大関先生
股関節を手術してから時間もたつと思うのですが、今は股関節を意識せずにプレーはできていますか?
錦織さん
そうですね。痛みなくプレーできていますが、疲れは出やすい気もします。常に気を配りながら治療している状態です。
大関先生
練習や試合の後のケアを重点的に行っているということでしょうか?
錦織さん
はい。アイスバスで冷やすことや鍼治療、マッサージ、電気治療などいろいろな治療法を試しています。
大関先生
テニスは試合時間も長く、世界ツアーでの飛行機移動など体の負担も大きいと思います。その中で体のケアを意識し始めたのはいつ頃からですか?
錦織さん
18歳で最初に肘の手術を経験したときからだと思います。
大関先生
手術がきっかけだったのですね。
錦織さん
はい。手術をきっかけに1年間休まなければならず、それをきっかけにセルフケアや自分の体と向き合うことの大切さに気づきました。
大関先生
大切なことだと思います。
錦織さん
体への負担をなるべく減らす方法などあれば教えてください。
大関先生
かなり負担の大きいスポーツですから、一回のケアで疲労を全部取るのはなかなか難しいと思います。そのため練習や試合後のケアを継続して行っていくことが重要です。そして、栄養面や睡眠も含めた休息などの生活習慣を改善することで、蓄積する負荷の軽減につながると思います。
錦織さん
ふだんの生活も大切だということですね。
大関先生
そうですね。錦織さんは、子どもの頃に大きなケガや故障をしたことはありますか?
錦織さん
手術になるような大きなケガはなかったと思います。子どもの頃はテニス以外にも野球やサッカー、水泳、ピアノなどもしていたので、突き指や捻挫をしたことはありました。身長が伸びた時期に膝の痛みが出たこともあると思います。
大関先生
成長期に生じる膝痛の原因の多くがオスグッド・シュラッター病です。オスグッド・シュラッター病が起きる子どもの特徴として大腿四頭筋が硬いことも多く、その予防には大腿四頭筋をストレッチすることも大切です。それぞれのスポーツはどれくらいの頻度で行っていたのですか?
錦織さん
テニスはスクールに通いながら週3〜4回、学校の部活ではサッカー、その間に水泳も週1〜2回の頻度でやっていたと思います。とにかく動くことが好きで日曜は野球もしていました。
大関先生
いろいろなスポーツをやっていたことが、大きなケガや故障をしないことにつながっていたかもしれませんね。
錦織さん
そういった影響もあるのですね。
大関先生
はい。特定のスポーツだけ続けていると故障につながりやすいです。例えば野球では投球やバッティング動作を同じ方向に繰り返します。その蓄積した負荷により、肩肘や腰の痛みにつながります。
錦織さん
一つのスポーツに偏ることも良くないのですね。ケガをしにくい体づくりのために子どもの頃からするべきことはありますか?
大関先生
そうですね。まずは繰り返す同じ動きを過剰にしすぎないことです。スポーツ前後に行うストレッチのほか、筋肉を鍛えることも大切だと思います。
錦織さん
スポーツ前後のケアや体を鍛えることが重要ですね。
大関先生
はい。ただし、これをやっていれば絶対にケガをしないというトレーニングはありません。体の使い方も人それぞれ異なるので、個別のエクササイズやトレーニングを受けられる環境を作るのが理想です。日本のスポーツ業界全体でそういった環境を整えていくことは、ケガを減らしパフォーマンスを上げることにつながっていくと思います。
錦織さん
子どものために保護者が知っておくべきケガの予防法があれば教えてください。
大関先生
保護者はケガの予防法だけでなく、実際にどういったケガがあるのか知っておいたほうが良いと思います。
錦織さん
体やケガの知識は誰でも知っておいたほうが良いですね。
大関先生
そうですね。ケガだけでなく熱中症などスポーツで起こり得る問題についても知っておくべきです。私たちは誰でもそういった知識をつけられるように約10年前から「スポーツ医学検定」の普及を目指しています。
錦織さん
大事なことですよね。
大関先生
錦織さんが今後取り組んでいきたいケアやトレーニング方法はありますか?
錦織さん
テニスの場合は、心肺機能だけでなく筋力、柔軟性など多くのトレーニングが必要だと考えています。私も若いときは寝ていれば次の日も動けるような体でしたが、30歳を超えてくると難しく感じているので、体のケアも重点的にやっていきたいと考えています。