【歯周病認定医の断言】歯周炎の原因はなにか?

こんにちは。日本歯周病学会認定医で、有楽町デンタルオフィスに勤務しております武内崇博と申します。
みなさんは歯を失う原因の第一位は虫歯ではなく歯周病であることをご存知でしょうか。歯周病とは歯肉炎歯周炎の総称ですが、それぞれどのような病態で、なぜ起こるかなどよくわからない点が多いと思います。今回は歯周病の中の特に歯周炎の起こる原因についてお話させていただきたいと思います。

そもそも歯周病とは?

歯周病は歯周疾患ともよばれ、歯肉炎と歯周炎に分類されています。歯周病は歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患であり、歯周組織とよばれる歯を支える4つの組織(歯肉・歯を支える歯槽骨・歯と歯槽骨を繋げる歯根膜とよばれる靭帯・歯の根を覆うセメント質)に起こる疾患のことをいいます。驚くべきことにギネスブックにも人類最大の感染性疾患として認定されています。
 
我が国における平成23年の歯科疾患実態調査によると、歯肉に何らかの症状がみられる患者数を推定すると約9,400万人ですが、実際に治療を受けている患者数は,約260万人であるといわれています。
 
また最近、歯周病は生活習慣病として位置づけられ、食習慣、歯磨き習慣、喫煙、さらに糖尿病などの全身性疾患との関連性(歯周病が全身の健康にも影響を与える:ペリオドンタルメディシン)が示唆されています。
 
つまり歯周病は歯を支える組織に起こる炎症で、口の中でだけでなく全身とも関わりがある疾患であるこということです。

おもな原因

歯肉炎・歯周炎の原因因子は歯と歯茎の間にある歯肉溝・歯周ポケットとよばれる溝に存在するプラーク(歯垢)であり,プラーク中の細菌と生体防御機能とのバランスが崩れることにより発症・進行します。
 
通常、お口の中には500種類以上の細菌が存在します。そのなかで歯周組織の破壊を引き起こす細菌は特定されており、これらを歯周病原細菌とよびます。これらの病原因子が、歯肉組織に浸潤している自身の免疫細胞や、歯周組織を構成する細胞に作用し、生体細胞が産生する各種の酵素,サイトカインが歯周組織の破壊を引き起こすと考えられています。
 
さらに生体の免疫機構をつかさどる好中球,マクロファージ(単球)、リンパ球の機能が低下することにより歯周組織の破壊が生じます。とくに細菌感染に対する抵抗性を低下させる全身疾患 (糖尿病、血液疾患、特殊な遺伝性疾患) は、歯周炎の進行を促進させます。また酵素やサイトカインの過剰産生によっても歯周炎は進行します。近年では歯周病に関連した遺伝子型が解明されつつあります。
 

その他の原因

歯周病は生活習慣病としての側面を有しています。生活習慣のなかでも、喫煙、ストレス、不規則な生活、アンバランスな食事などは歯周炎の進行に影響します。とりわけ喫煙は歯周炎の進行を促進するだけでなく、歯周治療の効果を減少させ、また歯周炎の再発を誘発します。
 
また口の中の様々な要素も歯周病の進行に深く関わります。歯垢(プラーク)は取り除かなければ硬くなり、歯石と言われる物質に変化し歯の表面に強固に付着します。 これはブラッシングだけでは取り除くことができません。この歯石の中や周りに更に細菌が入り込み、歯周病を進行させる毒素を出し続けます。
 
歯ぎしりや食いしばり、不正な歯並びによりかみ合わせのバランスが崩れていたりすると歯に強い力がかかり、歯周組織の炎症は増悪するといわれています。
 
歯と歯の隙間があいていたり、重なっている悪い歯並びや、適合の悪い詰め物や被せ物なども歯磨きが難しくなり、プラークの停滞を招いて悪影響を与えます。
 
このように様々な要素がありますが一番大切なことは、歯肉炎・歯周炎の原因は口のなかの細菌であるということです。その細菌と自身の細胞や細胞の産生する酵素などが炎症反応を起こし、自ら歯を支える組織を壊してしまいます。さらに、破壊を増悪させる因子として、生活習慣や歯並び、合わない詰め物なども深く関わっていることも重要なポイントです。
 

歯肉炎と歯周炎の違い

では歯肉炎と歯周炎の線引きはどこで行うのでしょうか。歯肉炎は文字通り、歯肉にのみ起こる炎症で歯周病の初期の段階のことをいいます。炎症が進み、さきほど述べた4つの組織のうち深くにある3つの組織まで炎症が進むと歯周炎とよばれます。いずれも歯周ポケットが深くなり、汚れがたまりやすい環境になることに変わりはありませんが、歯周炎は歯槽骨の破壊(骨の吸収)を伴います。炎症の程度としては軽度な歯肉炎が重症化すると歯周炎になる、と考えるとわかりやすいかもしれません。
 
歯肉炎は歯肉だけにとどまっている炎症なので、炎症の原因となっているプラーク(細菌のかたまり)を適切に取り除いていけば元の状態に戻りますが、歯周炎になると炎症は歯周組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質)まで波及しており歯周組織の破壊が起こっているため炎症がなくなっても元の状態に戻ることはありません。
 

まとめ

ご自身で歯周組織の状態が健康なのか、歯肉炎なのか、歯周炎まで進んでしまっているのかの判断するのは不可能です。痛みや歯の揺れなど、何か違和感を感じてクリニックに行かれるのではなく、定期的に歯周病治療を専門で行っているクリニックに足を運んでいただき受診されることをお勧めします。
また歯周病治療を受けたことがある方も定期的にクリーニングを行い、再発の防止に努めることも非常に大切です。そして最も重要なことは日々のブラッシングであり、歯周病の主原因であるプラークの徹底的な除去を心がけていただければ安心かと思われます。