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槙野智章 と 歯 槙野智章 と 歯

成果を上げ続けるオトコ・槙野智章からマナブ歯への高い意識

成果を上げ続けるオトコ槙野智章からマナブ歯への高い意識

常に成果を求められる現代人。最近では、様々なコンディショニング法に注目が集まっていますが、今回、編集部では「歯」に注目してみました。常に最大限のパフォーマンスを求められる人は、どのように歯と向き合っているのか。それを探るため、プロサッカー選手の槙野智章選手と歯科医の増岡健司先生に対談を行なっていただき、歯とパフォーマンスの関係に迫ります。

歯科医師 増岡 健司先生

KENJI 
MASUOKA

北海道出身。日本大学歯学部卒業、現在かみ合わせと予防歯科に特化し都内8カ所に歯科医院を展開。予防歯科をベースに心身ともに健康な子供の育成をサポートするため都内3カ所にメディコール認可保育園開設。北海道医療大学歯科医師臨床研修科臨床教授。スポーツマウスガードNeutral株式会社取締役。

プロサッカー選手 槙野 智章さん

TOMOAKI
 MAKINO

1987年5月11日生まれ。広島県広島市出身。サンフレッチェ広島のトップチームで5年間プレー、2011年ドイツの1.FCケルンへ移籍、 2012年に浦和レッドダイヤモンズに移籍、9シーズン目を戦っている。

chapter01 歯がパフォーマンスに与える影響について chapter01 歯がパフォーマンスに与える影響について

歯に潜む様々な問題

プロサッカー選手 槙野智章さん と 歯科医師 増岡健司先生

槙野 智章選手槙野選手

僕は試合の時に最大の力を発揮したいと考えているのですが、歯はパフォーマンスにどの程度影響を与えているのでしょうか?

増岡先生増岡 健司先生

一言で「歯」と言っても、歯並びや噛み合わせ、虫歯や歯周病などさまざまな問題があります。それらがパフォーマンスに大きな影響を与えていることは間違いありません。

槙野 智章選手槙野選手

具体的にはどのような影響があるんでしょうか?

増岡先生増岡 健司先生

わかりやすい例を挙げると、噛み合わせが良くなると、四十肩等で肩が上がらない人が上がるようになるアスリートの方がパフォーマンスを発揮しやすくなるといった影響が生まれます。

槙野 智章選手槙野選手

全身に影響するんですね。噛み合わせが悪い場合は、やっぱり全身に悪い影響が……。

増岡先生増岡 健司先生

はい。歯の噛み合わせが悪いと、食いしばった時に、部分的に力が入ってしまい、虫歯や歯周病を引き起こす原因になることもあります。また、怪我をしやすくなるとも言われていますね。噛み合わせは、顎の関節への影響も大きいとも言われています。噛み合わせが左右のどちらかにずれていると、片方の関節が圧迫されて、血行が悪くなり、機能が果たせなくなるということが起こります。具体的には、片頭痛や肩こりを引き起こしたり、膝や腰に影響を及ぼすこともあります。

槙野 智章選手槙野選手

確かに、歯に高い意識を持っている選手は、怪我が少ない気がします。でも、歯のポジションは人それぞれ違うと思いますが、良い噛み合わせかどうかを調べる方法はあるのでしょうか?

増岡先生増岡 健司先生

その人にとってベストな噛み合わせの位置を調べるには、個々にふさわしい顎のポジションを探ることが重要になります。例えば、割り箸のようなものを使って、通常の状態や、顎をずらした状態で噛んでもらいながら、どの位置が最も力が発揮しやすいかを診断することが必要です。

まだまだ低い日本人の意識

槙野 智章選手槙野選手

なるほど。僕は以前、ドイツでプレーしていたことがあるのですが、ドイツの選手たちは3ヶ月に1回、必ず歯医者に行くことを義務付けられていました。それほどヨーロッパでは、歯はパフォーマンスに大きな影響を与えられると考えられているんですね。でも、Jリーグでは、歯医者に行くことは義務付けられていません。もちろん、歯を大切にしている選手は一定数いますが、海外に比べれば、まだまだ歯に高い意識を持っている選手は少ないと感じます。

