

丹生先生
現在の体調はいかがですか?
中川さん
耳の感覚は9割以上回復し多少のしびれや痛みはありますが、顔面神経麻痺もなく、日常ではほとんど気にならないくらいまで良くなってきています。
丹生先生
最初はどのようにして気がついたのですか?
中川さん
そうですね。最初は左側の耳の後ろに硬いしこりがあることに気づきましたが、痛みはなく動きもしなかったので骨だろうと思ってそのままにしていました。
丹生先生
その後はどうしたのですか?
中川さん
しこりが少し大きくなったように感じたため、通っていた耳鼻咽喉科で相談したところ、異常はなく様子を見るように言われ、そのまま気にせずに過ごしていました。
丹生先生
それはいつ頃ですか?
中川さん
手術の5年くらい前だと思います。
丹生先生
その後の経過について教えてください。
中川さん
ある日、美容院で首の右側にもしこりがあると指摘され、不安になって先生を紹介していただき受診することにしました。診察の結果、右側のしこりはリンパ腺にばい菌が入ったことによるもので、薬を服用すればすぐに治るとのことでした。ところが、それよりも前から気になっていた左側のしこりについて医師に相談したところ、詳しく検査をしたうえで手術が必要と診断され、手術を受けることになりました。
丹生先生
当時はどんな検査をしましたか?
中川さん
最初に腫瘍の大きさを調べた後、注射の針で中の細胞を採取しました。その検査が死ぬほど痛かったのを覚えています。そのほかにMRI検査も受けました。
丹生先生
その時の診断について教えてください。
中川さん
耳下腺腫瘍の診断を受け、細胞診の段階では良性で多型腺腫の可能性が高いとのことでした。ただ、実際に手術するまでは、良性かどうかは分からないことも聞きました。
丹生先生
腫瘍の深さや顔面神経への影響について説明はありましたか?
中川さん
私の場合、腫瘍が深い位置にあり、顔の前側にも広がっていて、顔面神経に絡んでいる可能性があると説明を受けました。放置すると腫瘍が大きくなり顔面神経麻痺や悪性化のリスクもあると言われました。耳下腺について教えていただけますか?
丹生先生
耳下腺は耳の前から下に存在する、唾液を産生・分泌する臓器です。その中に顔面神経が通っているため、手術で神経がダメージを受ける場合や腫瘍の影響で顔面神経麻痺が出ることもあります。
中川さん
良性腫瘍でも放置することで悪性化のリスクはあるのでしょうか?
丹生先生
そうですね。耳下腺腫瘍の約8割は良性で、その中でも多型腺腫が70〜80%を占めますが、10〜20年放置すると約10%の確率で悪性化する可能性があります。
中川さん
多型腺腫以外にはどのような種類があるのですか?
丹生先生
主に喫煙が原因のワルチン腫瘍のほか、粘表皮がん、腺様嚢胞がん、導管がんなどの悪性腫瘍があります。中川さんは喫煙されますか?
中川さん
私は喫煙しませんし、周囲にも吸っている人はいません。喫煙以外に原因はあるのでしょうか?
丹生先生
飲酒や喫煙、遺伝など明確な原因は不明な場合が多いですね。遺伝子あるいは染色体変異により生じることが多く、10代で発症することもあります。
中川さん
耳下腺腫瘍の一般的な症状は何ですか?
丹生先生
耳下腺腫瘍の主な症状はしこりです。良性の場合はそれだけで済むことが多いですが、耳下腺腫瘍の約2割を占める悪性腫瘍では、耳下腺内を通る顔面神経に影響を及ぼすことがあります。
中川さん
顔面神経に影響を及ぼすと、どうなるのでしょうか?
丹生先生
いわゆる顔面神経麻痺になり、症状が出現する可能性もあります。例えば目を閉じられない、歯磨きやうがいの際に水が口から漏れてしまうなどの症状です。
中川さん
顔面神経麻痺が生じた場合は、進行しているケースが多いのでしょうか?
丹生先生
そうですね。顔面神経よりも深い位置にできた腫瘍の場合、しこりとして気がつくことは少なく、発覚時には進行しているケースも少なくありません。
中川さん
何か違和感があった場合はできるだけ早く受診することが大切ですね。
丹生先生
そうですね。中川さんは治療についてどのような説明を受けましたか?
中川さん
顔面神経麻痺や悪性化の恐れがあるため、早めに手術する必要があると説明を受けました。
丹生先生
その時の心境はいかがでしたか?
中川さん
驚きはありましたが、先生に手術を勧められていなければ、そのまま放置していたと思います。
丹生先生
すぐに手術は決断できましたか?
中川さん
仕事が忙しく、顔に近い部分の手術ということもあってすぐには決断できませんでしたが、セカンドオピニオンでも手術を提案されたことで覚悟を決められました。
丹生先生
手術と聞いて、どう感じましたか?
中川さん
正直とても不安でした。耳下腺腫瘍という言葉も聞き慣れず、調べるうちに手術による顔面神経麻痺の可能性があると知り、怖さが増しました。まさか自分がそんな珍しい病気になるとは思わず、芸能活動や結婚への影響も心配で、当時は精神的にかなりつらい状態でした。

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