福田さん
柔道は特に心・技・体の精神が重要だと考えられています。その点についてはどのように感じていますか?
井上さん
柔道を含めた武道と心・技・体の精神との結びつきは強いと思います。しかし、柔道以外の競技から心を学ぶことも多いはずです。そのため心・技・体の精神は、柔道や武道に限らず全てのスポーツに共通する要素だと感じています。
福田さん
なるほど。シドニーオリンピックで金メダルを獲得した当時の心・技・体は、どのような状態でしたか?
井上さん
現役時代を振り返ってみても、心・技・体が整っている状態とはどういう状態なのか、いまだに分かっていません。シドニーオリンピックの一回戦では、もともと相性の悪いキューバ選手に勝てたことで勢いはあったと思います。
福田さん
当時の勢いはすごかったですよね。
井上さん
はい。ただ、当時を振り返ってみて心・技・体の状態が万全だったとは思いません。人生も同じだと思います。心・技・体が万全な状態を維持することは難しいので、その時に出せる最大限の能力を発揮していくことが重要です。
福田さん
今日の話を聞いて、心・技・体の精神で大切なのは、考え方や生き方を鍛えることだと感じました。
井上さん
そうですね。柔道家として持つべき理念や精神は、1882年に柔道を作った嘉納治五郎先生の「精力善用」「自他共栄」という言葉に集約されていると思います。
福田さん
「精力善用」とは、どういった言葉なのでしょうか?
井上さん
善を目的として精力を最大限に働かせることです。しかし、何が良い悪いかではなく、各それぞれの立場や役割のもとで、世の中のために能力を発揮しようとする姿勢が何より大切だと思います。
福田さん
「自他共栄」についても教えてください。
井上さん
自他共栄の意味は、互いに信頼し助け合うことで他者とともに栄えていけるということです。また、切磋琢磨しお互いが成長することも含まれると思います。私もこれらの言葉を大切にしながら、柔道をはじめ様々なスポーツに携わっていきたいと考えています。
福田さん
パリオリンピックでは副団長として全ての競技に関わっていくと思うのですが、パリオリンピックに向けた意気込みを聞かせてください。
井上さん
私は副団長として、参加する全ての選手が最高の能力を発揮できるよう、日本選手団や関係者とともに戦ってきます。是非とも応援をよろしくお願いします。
福田さん
副団長としての活躍を期待するとともに、日本のアスリートがケガせず、たくさんのメダルを獲得し世界中を笑顔にしていただけることを願っております。期待しています。
井上さん
あんまりプレッシャーはかけないでください。オリンピックを通じて、スポーツが持つ価値や魅力を発信できるよう頑張ります。今日はありがとうございました。