FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 症状から調べる
  3. 口・歯
  4. 「口内炎」と「口腔がん」の違いはご存知ですか?医師が監修!

「口内炎」と「口腔がん」の違いはご存知ですか?医師が監修!

口内炎

できてしまうと非常に辛い口内炎は、ほとんどの方が経験する症状です。痛みで食事や会話が楽しめなくなってしまった経験のある方も少なくないでしょう。

口腔内の粘膜にできる炎症を総称して「口内炎」と呼びます。その原因や部位はさまざまで、意外な病気が潜んでいる可能性もあるため注意が必要です。

この記事では、非常に身近な症状でもある口内炎について原因・症状・潜んでいる可能性のある病気・治療方法などを詳しく解説いたします。ぜひ参考にしてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

口内炎の原因

口内炎で悩む女性
口内炎は口腔内粘膜にできる炎症の総称です。炎症の種類や場所はさまざまで、一概に原因が同じとはいえません。見た目に現れる症状だけでも下記のように分類されています。

  • アフタ性
  • カタル性
  • 潰瘍性
  • 壊疽性
  • 水泡性
  • 紅斑性

さらに原因別では、下記のように分類できます。

  • 細菌性
  • 真菌性
  • ウイルス性
  • アレルギー性

口内炎は見た目に違いがあり、白い口内炎赤い口内炎に大別できます。
見た目がどちらに当てはまっているか・できやすい場所はどこかなどの要素から、ある程度の原因を予測することが可能です。それぞれ下記に解説いたします。

白い口内炎

白い口内炎は痛みを伴い、数ミリの大きさがある最もポピュラーな症状です。頬の内側を噛んだ・歯ブラシで傷がついた・熱いものを食べて口腔内粘膜を火傷をした…などの物理的な刺激によって傷ができ、雑菌が入り込んで起こるケースが多いでしょう。
この口内炎はアフタ性口内炎と呼ばれており、ストレス・ビタミンの不足などが原因になる場合もあります。はっきりとした原因は解明されていませんが、先述したように雑菌が入り込むだけでなく免疫力の低下やアレルギーなどさまざまな要因が考えられます。
また、白い薄皮ができはがれる場合にはカンジダというカビの1種による真菌性口内炎の可能性が高いです。免疫力が低下すると常在菌のバランスが崩れ、カンジダ菌が優位になるため起こります。
疲労・ストレス・病気による免疫力の低下だけでなく、薬の服用が原因になる場合もあるため注意しましょう。なお、白い口内炎のようにみえても痛みがない場合は、口内炎ではなく白板症の可能性があります。ガンに変化する可能性がある病変といわれているため、注意が必要です。ただし、白板症は消退しないという特徴があるため、一度消退して再度できた場合には白板症ではない可能性が高いといえます。

赤い口内炎

赤く炎症を起こす口内炎は、カタル性口内炎と呼ばれるものに該当する場合が多いです。口腔内粘膜がザラザラする・赤くなる・白くなるなどの炎症が起こり、炎症と健康な粘膜の境目がはっきりしていません。
赤に限らず白く痛みを伴う口内炎でも、境目がはっきりしていないならカタル性口内炎の可能性が高いでしょう。口腔内に焼けるような熱感がある・口臭がある・酸味や辛みのある食べ物が沁みるなどの特徴があります。頬の内側を噛んだ・入れ歯や矯正器具を入れているなどの物理的刺激のほか、虫歯・歯周病による口腔内の衛生状態の悪化も原因となります。ビタミンの不足・喫煙・薬の服用なども原因になる場合があるため、注意しましょう。
また、水泡ができている場合はヘルペス性口内炎の可能性があります。単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で、乳幼児の発症が多い口内炎です。発熱を伴うケースも多く、水泡がつぶれると強い痛みを伴うため、医療機関を受診ししっかりと治療しましょう。
ほかに、赤い口内炎にみえて実は紅板症だった、というケースが非常に稀にあります。紅板症は白板症以上にがんに変化しやすいといわれている疾患です。鮮やかな赤で刺激痛がある場合には紅板症の可能性もあるため注意しましょう。

口内炎ができやすい場所は?

