猛暑が続く昨今、やはり気になるのは「熱中症」です。「症状・対策は知っているつもり」と思っていても、実は重要ポイントを見落としているかもしれません。メディカルドックが実施したアンケートでは、「よく知っている」と答えた人はわずか2割ほど。重症症状や持病などのリスク要因の認知は低く、大坂貴史先生は「知らなければ予防や対策ができない」と警鐘を鳴らします。いったいどのようなリスク要因があるのか、詳しくお話を伺いました。
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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
Q1.熱中症の原因や症状について、どの程度理解していますか?
編集部
熱中症について『よく知っている』と回答した人が21.5%にとどまっています。この結果について、医師としてどのように感じますか?
大坂先生
「よく知っている」人は多いとは言えないですが、「ある程度知っている」という人と合わせると83.9 %と比較的多いです。とはいえ、逆に15%以上の方が「あまり知らない」もしくは「全く知らない」というのが不安ですね。熱中症は知らないと予防や対策ができません。これを機会に是非色々な事を知って頂ければと思います。
Q2.熱中症の症状として、あなたが知っているものをすべてお選びください。
編集部
比較的軽度の症状(めまい・気分が悪いなど)の認知率は高い一方で、けいれん・意識障害といった重篤な症状の認知が限定的です。医師としてこの傾向をどう見ますか?
大坂先生
熱中症ガイドラインでは熱中症Ⅰ度の症状として「めまい」「立ちくらみ」「筋肉痛」、Ⅱ度の症状として「頭痛」「嘔吐」「気分が悪い」、Ⅲ度の症状として「けいれん」、Ⅳ度の症状として「意識がない」があります。「体温が高い」は必須項目で、Ⅱ度以上は医療機関の受診が必要となる項目です。
重症項目についても認知が低いですが、筋肉痛についても特に知られていないのも気になります。また、先程80%以上の人が「知っている」と答えた割には知られていない項目も多く、「知っているつもり」と思っている人もいるのではないかと思っています。
Q3.熱中症になりやすい状況として、あなたが知っているものをすべてお選びください。
編集部
『高温多湿な気候』や『直射日光』などの環境要因は多くの人に知られている一方、『持病のある人』や『肥満』などの個人要因の認知度は低めです。医師としてこの傾向をどう捉えますか?
大坂先生
熱中症をおこしやすいリスクには環境要因と患者要因があります。環境としては暑さ指標(WBGT)が用いられ、「熱中症予防情報サイト」で公開されています。この暑さ指標には①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温にて定められています。
患者要因には、肥満、運動不足、脱水、屋外労働、過度なスポーツ活動、高齢者、小児、心疾患、がん、精神疾患、糖尿病などがあるとされています。
この環境要因と患者要因は掛け算ですので、複数あればそれだけリスクが高くなりますので注意が必要です。持病がある人は特に熱中症をおこしやすい環境を避ける事が重要です。また、当日の体調も重要ですが、「体調が悪い・寝不足・二日酔い」も50%弱の人がリスクであると認識していませんのでご注意ください。
編集部まとめ
今回の調査では、熱中症の軽い症状は多くの人が認識している一方、けいれんや意識障害などの重症症状、持病や体調不良などのリスク要因は十分に知られていませんでした。大坂先生が指摘するように、熱中症は正しい知識が予防の第一歩。こまめな水分・塩分補給に加え、暑さや体調に応じた行動調整が命を守ります。「知っているつもり」から一歩進んだ対策を心がけましょう。