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chapter02 武尊「うつ病」から復活へ。休養を経た今こそ伝えたい本音と覚悟 chapter02 武尊「うつ病」から復活へ。休養を経た今こそ伝えたい本音と覚悟

岡先生岡琢哉先生

武尊さんが自分の病気を公表しようと思ったきっかけはありますか?

武尊さん武尊さん

公表することで自分が過ごしやすくなり、同じ病気の人に勇気を与えることにもつながるかもしれないと思ったからです。公表してからはすごく気持ちが楽になり、無理して頑張りすぎなくてもいいと思えるようになりました。

岡先生岡琢哉先生

うつ病を公表されてから、周囲の対応で良かったことや嫌だったことはありますか?

武尊さん武尊さん

公表時にはうつ病との付き合い方も分かっていたので、何を言われても嫌な気持ちになることはありませんでした。体調が悪いとテンションが低く、表情や話す言葉が暗くなってしまうこともあると思うので「テンション低くない?」と言われたら嫌だろうなと感じたことがあります。「頑張ってね」という言葉もプレッシャーになって、苦しく感じる人もいるのだろうなと感じました。

岡先生岡琢哉先生

うれしかった言葉はありますか?

武尊さん武尊さん

実際に言われたことはありませんが、私は「頑張らなくていい」や「ちょっとずつでいい」と相手が安心できるような言葉をかけてあげたいと思っています。

岡先生岡琢哉先生

「ちょっとずつ」といった一言は、すごく安心しますよね。

武尊さん武尊さん

そういった言葉をかけられる人が少しでも増えるよう、うつ病について正しい知識が浸透していくといいですよね。

岡先生岡琢哉先生

そのとおりですね。うつ病について知ってもらうことは周囲の理解だけでなくうつ病の予防にもつながるので大切だと思います。

武尊さん武尊さん

うつ病を公表してから相談されることがすごく増えたのですが、正しい知識がないことでお酒やカフェインを過剰に摂取している人が多いと感じています。

岡先生岡琢哉先生

カフェインやアルコールは気軽に摂取できて一時的に気分の改善もあり、手にとってしまう人も多いと思います。カフェインやアルコールの摂取量が増えることで悪循環に陥っていく危険もあることを知っておいていただきたいですね。病院と本人だけでうつ病を治すのは難しいと思うので、うつ病と向き合う過程を見守ってくれる人や逃げられる場所があるという安心感も大切だと思います。

武尊さん武尊さん

周囲の環境ってすごく大事ですね。

岡先生岡琢哉先生

今は周囲に理解してもらえている実感はありますか?

武尊さん武尊さん

そうですね。うつ病を隠さなくなったことで体調が悪い時は休めるようになったので、楽になりました。

岡先生岡琢哉先生

気持ちが楽になって、安心できることが何よりも大切ですね。武尊さんが引退ではなく休養を選択された理由についても聞かせてください。

武尊さん武尊さん

休養を決断した時期は体調だけでなく、精神的にも限界ギリギリだったのですが「THE MATCH 2022」という大きな試合を控えていて、この試合はやらないとやめられないという思いがありました。試合自体は負けてしまって、そこで引退という選択肢もあったのですが、試合に負けたまま終わることや病気に負けて引退したと思われることも嫌だったので休養を選びました。公表するからにはそこから復活する姿を見せることで、同じ病気の人たちに勇気を与えたいという思いが何より強かったですね。

岡先生岡琢哉先生

病気にしっかりと立ち向かって勝ちたいという気持ちや、このまま終わらせたくないという気持ちから休養という選択をしたわけですね。休養を経験してどう感じましたか?

武尊さん武尊さん

自分で区切りをつけて全力で休むことやリラックスできる時間を確保することで、プレッシャーやつらさが消えて、体調も良くなりました。うつ病になる人には完璧主義な人も多く、そういう時間を作ることにも勇気が必要だと思います。ただ、病気をしっかり治したほうが仕事でも良いパフォーマンスを発揮できると思うので休むことも大切だなと改めて実感しました。

岡先生岡琢哉先生

そうですね。病気だけでなく、自分と向き合う時間が体の調子を整えることにつながるので、大切ですね。武尊さんはうつ病とどのように向き合っていましたか?

武尊さん武尊さん

そうですね。試合前などストレスが多い時期には、リラックスする時間や自然の中で過ごす時間を作るようにしていました。

岡先生岡琢哉先生

仕事柄追い込まなければいけない時期もあり、緊張感も必要になると思うのですが、最初からリラックスする時間を確保するように意識できていたのですか?

武尊さん武尊さん

できていませんでした。むしろ昔はリラックスしてはいけないと思い込んでいたので、試合前の2〜3ヵ月間は常に緊迫していたと思います。そうすると練習や睡眠の質も悪くなって、疲労の回復が遅くなることも多かったですね。最近は追い込む中でもオフの時間を作るようにしています。

岡先生岡琢哉先生

リラックスの時期と追い込む時期をしっかりと区別しているのですね。

武尊さん武尊さん

そうですね。その区別ができるようになったのはここ数年です。最近は試合前になるとアメリカで合宿しているのですが、私のことを知っている人が少ないことで人間関係のストレスが減り、練習以外の時間に仕事が入ることもないのですごく楽です。それ以上に良かったのは日光を浴びることだと思います。

岡先生岡琢哉先生

大切なことですね。

武尊さん武尊さん

パニック障害を発症した頃に初めてアメリカへ行ったのですが、日光を浴びることを意識したら2〜3週間で症状がなくなりました。その経験から、日本を離れて自然の中で日光を浴びる生活が自分には合っているのだと気づきました。

岡先生岡琢哉先生

環境を変えることで症状を緩和できることが分かったのは大きな気づきですね。

武尊さん武尊さん

そうですね。最近では、その時の体調や許容範囲についても自分の体と対話できるようになりました。

岡先生岡琢哉先生

自分との対話ってすごく曖昧で分かりにくいことだと思うのですが、それを実感できているのはすごいことだと思います。最後に今後の展望について聞かせていただけますか。

武尊さん武尊さん

格闘技をこれからも現役で続け、世界最強を証明することを一番に考えているのですが、うつ病と向き合ってきた経験は自分でしか伝えられないと思っています。今回のようなインタビューや病気と戦いながら試合で勝つ姿を通して、同じような病気を抱えている人にパワーを与えられる存在になれたらいいなと思っています。

岡先生岡琢哉先生

武尊さんも背負いこみすぎないでくださいね。今日はありがとうございました。

編集部より

今回の対談を通して、武尊さんがどのようにうつ病と向き合い対処してきたのか知っていただけたと思います。真面目で責任感が強い人はうつ病になりやすいと考えられていますが、これは大部分の日本人に共通した特徴でもあり、誰にでもうつ病になる可能性があるようです。武尊さんの言葉にもあるように、正しい知識を身に付けることでうつ病の正しい理解が広まり、安心できる環境を作り出すきっかけにつながるのだと思います。この対談を通してうつ病との向き合い方についての理解が深まることを願います。

この記事の監修医師