増岡先生増岡 健司先生

欧米に比べると、日本はまだまだ歯の大切さに気づいていない人が多いのが現状ですね。ちなみに、アスリートがパフォーマンスを上げるために、マウスピースを使うケースがあります。ゴルフでは、マウスピースを使うと飛距離が伸びるため、着用が禁止されているほど、歯とパフォーマンスは密接な関係にあります。

槙野 智章選手槙野選手

僕は以前、何度かマウスピースを使おうとしたことがあったんですが、その時は、練習中に外してしまいました。サッカーの場合、呼吸のしやすさや、喋りやすさが必要になるんですよ。

増岡先生増岡 健司先生

サッカー選手の場合は、ボクシングのようなスポーツと違いますので、奥歯だけに着用するセパレートタイプのマウスピースも良いのではないでしょうか。

槙野 智章選手槙野選手

確かに、それは気になりますね。

chapter02 最新機器で歯をチェックしてみた chapter02 最新機器で歯をチェックしてみた

自分の歯のことを知ろう!

プロサッカー選手 槙野智章さん と 歯科医師 増岡健司先生

増岡先生増岡 健司先生

では、槙野選手の歯をみてみましょう。これは槙野選手の歯を3Dスキャンしたものです。この画像を見ると、1カ所だけ右上の前から5番目の歯が内側に入っていることがわかります。ここだけを見ると、歯が干渉をしている可能性があると予測できるのですが、槙野選手の場合、下の歯も同じように内側に入っていることがわかります。上の歯のズレに合わせて、下の歯もズレていて、結果的に噛み合っていることがわかります。このような部分には特に注意が必要です。

槙野 智章選手槙野選手

僕の口内環境は全体的にいかがでしょうか?

増岡先生増岡 健司先生

かなり整っている方だと思います。ホームケアも丁寧に行われているようなので、非常に綺麗です。前歯は、残念ながら、4本とも神経がない歯になってしまっていますが。

槙野 智章選手槙野選手

はい、試合中に顔面を蹴られて、前歯が4本飛んでしまったんです。

増岡先生増岡 健司先生

アスリートですから、仕方ないですよね。それ以外では、虫歯もないし、穴もなく、全体的に歯も整っており、非常に良い状態だと思います。ただ、親知らずが3本ありますね。特に右下の親知らずが少し深い位置にあるのが若干気になります。左下は過去に抜いたのですか?

槙野 智章選手槙野選手

いや、抜いていません。

増岡先生増岡 健司先生

じゃあ、左下はもともと生えていないんですね。右下の親知らずは、脳からくる神経とわずかに接している可能性がありますが、タイミングをみて抜いた方が良い状況かもしれません。骨の中に埋まっていますので、抜歯は結構大変ですね。もし抜歯したら、1週間ほどは腫れたり、激しい運動をするとズキンズキンと痛んだりするかもしれません。シーズン中は避けたほうが良いでしょう。

槙野 智章選手槙野選手

上の親知らずはちゃんと生えているんですが、抜いたほうが良いでしょうか?

増岡先生増岡 健司先生

左上の親知らずは、完全に顔を出していて、なおかつ、下には歯がないので、どんどん伸びてきています。すでに右上の親知らずに比べて少し伸びているのがわかりますね。これは「百害あって一利なし」です。上の2本の親知らずは早めに抜歯した方が良いでしょう。両方同時に抜歯すると食事が摂れなくなってしまうので、1本ずつ日を開けて抜歯していくのが良いでしょう。

槙野 智章選手槙野選手

アスリートの場合、食いしばって歯が磨耗したり、欠けたりすることがあると伺いましたが、そういったことはありませんか?

増岡先生増岡 健司先生

槙野選手の場合は、歯が極端に削れてしまっていることはなさそうです。常識の範囲の磨耗はあるかもしれませんが、異常なところはないと思います。

※この取材がきっかけで、このあと槙野選手は上の親知らずを抜歯しました。

chapter03 歯でパフォーマンスを上げるために出来る3つのこと chapter03 歯でパフォーマンスを上げるために出来る3つのこと

口内環境を整えることがカギ

プロサッカー選手 槙野智章さん と 歯科医師 増岡健司先生

増岡先生増岡 健司先生

槙野選手は、普段、歯をどのようにケアしていますか?

