

金中先生
安田さんは脳腫瘍を患ったとのことですが、その後の体調はいかがですか?
安田さん
今も光には過敏でライトに照らし続けられるだけでなく、ついたり消えたりを繰り返す際もしんどいですね。
金中先生
コンサートの光はいかがですか?
安田さん
コンサートの光も正直つらいですね。去年おこなった20周年ライブのリハーサルで強い光を浴びて、てんかん発作を起こしてしまい、本番に向けてその日のリハーサルは欠席しました。
金中先生
光過敏以外の症状は何かありますか?
安田さん
腫瘍のあった場所が言語や記憶力に関係する場所だったので、覚えることに少し苦労する感覚は今でもあります。
金中先生
手足の力などに問題はありませんか?
安田さん
大丈夫ですね。
金中先生
常に暗い中で生活はできないので、光に過敏であればサングラスが必要になってきますよね。
安田さん
そうですね。手術してから光に過敏となり仕事でもサングラスが欠かせません。手術から8年間たっても十分に理解されず、世間の目も気になり正直ストレスを感じています。
金中先生
今ではサングラスが体の一部でもありますからね。
安田さん
サングラスは生活に欠かせないパートナーだと感じています。
金中先生
光に過敏でサングラスを使いたい人は多いですが、かけにくいと感じる人もいるので、もっと自然におしゃれ感覚で使えるといいですよね。
安田さん
そうですね。私もサングラスブランドのGROOVERとコラボしてサングラスを発売しているので、毎日のファッションとして楽しんでもらえるよう多くの人に届けたいと思っています。
金中先生
病気を発見したきっかけは何だったのでしょうか?
安田さん
もともと偏頭痛はありましたが、それ以外の違和感はありませんでした。ある日、テレビ局のエレベーターに乗っている際に閉塞感とふらつき、めまいで違和感を覚え、直感的に脳ドックを受けたことがきっかけです。
金中先生
脳ドックの結果はいかがでしたか?
安田さん
左前頭葉に8cmの腫瘍が見つかりました。
金中先生
大きいですね。
安田さん
手術前は特に自覚症状もなかったのですが、術後にメンバーからはライブ中の様子について「目つきが違った」「言葉が鋭かった」と指摘されました。今思えば異変が出ていたのかもしれませんね。
金中先生
安田さんは偏頭痛もあってなかなか気づきにくかったのかもしれませんが、周囲の人は異変を感じていたのかもしれませんね。
安田さん
髄膜腫が見つかった左前頭葉は、言語機能や記憶以外にはどのような働きに関係する部位ですか?
金中先生
性格にも関係のある部位です。言葉が鋭かったのは、その影響があるかもしれません。
安田さん
脳腫瘍の画像を医師から見せていただいた際、驚きや恐怖を感じずとても冷静でした。その冷静さも腫瘍の位置が関係しているのでしょうか?
金中先生
前頭葉への影響で無関心になっていた可能性もあるかもしれません。
安田さん
私の家系には脳の病気を経験した人はいないのですが、髄膜腫に遺伝は関係しますか?
金中先生
一部のまれな髄膜腫以外、基本的に遺伝の影響はなく、後発的で40〜70代に多いとされています。
安田さん
髄膜腫の原因は何なのでしょうか?
金中先生
放射線治療などのきっかけはありますが、基本的にはまだ分かっていません。
安田さん
髄膜腫は具体的にどこにできるのですか?
金中先生
頭は表面からみると、髪の毛の下に頭皮があり、その下には頭蓋骨があります。頭蓋骨の中には脳を守る3枚の膜(脳側から軟膜・くも膜・硬膜)があり、これらを合わせて髄膜と呼びます。髄膜腫はその膜の下にできる腫瘍です。

髄膜説明図
安田さん
軟膜、くも膜、硬膜があって脳と軟膜の間にできるのが髄膜腫ということですね。
金中先生
はい。脳の腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があります。脳にはがんという概念がなく、髄膜腫は脳を押すように大きくなることで症状をきたす良性腫瘍で、悪性腫瘍は脳の細胞に直接入り混ざって広がっていくのが特徴です。
安田さん
腫瘍の種類にもよると思うのですが、髄膜腫は転移が起こり得るのでしょうか?
金中先生
髄膜腫は良性腫瘍のため転移はしません。髄膜腫は腫瘍の悪性度に応じてグレード1〜3の3段階に分けられます。グレードが高くなるほど成長は早く、再発率も高まります。
安田さん
どれくらいのスピードで成長しますか?
金中先生
グレード1の成長スピードは1年に1mmほどです。安田さんの髄膜腫は1年に1cmくらいのスピードで成長したと考えられるので、グレード2だと思われます。
安田さん
がんの場合は5年間再発しなければリスクが減ると思うのですが、髄膜腫の5年生存率はどれくらいですか?
金中先生
腫瘍のグレードと手術の結果次第ですが、全部取り切れた場合の5年生存率はグレード1で99%、グレード2でも90%くらいにはなると思います。
安田さん
私も病気にならなければ脳ドックを受けていなかったと思うのですが、脳ドックはどのタイミングで受けるのが適切なのでしょうか?
金中先生
症状のない元気なうちから検査するのが一番良いタイミングです。何も問題がない状態で検査することで、小さな脳腫瘍を早期に発見して計画的な対応が可能になります。MRIやエコー、脳波など10〜15分で終わる検査が多いので、30歳を超えたら一度は受けてみてほしいですね。
安田さん
早期に発見し治療するため、一度は元気なうちに検査することが大切ですね。

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