょう。
2週間以上症状が続いていないか
疲労やストレスなどが原因で引き起こされる舌の口内炎の場合、1週間〜10日程度で症状が改善することが多いです。2週間以上症状が続く場合には、他の原因が疑われるため医療機関を受診することをおすすめします。
舌でむし歯を日常的に触ってしまったり義歯や矯正器具が舌に触れていたりする場合には、その原因を取り除く必要があるでしょう。舌の口内炎が長く続く場合や繰り返す場合、その刺激によって口腔がんを発症することも考えられますので注意してください。
なお、以下のような慢性的な刺激も口腔がんを誘発することがあります。
- 辛い食品
- 酸っぱい食品
- 塩分の高い食品
- 飲酒
- 喫煙
舌の口内炎を繰り返すような状態では舌がんのリスクも高まります。刺激となるものの過剰摂取や喫煙を控えるなどの生活改善も心がけましょう。
舌の口内炎の治療方法
舌の口内炎の治療としては、ステロイド軟膏による治療が一般的です。
粘膜の修復を促すためにビタミンのお薬を処方することもありますが、生活習慣が原因の場合には根本的な生活改善が重要です。家庭でできるセルフケアには以下のようなものが挙げられます。
- 口の中の清潔を保つ
- 十分な睡眠をとる
- ストレスを発散する
- ストレスへの対処法を身につける
- バランスの良い食事を心がける
- 水分補給をする
毎日の口腔ケアはいうまでもなく、睡眠や食事などを見直すことも舌の口内炎の改善に役立つでしょう。特に、ストレスによって口内炎を繰り返すことが多い方は、ストレスを上手く発散したり対処法を身につけたりすることも必要です。
また、口の中が乾燥してしまうと細菌が繁殖しやすくなってしまうため、こまめな水分補給も心がけてみてください。
すぐに病院に行った方が良い「舌の口内炎」症状は?
- ろれつが回らない、顔の半分が曲がっているなどの症状がある場合
- 手足などにもしびれがある場合
これらの場合には、すぐに病院受診しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科、内科です。
問診や診察、血液検査や細胞診、画像診断などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
舌の口内炎は痛みを伴うことがあり、食事が摂りにくくなることもあります。日常的に痛みが続くような場合には、舌がんではないかと不安になってしまうかもしれません。
しかし、舌がんは初期の場合には痛みを感じないことが多く、痛みの有無だけで判断するのは難しいです。
舌に口内炎ができて気になる場合には、一度医療機関へ相談するようにしてください。
また、舌の口内炎は疲れ・ストレス・ビタミン不足・慢性的な刺激などによって発症することもあります。
むし歯や義歯の装着など明らかな原因がある場合には、それらの原因を取り除くことが必要です。
まずは思い当たる原因がないか、生活を見直してみてください。
舌の口内炎症状の病気
参考文献