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鍼の施術はどこで受けても同じ? 答えがイエスでありノーな理由

 更新日:2023/12/15
鍼の施術はどこで受けても同じ? 答えがイエスでありノーな理由

サービスを受けるとき、ある程度の「結果の予測」は欠かせません。何が起きるか分からないことには費用をかけられないからです。はたして鍼に「結果の予測」は成り立つのでしょうか。他方、差別化という意味での違いも知りたいところ。このジレンマを、株式会社トリートの佐治先生に投げかけてみました。

佐治 良一

監修鍼灸師
佐治 良一(橋本みなみ鍼灸整骨院)

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鍼灸整骨院勤務後独立し、相模原市緑区に「橋本みなみ鍼灸整骨院」開院。現在では首都圏の郊外を中心に計4院の整骨院、鍼灸整体サロンを展開する。法人化は2011年。鍼灸師。ジャパン柔道整復師会、KTPトリガーポイント研究会、健美会の各会員。IMCI統合医療カンファレンス協会所属。

細かな問診や患部の動作確認による違い

細かな問診や患部の動作確認による違い

編集部編集部

鍼は、1つの学問体系にのっとった施術なのですよね?

佐治良一先生佐治先生

はい。国家資格である「はり師」を取得していないと、原則として鍼は施術できません。統一した学問体系をクリアしている以上、「鍼治療の施術はどこで受けても同じ」です。ただし、目の前の症状に対し、鍼を優先するのか灸なのかマッサージなのかという考え方の差はあるでしょう。なお、灸は「台座灸」という市販品によるセルフケアが可能です。

編集部編集部

灸も国家資格なのでしょうか?

佐治良一先生佐治先生

そうです。鍼灸学校で取得できる国家資格は、「はり師」「きゅう師」「あん摩・マッサージ指圧師」の3つです。これとは別に、整骨などで必要な国家資格「柔道整復師」もあります。そのうえで、施術者の得意分野を優先する傾向はあるでしょうね。保険か自費かも含めた費用も関わってきます。

編集部編集部

結果として、施術の中身が違うこともあると?

佐治良一先生佐治先生

受ける施術が同じなら、効果はほぼ、同等です。しかし、施術そのものが違うかもしれないということですよね。しかし「いずれにしても、最良と思われる施術を吟味した結果なのだ」と考えてみてはいかがでしょう。当院の場合は、とくに「トリガーポイント」に着目しています。

編集部編集部

「トリガーポイント」とはなんでしょう?

佐治良一先生佐治先生

西洋医学でも取り入れられている、解剖学に基づいた「痛みの大本と思われる箇所」のことです。痛いと感じている箇所が痛みの原因箇所とは限りません。例えば腕がしびれていたとしても、トリガーポイントは首や肩かもしれないのです。

編集部編集部

だとすると、「鍼治療は施設によって異なる」という見方もできそうです。

佐治良一先生佐治先生

学問体系は一緒なのですが、細かな違いが出るかもしれません。例えば当院では「整形外科的テスト法」を用いて、患部の可動域の確認などをしています。どのような不具合が実際に起きているのかを絞りこんでいるわけです。他方で粗雑な問診からすぐに施術に入る施設もあるでしょう。この点は、医療機関でも同じことが言えるかもしれません。

ヒト、ハコ、経営方針による違い

ヒト、ハコ、経営方針による違い

編集部編集部

続けて、施術者との相性についても伺いたいのですが?

佐治良一先生佐治先生

相性は人によるのでなんともいえません。たしかに「他院より通いやすい施設」は存在するでしょうね。施術者に限らず、スタッフへの話しやすさだったり、施設の清潔さだったり、立地の通いやすさだったりもします。ただ、努力次第で質の向上は可能ですよね。技術的なことを言えば、スタッフの勉強会などで「施術者による違い、アタリハズレ」がなるべく出ないようにしているところです。

編集部編集部

“ハコ”としての施設についてはどうでしょう。

佐治良一先生佐治先生

ホコリや汚れは論外として、書類が乱雑に散らかっているような「見た目」にも配慮しています。「汚い」という感覚は、必ずしも清潔さの反意ではありません。粗雑さも含むでしょう。加えて、目だけではなく鼻、つまり「空間の香り」にも気を配っています。良い香りは自律神経の乱れを整えるからです。

編集部編集部

ほか、先生から見た「施設選び」の観点はありますか?

佐治良一先生佐治先生

患者さんの主観でいいので「営利目的」が垣間見えたら他院と比較してみましょう。通院回数・通院頻度と関わってくる部分ですが、「本当に必要で促している場合」もあります。この点は、比較してみないと見えてこないですよね。

編集部編集部

全体の施術計画にすら触れない施術者もいそうですが。

佐治良一先生佐治先生

それは論外ですね。直近でなにをしようとしているのか、今の施術はいつまで、どれくらいの頻度でおこなうのか、その次はどうなるのか、いつ主訴が落ち着くのか。最低でもこれくらいのご説明は不可欠でしょう。いわゆる「未来予想図」です。患者さんからも積極的に聞いていってください。急性の症状が落ち着いてからでもいいので、じっくり他院と比較してみましょう。

その他の違いがありそうな観点

その他の違いがありそうな観点

編集部編集部

鍼に限りませんが「交通事故の処理」を掲げているところもあります。

佐治良一先生佐治先生

そうですね。なにも掲げていない施設より、「交通事故の処理」をうたっている施設のほうが、専門性は高いでしょう。中には、法律事務所とタッグを組んでいる施設も散見されます。整形外科と連携している整骨院もありますよね。

編集部編集部

鍼灸は東洋医学の領域ですよね、漢方薬との組み合わせはどうなのでしょう。

佐治良一先生佐治先生

使われ方次第だと思います。漢方薬の使われ方として、「痛みなどの対症療法」と、「再発しないような未病対策」があると思います。これは、お灸の使われ方にも通じるポイントです。当院ではお灸にしていますが、もし漢方薬を処方されたら、その使われ方について聞いてみるといいでしょう。

編集部編集部

保険が使える施設と使えない施設の差は?

佐治良一先生佐治先生

鍼灸で保険を適用するには、医師の同意が必要です。また、保険の枠内では、時間的にも中身にしても、じっくりと患者さんと向き合うことができません。なにより、患者さんの「改善してきたな」という実感が、通院のモチベーションにつながると思っています。自費の1施術である程度の効果を感じていただくか、保険で回数を重ねてから効果を感じていただくかでいうと、自費に分がある印象です。「この施術に費用をかけるだけの価値がない」と思われたら終わりですからね。

編集部編集部

最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあれば。

佐治良一先生佐治先生

鍼灸院選びの入り口としてホームページを参考にすることが多いと思いますが、「行ってみないとわからない」側面はあります。とくに、施術と施術前の流れが重要です。この説明ができているかできていないかで、鍼灸院選びをしてみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

鍼の学問体系は一緒ですが、やはり現実の運用に違いがありそうですね。佐治先生は、問診、触診に加え、「整形外科的テスト法」などを用いた動きの確認を大切にしているということでした。そして、「未来予想図」を元に治療計画を説明しています。「なぜ、その必要性があるのか」と「その結果、どうなるのか」という点は、鍼に限らず、全てのサービスを通じて説明が求められます。

医院情報

橋本みなみ鍼灸整骨院

橋本みなみ鍼灸整骨院
所在地 〒252-0143 神奈川県相模原市緑区橋本2-10-23 カルチェ橋本1F
アクセス JR横浜線「橋本駅」より徒歩5分
診療科目 鍼灸整骨院

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