石岡先生
大腸がんのステージ3と宣告され、治療方針について説明はありましたか?
橋爪さん
手術に向けた検査の結果、直腸に腫瘍があることでリンパ節への転移や人工肛門になる可能性について説明を受け、術後のことを考えてロボット手術のダヴィンチを提案されました。
石岡先生
ロボット手術について知っていましたか?
橋爪さん
知りませんでした。手術に7時間かかると言われて驚いたのですが、体に対するダメージを抑えられると説明も受けたので、それは一つの安心材料になりましたね。ロボット手術について教えていただけますか?
石岡先生
直腸は骨盤の中にあるので視野が狭く手も動かしにくいのですが、ダヴィンチなどのロボット手術は、手ブレも少なく人間の関節の可動域を超えて動かせるため直腸がんに有効な手段だと考えられています。
橋爪さん
人工肛門が不要になったことやリンパ節の腫瘍が取れたことは、先生やダヴィンチのおかげなのですね。
石岡先生
技術がどんなに優れていても、肛門から近い場所に腫瘍があると人工肛門になる可能性が高くなるため、橋爪さんの運もあると思います。
橋爪さん
そうなのですね。
石岡先生
腫瘍のある場所だけを切り取ると再発する可能性があるため、直腸の場合は腫瘍のある箇所から2〜3cmの安全域をとって切る必要があります。そのため、肛門付近に腫瘍があると人工肛門となる可能性も高くなるのです。
橋爪さん
なかなか受け入れられませんよね。
石岡先生
手術そのものよりも人工肛門になることを嫌がる人が圧倒的に多いですね。今はどのぐらいの頻度で受診されていますか?
橋爪さん
2週間に一度受診し、血液検査やCTの検査などをしていただいています。手術から半年間は抗がん剤を続けるようです。一般的に抗がん剤の治療後はどうなりますか?
石岡先生
抗がん剤治療が終われば、その後は再発していないか定期的に検査することになると思います。
橋爪さん
治療を終えた後でも定期的に検査することが大切ですね。
石岡先生
そうですね。一般企業では定期的な健診があると思うのですが、芸能界ではそういった健診を受ける機会はあるのでしょうか?
橋爪さん
定期的な健診はありません。体に気を配っている人でない限り、自分で検査もしないと思います。一般企業では皆さん毎年健診を受けるのですか?
石岡先生
そうですね。企業ごとに健診の内容や予定は異なりますが、人間ドックを会社負担で受けられるような企業もあります。
橋爪さん
胃カメラや大腸カメラの検査もしますか?
石岡先生
胃カメラ検査が含まれる企業は多くあると思います。ただし大腸がん検診は、大腸カメラの代わりに便潜血で検査するところが多く、便潜血の検査で陽性になった場合、大腸カメラを個人で受診することがほとんどです。
橋爪さん
大腸カメラの検査は準備が大変ですよね。
石岡先生
そうですね。特に2時間くらいかけて下剤で腸の中を洗い流していく準備が大変と感じる方が多いようです。便潜血の検査は便を提出するだけなのですが、大腸カメラはそういった苦労があるのも企業健診に含まれない一因になっていると思います。
橋爪さん
私も区の無料健診で便の検査をした際に大腸カメラを勧められたこともあったのですが、その時は検査しませんでした。
石岡先生
何年ぐらい前ですか?
橋爪さん
50歳の頃なので13年前ですね。当時は痔もあったので、そのせいだと思っていました。
石岡先生
便潜血が陽性となった場合、症状が出てから検査を受けた人の死亡リスクは、症状がなくてもすぐに検査を受けた人の5倍になると言われています。
橋爪さん
5倍も違うのですか?
石岡先生
はい。そのため便潜血が陽性となった場合は、しっかりと大腸カメラで検査していただきたいですね。
橋爪さん
実際に内視鏡をした時は嘘のように楽でした。絶対やったほうが良いですね。
石岡先生
怖いイメージがありますが、実際にやってみると楽だと感じる人も多いようです。
橋爪さん
私のように便潜血が陽性でも検査に行かない人もいますか?
石岡先生
はい。便潜血が陽性になっても約40%の人は検査に行かないと言われています。企業で健診していても再検査に来ていただかないと意味がないので、正しく理解することが大切です。
橋爪さん
重要ですね。
石岡先生
便潜血の検査についても、検査だけ受けていれば大丈夫だと誤解している人も多いと思います。
橋爪さん
便潜血が陽性にならなかったとしても病変が隠れている可能性もあるということですか?
石岡先生
そのとおりです。便潜血で引っかかる確率は進行がんで約85%、早期のがんで40〜50%。がんになる前の小さなポリープだと約10%しか引っかからないと考えられています。繰り返しの検査で精度は高まりますが、この事実は知っておいていただきたいですね。
橋爪さん
症状がなくても、なるべく早く検査したほうがいいと思います。本当にそれは心から伝えたいですね。
石岡先生
最後に何か伝えたいことはありますか?
橋爪さん
人生の中で大変なこともいっぱいありましたが、ベスト3に入るくらい本当にしんどい思いをしました。術後の5日間は本当に死ぬんじゃないかと思うほど辛い日々でした。そうなる前に皆さんは検査に行ってください。私のように少し発見が遅れても、医療は日々進歩しており、こんなに元気になって戻ってくることもできます。早期発見・早期治療が最も大切だということを伝えたいですね。