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「インフルエンザ流行による学級閉鎖」が増加中 基準や予防のポイントを医師に聞く

 公開日:2025/12/12
インフルエンザによる学級閉鎖が増加 基準や予防のポイントとは

今季のインフルエンザ流行は立ち上がりが早く規模も大きいと指摘されており、全国の学校で学級閉鎖が相次いでいます。東京都では、インフルエンザ様疾患による学級閉鎖が前年の約11倍に増加するなど、教育現場への影響が鮮明になっています。では、そもそも、学級閉鎖はなぜ必要なのか。また、自治体や学校はどのような基準で閉鎖を決めているのか。さらに、家庭ではどのように流行へ備えるべきなのか。今回は、学級閉鎖の基準や効果、そして日頃の予防のポイントについて、吉野医師に伺いました。

吉野 友祐

監修医師
吉野 友祐(医師)

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広島大学医学部卒業。現在は帝京大学医学部附属病院感染症内科所属。専門は内科・感染症。日本感染症学会感染症専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医。帝京大学医学部微生物学講座教授。

インフルエンザで学級閉鎖する意味とは?

インフルエンザで学級閉鎖する意味とは?

編集部

インフルエンザによる学級閉鎖の現状と、学級閉鎖をおこなう意味について教えてください。

吉野 友祐先生吉野先生

全国の学校でインフルエンザによる学級閉鎖が相次ぎ、教育現場への影響が広がっています。東京都が公表したインフルエンザ様疾患による学級閉鎖等の報告状況によると、2025年9月1日〜11月9日までの累計は1125件となり、前年同期の99件から大幅に増加しています。内訳を見ると、小学校で718件、中学校で293件と、小中学校での発生が特に多い状況です。
インフルエンザで学級閉鎖をおこなう最大の目的は、感染拡大を食い止めることです。インフルエンザは潜伏期間が短く、症状が出始める前から周囲にうつす可能性があるため、ひとたびクラス内で流行すると一気に広がりやすい特徴があります。学級閉鎖により、児童同士の密な接触を一時的に断つことで、新たな感染者を減らし、学校全体や家庭への拡大を防ぐねらいがあります。

学級閉鎖の基準とは?

学級閉鎖の基準とは?

編集部

インフルエンザなどでの、学級閉鎖の基準について教えてください。

吉野 友祐先生吉野先生

インフルエンザなどの感染症における学級閉鎖は、学級内で感染が広がっている可能性が高いと判断された場合に実施される措置です。法律上、全国一律の数値基準はなく、学校保健安全法に基づき、学校や設置者(自治体など)が臨時休業を判断します。文部科学省によると、同じ学級で複数の感染者が確認されるなど、クラス内での感染拡大が疑われる状況が基準となります。
自治体の基準ではより具体的に示されており、神戸市では「インフルエンザやかぜによる欠席率が15〜20%程度に達した場合」が目安とされています。札幌市でも、「インフルエンザ様症状による欠席者が在籍数の20%以上に達した際に学級・学年閉鎖を検討する」とされています。閉鎖期間は自治体により異なりますが、一般的に数日間を基本とし、学校や教育委員会が状況に応じて判断します。

インフルエンザ流行への受け止め・予防法は?

インフルエンザ流行への受け止め・予防法は?

編集部

最後に、インフルエンザ流行への受け止め、予防法について教えてください。

吉野 友祐先生吉野先生

今季のインフルエンザは流行の立ち上がりが早く規模も大きく、学級閉鎖などの影響が目立ちますが、現時点で重症化のリスク自体が特別に高まっているわけではありません。過度に不安になりすぎず、ワクチン接種や手洗い・マスク・休養といった基本的な対策を続けつつ、症状が強いときには早めに医療機関を受診するなど、落ち着いて適切に対応していくことが大切です。
インフルエンザから身を守るためには、日頃の基本的な予防行動がとても重要です。まず、帰宅時や食事前などには、こまめな手洗いを心がけましょう。石けんと流水を使い、手のひら・甲・指先・指の間・手首まで丁寧に洗うことで、手についたウイルスの多くを落とすことができ、体内への侵入を防ぎやすくなります。特にインフルエンザウイルスはエンベロープを持つウイルスのため、石けんの界面活性作用で壊れやすいという特徴があり、手洗いは有効な対策と考えられています。
また、流行前にワクチン接種を受けておくことは、発症や重症化のリスクを下げる手段として重要です。最近では、従来の不活化ワクチンに加えて、経鼻生ワクチンも小児では使用が可能となり、ワクチンの選択肢が増えてきています。さらに、十分な休養と栄養バランスの良い食事によって体の抵抗力を高めておくことも大切です。
室内環境の整え方もポイントです。空気が乾燥しすぎると、ウイルスが空気中に長く漂いやすくなるうえ、のどの粘膜の防御機能も低下してしまいます。そのため、50〜60%程度の湿度を目安に、適度な湿度を保つと良いでしょう。ウイルスは、生体の中で増殖することで症状を引き起こします。その意味でも、日常生活の中で他者との距離を保つこと、特に流行期には人混みをできるだけ避けることは有効な対策です。 加えて、医療現場や人が密集する場面などでは、不織布マスクの着用が感染予防に有効であるという報告もあります。さらに、家庭ではこまめに換気を行い、室内の空気を入れ替えることで、ウイルスがたまりにくい環境を保つことができます。これらの対策を組み合わせて続けることが、インフルエンザから身を守るうえで大切です。

編集部まとめ

インフルエンザの流行により、学校では学級閉鎖が行われるケースが増えています。学級閉鎖は、クラス内での感染を広げないための大切な対応で、欠席状況や感染者数などをもとに学校や自治体が判断します。流行期には、日頃の予防を続けることが感染を防ぐために役立ちます。学校と家庭が協力しながら、できる対策を少しずつ続けていくことが安心につながるでしょう。

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