
清水先生
下垂体腺腫の治療について、どのような提案を受けましたか?
よしこさん
人間ドックで下垂体腺腫が発覚し、手術を提案されました。
清水先生
手術はすぐに決断できましたか?
よしこさん
当時は賞レースの決勝も控えていて、仕事のスケジュール的にもどうするか悩みましたね。
清水先生
そんな中、手術を決断した理由は何だったのでしょうか?
よしこさん
頭痛や視野が狭くなったことで徐々に仕事に支障が出てきたためです。医師から手術は早ければ早いほうがいいと説明されていたことも決断する理由になりました。なるべく早めに手術はしたほうがいいですか?
清水先生
早期に発見し治療することは大切だと思いますが、無症状であればすぐには手術せず経過を見ることもあります。
よしこさん
下垂体腺腫を放置した場合のリスクはありますか?
清水先生
腫瘍が大きくなると最終的に視力を失う可能性もあります。また、成長ホルモンの過剰分泌によって糖尿病や高血圧を引き起こし、脳や心臓の血管障害、さらにはがんのリスクも高まるため注意が必要です。
よしこさん
私も血糖値や血圧は高くなり、成長ホルモンの過剰分泌によってがんの進行を早める可能性もあることを聞き、怖いと思いました。
清水先生
そうですね。ただ、怖いというだけではなく、早期に発見し治療すれば改善する病気だという認識を持っていただければと思います。手術について、どのような説明がありましたか?
よしこさん
鼻から内視鏡で手術すると説明がありました。手術は初めての経験で全身麻酔だったので、怖かったですね。
清水先生
手術を実際に経験して、いかがでしたか?
よしこさん
腫瘍から出血が始まっていたようで、早く決断してよかったと思います。手術中は金色の花畑で先祖と話している夢を見て、目が覚めたら手術は成功していました。不思議な経験でしたね。
清水先生
手術にどれくらい時間がかかりましたか?
よしこさん
2〜3時間くらいで無事に終わりました。
清水先生
今は何か治療を受けてはいますか?
よしこさん
年に1回、MRI検査と血液検査を受けています。下垂体腺腫に対する治療方法は、どのような選択肢があるのでしょうか?
清水先生
薬でコントロールできるものもありますが、視野の異常や薬でコントロールできないホルモンの症状が出ていれば第一の選択肢は手術になると思います。
よしこさん
鼻から手術する理由は何ですか?
清水先生
下垂体は脳から垂れ下がるような場所にあり、鼻からアプローチすることで脳へ触れずに治療が可能となるためです。腫瘍を摘出する際には脳を包む硬膜を切開するため、術後に水が漏れないよう筋膜や脂肪でふさぐ処置がおこなわれます。
よしこさん
腫瘍を摘出したあとの穴は、今後ビキニも着ることを考え、おへそ周りの脂肪を使って目立たないように補強してくれました。鼻以外から手術する方法もありますか?
清水先生
腫瘍の位置によっては開頭手術が選択されることもあります。第一の選択肢になることは多くありませんが放射線による治療がおこなわれる場合もあります。
よしこさん
放射線治療をおこなうケースはどのような場合なのでしょうか?
清水先生
放射線以外での治療が難しい場合や再発リスクのある際に実施することが多いと思います。よしこさんは手術後に後遺症を感じていますか?
よしこさん
目立った後遺症はありません。手術の翌日には今まで感じていた症状が一気になくなりました。術後しばらくは重いものを持たないようにしていましたが、今では問題なく持てるようになっています。この間までジムに通い70kgのダンベルも上げられるようになったのですが、ぎっくり腰になってしまい今は通っていません。
清水先生
手術直後は力を入れると、ふさいだ硬膜に圧がかかり水漏れしやすくなってしまうので、注意は必要ですね。
よしこさん
手術によって腫瘍が摘出できれば視野は回復するのですか?
清水先生
進行すると回復しないこともあります。
よしこさん
できるだけ早く治療することが大切ですね。一般的な後遺症には、どのようなものがありますか?
清水先生
術前にあった症状がそのまま残る人もいます。手術の影響で下垂体の機能が低下し、疲れやすくなったり尿量が増えたりすることも後遺症の一つです。手術の穴から菌が入ることで髄膜炎などを引き起こす可能性もあるため注意が必要と言われています。
よしこさん
症状が出たらどこへ受診すればいいのでしょうか?
清水先生
いきなり脳神経外科にたどり着くのは難しいと思いますので、症状に合わせた病院を受診してください。よしこさんのように人間ドックや脳ドックを定期的に受けることは非常に有効であり、1〜2年に1回は受けていただきたいと思います。
よしこさん
症状がなくても定期的に検査することが大切ですね。自分の体を一番守れるのは自分だと思うので、自分の体を愛してほしいと思います。