口腔内粘膜にできた炎症はすべて口内炎と呼ばれますが、特にできやすい場所は下記のとおりです。

  • 頬の内側の粘膜
  • 唇の裏側の粘膜
  • 舌の縁
  • 歯や入れ歯の刺激を受けやすい頬の内側部分

このように歯・食べ物・入れ歯などによる物理的な刺激を受けやすい部位は特に口内炎ができやすく、その多くが最もポピュラーなアフタ性口内炎です。一方でカンジダ菌による真菌性口内炎の場合、頬の内側以外に舌にも症状が多くみられます。
乳幼児が発症しやすいヘルペス性口内炎では、口腔内粘膜の水疱だけでなく歯茎の炎症も多く認められています。また、口内炎と間違えないよう注意が必要な白板症は、頬の内側以外に歯茎にもできやすい疾患です。

口内炎の症状

口内炎
口内炎は、炎症部分に痛みを伴うケースがほとんどです。原因により異なりますが、一般的にポピュラーなアフタ性口内炎では炎症部分が白くなり、数ミリの大きさが確認できます。
カタル性口内炎では炎症部位のザラつき・赤くなる・白くなるなどの症状があります。白くなって粘膜がはがれてくる場合は真菌性口内炎が、水泡ができるならヘルペス性口内炎が疑われる症状です。
なお、口腔内粘膜であればどこの炎症でも総称して口内炎と呼ばれていますが、歯肉炎・舌炎・口唇炎のように炎症を起こしている場所によって名称が変わる場合があります。どれも痛みを伴う症状のため、スムーズに治療するためには医療機関の受診をおすすめします。

口内炎が起こる病気

口を開ける子供
口内炎にはさまざまな原因と種類があります。物理的な刺激・免疫力の低下・ビタミンの不足などが大きな原因として知られていますが、なかには病気が隠れているケースもあります。たかが口内炎だからと放置しないよう注意しましょう。
特に口内炎と深い関係のある病気として代表的なのが手足口病ベーチェット病口腔がんです。どれも悪化を防ぎ適切に治療を受けることが重要な病気です。それぞれの病気の特徴をしっかりと押さえ、早期発見できるよう意識しておきましょう。

手足口病

手足口病は乳幼児を中心に夏季に流行する病気です。コクサッキーウイルスA6・A16・エンテロウイルス71(EV71)などのウイルスが主な原因で、口の中・手・足に水疱性の発疹が現れるのが大きな特徴といえるでしょう。
接触感染・飛沫感染だけでなく、便や尿からも感染することから、幼稚園や保育施設などでは特に流行が目立ちます。感染から3~5日程度経過すると手・足などに発疹が現れ、同様に口腔内粘膜にも水疱状の口内炎が認められます。
水疱状の口内炎はつぶれると強く痛むため飲食できなくなる場合も多く、栄養状態や脱水症状には特に注意が必要です。
特別な治療法や対処法はなく、日常的に手洗いなどの衛生対策を気にすること・集団感染に気を付けることが重要です。

ベーチェット病

ベーチェット病は難病として指定されている病気です。強い痛みを伴う口内炎を繰り返す再発性アフタ性潰瘍だけでなく、眼症状・外陰部潰瘍・さまざまな皮膚症状の4つが主な症状とされています。
なかでも口内炎は初期症状として現れる場合が多く、発症後は高頻度で繰り返される可能性が高いです。
原因は解明されていませんが、遺伝子の持つ素因に外的な要素が加わり、白血球の機能が過剰になることで免疫反応が炎症を起こすと考えられています。
確立された検査の基準や治療法もなく、症状や重症度にも個人差が大きいです。複合的な所見で診断され、治療も個々の症状に合わせて方針を立てる必要があります。非常に痛い有痛性といわれているアフタ性口内炎が頻発するなど、気になる症状がある方は医療機関の受診を検討してみましょう。

