伊豫先生
中村さんのように段階的に目標をクリアしていくことは、モチベーションの維持にとても大切だと言われています。 若い選手の指導で、中村さんが意識していることはありますか?
中村さん
できるだけ褒めるようにしています。
伊豫先生
大切ですね。褒めることによる外的な報酬も大切ですが、それ以上に内的な報酬も重要だと言われています。
中村さん
内的な報酬も大切ですよね。
伊豫先生
はい。課題をクリアしたという達成感がモチベーションや次の課題の達成につながっていきます。
中村さん
今は若い選手を指導しているのですが、ユースで活躍していた高校生もプロの世界に入るとより高いレベルの選手と一緒に練習をすることになるので、成功体験を得ることが難しくなっています。
伊豫先生
なるほど。それは中村さんが若手選手だった時と比べると違いがあるのでしょうか?
中村さん
はい。当時は1軍と2軍に分けて若い選手や能力が低い選手は、1軍とは別のグラウンドで練習をしていました。その時は能力の近い選手同士で練習をするので、成功体験もあったと思います。それが現在では全員で練習をするので、なかなか結果が出ない選手も多いようです。
伊豫先生
成功体験が少ないということですね。
中村さん
はい。全体練習の後は若手選手を集めて練習をするようにしています。
伊豫先生
ライバルや能力の近い選手と練習をすることでモチベーションにつながるので、良い方法だと思います。
中村さん
続けていきます。
伊豫先生
最近はニュースでの報道やSNSによる批判が当たり前の時代になり、選手たちもストレスがかかっていると思うのですが、中村さんはニュースやSNSは見ていましたか?
中村さん
僕もワールドカップの時はニュースやSNSを見ていましたね。
伊豫先生
どう感じましたか?
中村さん
へこみましたね。ただそれよりも批判に負けたくないという気持ちのほうが強かったですね。批判を覆すように努力する気持ちがあったので見られていたのだと思います。的を射た批判もあったので、それは受け止めていましたね。
伊豫先生
中村さんが指導者としてメンタルケアで意識していることは何ですか?
中村さん
選手のタイプや性格、指導するタイミングには注意をしています。僕が指導者として意識していることは、選手に身近な存在であることです。
伊豫先生
具体的には何をしているのでしょうか?
中村さん
ロッカールームやお風呂は選手とよく一緒に過ごしています。選手と同じ空間で過ごすことによってグラウンド上での指導ではなく、選手同士の会話のようなかたちでアドバイスができることも良い点だと思っています。
伊豫先生
選手により近い存在であることを大切にされているのですね。指導者として今後の目標はありますか?
中村さん
Jリーグの監督を務めるために必要なJFA(日本サッカー協会)のS級ライセンスを取得することが目標です。また、プロの世界で勝つチーム作りに必要なことを勉強していきたいと思っています。
伊豫先生
最後に読者へ向けて一言お願いします。
中村さん
選手としてのメンタルケアには、成功体験を積み重ねていくことと、家族や友人、仲間などの頼れる相談相手の存在が大切だと思っています。今回の対談を通してその大切さを感じてもらえたらうれしいです。