古屋先生
肺がんを告知された際にステージについて説明は受けましたか?
青木さん
がんのステージについては、手術してみないと正確なことは分からないと説明されました。
古屋先生
手術した際に摘出した肺やリンパ節を手術後に顕微鏡で最終確認して、最終的なステージが決定するからだと思います。治療についてはどのような説明がありましたか?
青木さん
早期がんだったので経過観察の提案もありましたが、私は手術を選択しました。
古屋先生
手術を選択した理由はありますか?
青木さん
がんの可能性が高いものを体の中に残しておくのが性格的に合わなかったのが理由の一つです。計画的に手術することで仕事への影響を避ける目的もありました。何より私の母親も悪性リンパ腫で入院していたので、公表することで母には知られたくないという気持ちが一番強かったですね。
古屋先生
実際に受けられた手術について教えていただけますか?
青木さん
全身麻酔で5時間ぐらいの手術を受けました。
古屋先生
傷跡は残っていますか?
青木さん
はい。脇のところに傷跡が3つ残っています。
古屋先生
青木さんがおこなったのは胸腔鏡という内視鏡の手術だと思います。脇のところに開けた3箇所の穴からカメラや手術器具を挿入し切除する方法です。
青木さん
ほかにも治療方法はありますか?
古屋先生
長時間の手術に耐えられそうにない高齢者であれば、放射線を照射する治療方法もあります。放射線治療は日々進歩しており治療効果も手術に匹敵するほどです。治療による負担も少ないため、高齢であっても問題なく受けられると思います。
青木さん
なるほど。
古屋先生
手術後の生活や仕事について教えてください。
青木さん
退院した後はすごく疲れやすくなったのですが、退院した2週間後には仕事に復帰しました。
古屋先生
仕事復帰されたときの体調や心境はいかがでしたか?
青木さん
体力面や傷の状態など心配事も多かったのですが、医師から動いて体力を戻したほうが良いと説明もあったので、ふだんと変わらない生活を心がけていました。
古屋先生
その後の経過はいかがでしたか?
青木さん
最初の手術から1年がたち、左の肺にも影があるため手術を提案されました。がんの可能性もあるので再び手術を決意しました。
古屋先生
そのときの心境を教えてください。
青木さん
既に手術を経験し、大変さを想像できたので未経験だからこその不安はありませんでしたが、また手術しなければいけないのかと気持ちは重くなりました。
古屋先生
左肺を切除した結果はいかがでしたか?
青木さん
2回目の手術で切除した肺は良性でした。肺腺がんの再発率はどれくらいあるのでしょうか?
古屋先生
早期の肺がんが5年の間に再発する確率は2割くらいだと言われています。
青木さん
肺がんが転移しやすい場所はありますか?
古屋先生
肺がんの転移しやすい場所は脳や骨、肝臓だと言われています。肺がんは進行すると転移しやすいため、背中の痛みや手が動かないことで受診した結果、背骨や脳に転移していたというケースも多いですね。
青木さん
転移による症状で肺がんが発覚することも多いということですね。最初の手術の際に主治医から「肺がんで手術ができるのはラッキーなことです」と言われました。そういうものですか?
古屋先生
はい。日本では肺がんの診断を受けた時点で約半数はステージ3あるいはステージ4の場合が多く、手術の適応にならないケースが多いと言われています。
青木さん
進行していると手術ができないということですか?
古屋先生
そうですね。進行してしまうと手術で根本的に治療することが難しいと考えられています。
青木さん
私は、おかげさまで初期の段階で肺がんが見つかったので、手術できたということですね。
古屋先生
はい。そのため、肺がんの根治治療を目指すためにはCT検査を適切なタイミングで受けて、がんを早期に発見し、根治手術を受けることが重要だと考えられています。ただし、抗がん剤治療も日々進歩しており、ステージ3や4の状態でも長期に生存できる人が増えていることは知っていただきたいですね。
青木さん
人間ドックやCT検査を推奨される人はどのような人ですか?
古屋先生
早期の肺がんはレントゲンでは見つけることが難しいので、賛否両論はありますが、私の個人的な意見としては、50歳以上の重喫煙者に対しては数年ごとにCT検査を受けるよう提案しています。ただし、CT検査を積極的に受けることで良性の腫瘍が見つかり、過剰診断につながることには注意が必要です。青木さんは肺がんの手術を経験して、健康のために心がけていることはありますか?
青木さん
2014年の人間ドックで再検査になってから食べ物には気をつけています。あとは太陽を浴びたり、できるだけ歩いたりするようになりました。がんに対する不安を持たないように生き方自体も変わったと思います。
古屋先生
がんを経験されて人生に対する考え方や価値観も変わったのですね。
青木さん
はい。肺がんと診断された後よりも肺がんになる前のほうが恐怖心は大きかったと思います。それは肺がんに対する知識がなかったからだと感じました。
古屋先生
まずは正しい知識を得るということが大切なのかもしれませんね。
青木さん
そうですね。やみくもに怖がらず正しい知識を身に付けて早期に発見・治療していくことが大切だと思います。