口腔がん

口腔内に腫瘍ができるがんを総称して口腔がんと呼びます。厳密には口内炎ではないものの、まさか腫瘍とは思わずに口内炎と勘違いしてしまうケースが多いため注意が必要です。
具体的には下記のがんなどが「口腔がん」に当てはまります。

  • 舌がん
  • 歯肉がん
  • 口蓋がん
  • 口腔底がん
  • 頬粘膜がん
  • 口唇がん

なかでも舌に発症する舌がんが最もポピュラーで発症例が多く、次いで歯肉がんが多く認められます。口腔がんはがん全体の1~3%程度の発症率とされており比較的珍しいがんです。
一方、腫瘍を目視できるケースが多いため、知識さえあればほかのがんに比べて早期発見しやすいといえるでしょう。早期発見できれば治療しやすく生存率も高いといわれていますが、口内炎と勘違いして放置してしまうとがんが進行し危険です。2週間以上治らないなど、治りの悪い口内炎は口腔がんの可能性があるため注意してください。
また、口腔内粘膜が白く変化する・赤くただれる・舌にザラつきやしこりがある・歯肉の腫れ・出血・歯のぐらつきなどの症状も口腔がんの初期症状の可能性があります。がんに変化しやすい病変として知られる白板症紅板症も口内炎と間違いやすい症状です。
気になる症状があるときは、ただの口内炎だと高をくくらず医療機関を受診してみてください。口腔がんの発症リスクを下げるには、ほかのがんと同様に飲酒・喫煙を控えることが大切だと考えられています。また、栄養状態を気にかけ、口腔内の清潔も保つよう心掛けましょう。

治療方法

処方イメージ
口内炎にはさまざまな原因・種類があるため、個々の状態に合わせた治療が必要です。口腔内粘膜の炎症を抑えるため、ステロイドが配合された塗り薬を使用するケースが一般的です。
ただし、口腔内のため簡単に舐めとられないよう膜を張るような塗り薬・粘膜に貼り付けるパッチタイプなどを使用します。ほかに、炎症を抑えるためのうがい薬で改善を図るケースもあるでしょう。入れ歯や歯列矯正の器具などによる物理的刺激が原因となっている場合は、口腔内粘膜との接触を改善するため器具の調節も必要です。
また、カンジダ菌による真菌性口内炎なら抗真菌薬を、ヘルペス性口内炎なら抗ウイルス薬を使用するケースもあります。
ビタミンの不足など栄養状態に原因がある場合にも、内服薬を用いることで改善が見込めるでしょう。

すぐに病院に行った方が良い「口内炎」症状は?

口内炎の症状のみでは、すぐに病院受診をする必要はありません。
歯肉が腫れる、出血しやすい、発熱を伴うなどの症状があれば、早めに病院受診を検討しましょう

行くならどの診療科が良い?

主な受診科目は、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科、内科、皮膚科です。
問診、診察、血液検査、細菌培養検査などを実施する可能性があります。ベーチェット病が疑われる場合には皮膚の針反応 など、帯状疱疹や手足口病 、壊死性潰瘍性口内炎、天疱瘡が疑われる場合には水疱の検査など、白血病が疑われる場合 には骨髄穿刺検査など、舌がんが疑われる場合には画像検査などが追加される可能性があります。

病院を受診する際の注意点は?

持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。

治療をする場合の費用や注意事項は?

保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。

まとめ

歯磨きをする女性
口内炎について、原因・症状・潜んでいる可能性のある病気・治療方法など詳しくご紹介いたしました。

ほとんどの方が経験する身近な症状ですが、口腔内の衛生状態や栄養状態による体からのSOSの可能性があります。

さらには意外な病気が潜んでいたり、口内炎ではなく実はがんだったりというケースもあるため注意が必要です。

ついつい甘くみてしまいがちな口内炎ですが、適切に症状を見極め、少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診してくださいね。

この記事の監修医師

口内炎に関連する記事