歯周病のメカニズムを教えてください

こんにちは。埼玉県草加市谷塚にある歯周病学会認定専門医が在籍する歯科医院“谷塚藤波歯科医院”の院長、藤波弘州です。
診療を行うに辺り、必ず皆さんのお口の中の診査を行います。診査を行い、お口の中の病状の診断を行い、そして治療へと進んでいきます。歯周病と診断された方は歯周病治療を行います。しかし患者さん皆さんは歯周病に何故なってしまうのでしょうか?歯周病はどのような経緯で成り立ってしまい、またどのような症状を引き起こしていくのでしょうか?
今回は歯周病のメカニズム、そして歯周病と他の疾患との関連をお話していきたいと思います。

執筆歯科医師
藤波 弘州(日本歯周病学会専門医)
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《保有資格》
日本歯周病学会専門医、臨床歯周病学会認定医、研修指導歯科医等。

《自己紹介》
谷塚藤波歯科医院、院長の藤波です。患者さんに喜んでもらえる歯科医療をご提供することで、今までの感謝を還元し、貢献していきたいと考えています。

 歯周病とは

一口に歯周病と表現をしましても、実際には「歯肉炎」「歯周炎」の二つに大きく分けられます。歯周病の大部分は細菌の塊(プラーク)によって引き起こされるものです。厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」によると、30歳以上で歯肉に腫れを認める人の割合が増え始め、35歳以上になると40%を超えていきます。従いまして年齢が上がっていくほど、歯周疾患に罹患している人が増えていく傾向にあります。

 プラークの成立

普段診療を行っている中で見られる歯周病の大部分は、プラークと呼ばれる細菌の塊が歯肉に炎症を引き起こすことにより発症する「プラーク性歯肉炎」「プラーク性歯周炎」になります。
プラークとは、お口の中にいる細菌が歯の表面にくっつき、その細菌が増殖し形成された細菌の塊のことを指します。このプラーク1mg中に10億個の細菌が住み着いていると言われています。この細菌性プラークが成熟してしまうと、多様な種類の細菌が集まってきてしまう状態となり(共凝集)、細菌が産生する菌体外多糖によってバリヤーが作られ、バイオフィルムという構造になってしまいます。この状態になってしまうと、口をゆすぐ程度では歯の表面から細菌は除去できません。

 歯肉炎へ

プラーク性歯肉炎の状態は、バイオフィルムを形成した細菌が宿主(人体)に対し抗原となり、その反応として歯肉に炎症を起こします。歯肉炎は歯肉だけに炎症が起こっている状態で、歯の周りにあるセメント質、歯根膜、歯槽骨には炎症は見られません。歯肉が腫れることによって、歯肉ポケット(仮性ポケット)が出来上がります。歯肉炎では、患者さんご自身のブラッシングを含めた口腔衛生管理の徹底を行い、プラークを減少させることで、歯肉の腫れは治っていきます。

 歯肉炎から歯周炎へ

歯肉炎が続いてしまうと、細菌が産生する酵素や代謝産物に対して宿主が反応します。具体的には細胞外基質分解酵素(MMP)と呼ばれるタンパク質分解酵素が体で作られます。これが歯と歯肉を繋げている結合組織を破壊します。また、歯槽骨の破壊は、炎症が起こっている状態の際に体で作られるプロスタグランジンやインターロイキンⅠという炎症性サイトカインが、歯を支える歯槽骨の破壊を引き起こします。
プラークの細菌の構成も徐々に変化します。最初にプラークを形成していた細菌からオレンジコンプレックス(Fusobacrerium nucleatum、Campylobacter rectusなど)という細菌群が多くなっていきます。その後、歯周病原性細菌の中で最も毒性が高いレッドコンプレックスという細菌群(Tannerella forsythia、Porphyromonas gingivalis、Treponemadenticola)のプラーク中の存在比率が高くなっていきます。特にPorphyromonas gingivalis(P.g.)という細菌は歯肉の上皮の中に入り込むことが認められています。

 歯周病と関連があると考えられている疾患

 1 歯周病と糖尿病

糖尿病とは、膵臓から出るホルモンであるインスリンが十分に働かなくなってしまい、血液中のブドウ糖が増えてしまう病気です。1型とⅡ型があり、生活習慣によって罹患してしまうのはⅡ型糖尿病になります。歯周炎によって体が作る炎症性サイトカインのTNF-αがインスリンの抵抗性を増してしまうことが示唆されています。

 2 早産・低体重児出産

歯周病原細菌や歯周病の病原因子そして産生された炎症性物質が血行に移行することによって、胎盤などに関与、また子宮内組織に感染、そして胎児にも感染してしまうことが示唆されており、結果として早産・低体重児出産となることが考えられています。

 3 誤嚥性肺炎

歯周病原性細菌などの口腔細菌が肺の中から検出されており、口の中の清掃が困難になってしまっている高齢者の方の肺炎に関与していることが考えられています。

 4 動脈硬化症

歯周炎が認められる動脈硬化症患者では、血管病変部位から歯周病細菌DNAが検出されること、動脈硬化症のリスクとしてあげられるCRPやIL-6といった炎症マーカーの上昇が、歯周炎患者の血中で高くなる、といったことから、血栓の形成に関わっている可能性が考えられています。

 5 関節リウマチ

関節リウマチと歯周病には骨に近接する慢性疾患であること、そして病因に共通点が多いため、関係性が示唆されています。

 6 その他

慢性腎臓病、非アルコール性脂肪性肝炎、そしてアルツハイマー病にも関連があることが示唆されています。

 まとめ

歯周病は体に起こっている慢性炎症、という病態です。炎症、というものは体の防御反応で起こっているものであり、歯周病に特化した体の反応ではありません。今回の内容で口の中で起こっていることは、決して口の中だけに留まるものではなく、体全体に起こっている病気とも関係があるかも知れない、という事を理解して頂ければ幸いです。我々歯周病専門医・認定医が出来る事はお口の中の環境を整える事ですが、口の中の環境を整える事で体全体の健康を少しでも改善、もしくは良好な状態を維持出来ることに繋がります。歯肉の状態が気になる、歯周病の治療をご希望の方は歯周病専門医・認定医が在籍する歯科医院を受診され、治療を行うことをお勧めいたします。