

佐藤先生
三上さんはHPVワクチンを知っていますか?
三上さん
存在は知っていますが接種したことはありません。調べてみても難しく、しっかりと理解はできていないと思います。
佐藤先生
HPVはヒトパピローマウイルスのことです。性交渉歴のある女性の8割は一生に一度感染していると考えられているくらい、身近なウイルスです。
三上さん
ほとんどですね。
佐藤先生
HPVの種類は200以上あり、その中の13種類は子宮頸がんの原因としてハイリスクとされるウイルスです。風邪と同様に9割は自分の免疫でウイルスを排除できますが、残りの1割は持続的に感染し子宮頸がんになる可能性があります。
三上さん
子宮頸がんの発症数はどれくらいですか?
佐藤先生
日本における子宮頸がんの発症数は年間約1万人、子宮頸がんが原因で亡くなるのは約3000人です。
三上さん
私の周りにも去年くらいから検査に引っかかる方がいました。予防のためにできることは何があるのでしょうか?
佐藤先生
定期的な検診とワクチン接種が大切です。しかし、日本における子宮頸がんの検診率は諸外国と比べて低く35%くらいと言われています。
三上さん
低いですね。
佐藤先生
検診は子宮頸がんの早期発見を目標にしているので、20歳以降であれば2年に1回の頻度で検診を受けていただきたいと思います。
三上さん
ワクチンについても教えてください。
佐藤先生
現在、HPVワクチンの定期接種は小学校6年生から高校1年生を対象として進められています。
三上さん
そのタイミングで接種する理由は何なのでしょうか?
佐藤先生
HPVは性交渉で感染するので、初めての性交渉より前に接種することで確実に免疫をつけるためです。
三上さん
ワクチンでは副反応を気にする方も多いと思うのですが、いかがでしょうか?
佐藤先生
日本は2013年にHPVワクチンの定期接種を開始しましたが、全身の痛みなど副反応の問題で2ヵ月後には積極的な接種を差し控える方針となりました。
三上さん
そんなことがあったのですね。その後はどうなったのでしょうか?
佐藤先生
その後ワクチンと副反応の因果関係は証明されず、長い間ワクチン接種の積極的勧奨は止まっていましたが、2022年に再開されました。
三上さん
そうなのですね。
佐藤先生
ワクチン接種が止まっていた時期の接種対象者(1997年の4月2日生まれ以降の人)に対するキャッチアップ接種が2022年の4月から開始され、2025年3月まで実施されています。
三上さん
ワクチン接種も再び進んでいるのですね。ワクチンによって防げるのはどういったウイルスですか?
佐藤先生
9価ワクチンでは子宮頸がんの原因となるウイルスの9割を予防できると言われています。
三上さん
「価」とは何なのでしょうか?
佐藤先生
HPVにはインフルエンザのA型、B型のように種類分けがあるのですが、そのうち何種類のウイルスを予防するワクチンかという意味合いがあります。例えば4価ワクチンは6型、11型、16型、18型の4つのウイルスに対する予防効果があるワクチンだということです。
三上さん
インフルエンザで例えると分かりやすいですね。
佐藤先生
アダルト業界でのHPVワクチン接種率はどれくらいですか?
三上さん
性病の予防については徹底していますが、HPVに関しては浸透していません。アダルト業界では男性のほうが気をつけている印象はあります。
佐藤先生
すばらしいですね。男性は自費接種になるので、ワクチン1回あたり1万5000円〜2万円程度かかっていると思います。
三上さん
結構かかりますね。男性にもワクチンの効果があるということですか?
佐藤先生
はい。男性の中咽頭がんや陰茎がん、肛門がんなどはHPVの感染が原因だと言われているので、その予防に効果的です。また、男性もワクチン接種することで、集団としての免疫が上がり、女性の子宮頸がん発症率低下が期待されます。
三上さん
男性は自分だけでなく、パートナーのためにもワクチンを接種してほしいですね。
佐藤先生
そうですね。日本では女性が接種するワクチンというイメージがありますが、アメリカやオーストラリアでは男性の定期接種も開始されています。
三上さん
すばらしいですね。
佐藤先生
東京の多くの区では世界の動きを受けて、小学校6年生から高校1年生の男性に対して助成金が出るようになってきています。
三上さん
日本でも徐々にワクチン接種に対する助成が進んでいるのですね。
佐藤先生
はい。さらに広がっていくことを願います。
三上さん
男性もワクチンの効果を知ることが重要ですね。ありがとうございました。