長谷川先生
大島さんが実際に行った治療を教えていただけますか?
大島さん
人工授精前に子宮筋腫の手術と甲状腺を治療して、2度目の人工授精で妊娠できました。通院頻度が多かったので、妊活休業していて助かりましたね。
長谷川先生
それはよかったですね。
大島さん
妊活にも集中でき、仕事と妊活の両立で不安やストレスを抱えていたことにも気付けました。不妊治療の選択肢にはどのようなものがあるのでしょうか?
長谷川先生
一般的にはタイミング療法、人工授精、体外受精と3段階の治療選択肢があります。
大島さん
タイミング療法について詳しく教えてください。
長谷川先生
卵胞が最も大きくなったところで排卵を促す注射を打ち、日程を指定して性行為をしてもらうのがタイミング療法です。
大島さん
人工授精はいかがですか?
長谷川先生
人工授精ではタイミング療法と同様、排卵を促す注射を打ちます。そのあと選抜された精子を集めて子宮内に注入する方法です。タイミング療法と人工授精は、精子と卵子の出会いを助ける治療方法だと言えます。
大島さん
出会いの先は自分の力が求められるということですね。
長谷川先生
その通りです。その先を治療する方法が体外受精です。
大島さん
体外受精についても詳しく教えてください。
長谷川先生
体外受精は、まず生理中から連日、卵を育てる注射を打ち、その卵を排卵前に採卵します。その卵子に持ってきていただいた精子を体外で受精させる方法です。
大島さん
受精卵はそのあとどうなるのでしょうか?
長谷川先生
培養室の良い環境下で育てた後、凍結するかそのまま移植します。
大島さん
顕微授精とはまた別の治療法なのでしょうか?
長谷川先生
体外受精で精子が自分の力で卵子に入れないことが分かった場合は、針で精子を卵子に注入します。その操作が顕微授精です。タイミング療法、人工授精、体外受精という不妊治療があり、体外受精の中に顕微授精という手段があります。
大島さん
体外受精の値段にはびっくりしたのですが、治療ごとの費用についても教えていただけますか?
長谷川先生
1周期あたりタイミング療法はだいたい1万円で、人工授精は2万円前後です。体外受精であれば15万円前後ですが、顕微授精や先進医療などを組み合わせると25万円前後かかる場合もあります。
大島さん
私はもう少し高かった気がします。保険適用となる年齢や回数は決まっていますか?
長谷川先生
はい。体外受精が保険適用となるのは43歳までです。受精卵を子宮へ戻す胚移植が保険適用となる回数も、40歳未満であれば最大6回までと決まっていて、40〜43歳の場合、保険適用となるのは最大3回です。
大島さん
私は44歳なので、保険適用ではないということですか?
長谷川先生
はい。大島さんは保険適用にならないので自費診療となります。
大島さん
妊娠確率についてはいかがですか?
長谷川先生
クリニックを受診された夫婦の約3%はタイミング療法、5~10%が人工授精、35~40%が体外受精で妊娠できることが分かっています。
大島さん
体外受精で急に確率が上がるのですね。
長谷川先生
はい。ただし、年齢によって確率は変わるので、不妊治療するのであれば卵子や精子の質が落ちないよう早めに治療へ進んでいただけると良いと思います。
大島さん
早めの治療が大切ですね。
長谷川先生
過去の流産で不安を抱える中、第1子の妊娠が判明した時はどういった心境でしたか?
大島さん
2度の流産を経験したので、第1子でも8〜9週目の健診はドキドキしながら病院に行ったことを覚えています。
長谷川先生
健診までの1週間が本当に不安で、成長が確認できた際に涙を流す患者さんも多いですね。
大島さん
本当にそう思います。出産まで不安な1週間を乗り越えることの繰り返しで「やったー!」と心から喜べることはありませんでした。子どもの顔を見るまでずっとドキドキしていたことを覚えています。
長谷川先生
不妊治療と出産を経験した大島さんが考えるパートナーとの関係性で大切なことは何だと思いますか?
大島さん
妊活は夫婦と足並みをそろえることが大切だと実感しました。今では旦那も理解してくれていますが、妊活を機に生活を変えようとしたら「俺は変えないよ」と言われて、すごくショックでした。
長谷川先生
他人事のような感じだったのでしょうか?
大島さん
はい。私が勧めてもなかなか検査に行ってくれませんでした。男性は非協力的な方が多いのでしょうか?
長谷川先生
クリニックに通うのも女性が中心で、男性はどこか他人事になってしまうことが多いと思います。
大島さん
そのあと検査で、精子の運動率が低下し奇形率も高く濃度は薄いことが分かり、旦那もさすがにテンションが下がっていました。ですが、その検査をきっかけに妊活へ目覚めて足並みがそろいました。
長谷川先生
仕事の忙しさやプライドでクリニックに来られない男性も多いですが、夫婦間だけで検査を促すのは難しいと思います。だからこそ妊活を始めるときは男性も一緒に来ていただきたいですね。
大島さん
先生の話はしっかり聞いてくれる男性も多いと思うので、パートナー同士でクリニックに行くことが大切ですね。
長谷川先生
最後に、大島さんは大変な治療を乗り越え出産されたと思うのですが、お子さんに対する思いや現在の心境について教えてください。
大島さん
妊娠や出産が当たり前ではなくて、本当に奇跡だと感じました。子どもと一緒に寝る前に今でも「来てくれてありがとう」と何度も伝えています。
長谷川先生
すばらしいことですね。卵が育つか、排卵できるか、精子と出会えるか、しっかりと受精卵が育つか妊娠と出産は本当に奇跡の連続だと思います。
大島さん
乗り越えなければいけない壁がたくさんありますね。その壁を乗り越えるために、パートナーと一緒に検査して足並みをそろえることが大切ですね。ありがとうございました。