槙野 智章選手槙野選手

人と接する機会が多いので、口臭は気になります。また見た目が大事なので、歯磨きをして綺麗にするように心がけています。僕は食後に歯を磨くタイプなので、1日3回、食後に行なっています。朝はお風呂に入りながら磨くので、10分程度かけていますが、昼や夜は2〜3分の時もあります。理想的な口内環境を作るためには、どうしたら良いのでしょうか?

増岡先生増岡 健司先生

口内環境というのは、日常の食生活が大きく影響しています。人間の口のなかには虫歯菌や歯周病菌というものが常在していて、それらの菌はゼロにはできないんですね。200℃近くの熱で滅菌ができれば菌をなくすことができますが、お口の中はさすがに出来ませんよね(笑)。セルフケアしても必ず菌は残ってしまうんです。だから、菌が活性化して繁殖しないような口内環境を作ることが重要になります。お口の中に虫歯菌や歯周病菌がいても、それが活動できなければ、虫歯や歯周病が進行しないということです。

槙野 智章選手槙野選手

具体的にはどんな対策があるのでしょうか?

増岡先生増岡 健司先生

対策は3つあります。1つ目は「甘いものをだらだらと摂取しない」ということです。例えば、清涼飲料水には、クエン酸やリン酸などの酸、そして、砂糖や人工甘味料が含まれています。これを摂り続けると、お口の中の酸性度が強くなります。しかも、砂糖は虫歯菌の大好物ですから、菌にやりたい放題にやられてしまいます。清涼飲料水は、練習や試合の合間など、限られたタイミングで摂るのは問題ありませんが、頻繁に摂らないことと、特に寝る前には飲まないようにすることをお勧めします。できることなら、水や麦茶などを飲むほうがいいですね。

2つ目は、やはり「歯磨き」ですね。お口のなかの環境を綺麗に保つためにも、1日3回の食後のタイミングで歯を磨くのが良いでしょう。おやつの時は仕方ないと思いますが、出来るだけ間食時の糖分を控えるようにすることを意識していただきたいですね。

そして3つ目は、「定期的に専門家のデンタルチェックを受ける」ということです。お口の中の変化は、なかなか自分では気がつきにくいものです。たとえ毎日歯磨きをしていたとしても、やはり、磨き残しもありますし、放っておくと厄介なことになるので、プロのケアを受けることはとても重要なことだと思います。槙野選手は、どれくらいの頻度で歯医者に通っていますか?

槙野 智章選手槙野選手

半年に1回は行っていると思います。

増岡先生増岡 健司先生

定期的に行っているというのは素晴らしいと思います。虫歯は間食の影響を受けやすいのですが、どちらかというと虫歯よりも歯周病の方のケアが大切です。現代人は虫歯よりも歯周病で歯を失うほうが圧倒的に多いんですね。特に成人の85%が何らかの歯周病を持っていると言われているので、その影響をなくすためにも、プロのメンテナンス、ケアをきちんと受けると良いと思います。

槙野 智章選手槙野選手

はい、そのようにしたいと思います。僕らアスリートだけに限らず、歯がパフォーマンスに大きく影響するということを再認識しました。自分が成長する上で、技術や体力を磨くのはもちろん大事ですが、これを機に、歯にも興味・関心を持つことが、パフォーマンスに通ずるということを世の中に訴えかけていかないといけませんね。

増岡先生増岡 健司先生

歯の大切さについて、スポーツ選手から発信することによって、一般の方の意識も高まると思います。欧米に負けないよう、日本でも歯に対する意識を高めていければと思います。

編集部より

今回の取材で最も驚かされたのは、槙野智章選手の歯のキレイさ。厳しいプロサッカーの世界で、常に結果を出してきたその背景には、歯に対する高い意識があったんですね。パフォーマンスを求められ、ストレスに苦しむ人が多い今の時代だからこそ、私たちは、もっと意識的に歯のケアを行う必要があるのかもしれません。読者の皆さんも、これをきっかけに、たった3つの出来ることを、意識的に生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか?

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