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“塩のかけすぎ”が「胃がん」発症リスク増加と関連 47万人の大規模研究で判明

 公開日:2025/09/02

ウィーン大学の研究員らは、日常的に食卓で塩を加える習慣と胃がん発症リスクの関連について調査しました。約47万人を対象とした大規模研究の結果、「常に塩をかける」と回答した人は、「まったく/まれに加える」と回答した人と比べて、胃がんリスクが約1.4倍高いことが明らかになりました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

ウィーン大学の研究員らが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

ウィーン大学の研究員らによる大規模前向き研究により、食卓での塩の添加頻度が胃がんリスクと関係していることが明らかになりました。これまでアジアの研究では、塩分摂取と胃がんリスクとの関連が指摘されてきましたが、西洋諸国における知見は限られており、主に症例対照研究にとどまっていました。 今回の研究では、UKバイオバンクに登録された約47万人を対象に、食卓での塩の使用頻度と胃がん発症リスクの関係が検討されました。平均約11年の追跡調査の結果、「常に食事に塩を加える」と答えた人は、「まったく/まれに加える」と答えた人と比べて、胃がんのリスクが約1.4倍高いことがわかりました。また、塩の使用頻度と推定される尿中ナトリウム量には明確な相関が見られた一方、尿中ナトリウム量そのものと胃がんの発症リスクには有意な関連が認められませんでした。 研究員らは「食卓での塩の添加頻度が、食塩摂取量の指標として有効であり、今後の公衆衛生メッセージに活用できる可能性がある」と結論づけています。

胃がんの発症リスクを高める食べ物・飲み物とは?

胃がんの発症リスクを高める食べ物・飲み物について教えてください。また、胃がんを予防する生活習慣とは?

中路 幸之助 医師中路先生

胃がんの発症リスクを高める食べ物や飲み物として、塩分の高い食品や燻製食品、加工肉、過度の飲酒、そして非常に熱い飲み物が挙げられます。これらは胃の粘膜にダメージを与え、ピロリ菌感染と相まってリスクを高めるとされています。また、野菜や果物の摂取が不足する食生活も、胃がんのリスクを高める可能性があります。 一方、予防のためには、ピロリ菌の検査と除菌治療、塩分を控えたバランスの良い食生活、新鮮な野菜や果物の摂取、発酵食品の活用が有効です。加えて、禁煙や節酒、ストレスの管理、定期的な健康診断と胃内視鏡検査も大切です。自分の生活を振り返り、できることから見直して、胃がんを遠ざける生活を心がけましょう。

研究内容への受け止めは?

ウィーン大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

塩分を日常的に多く摂取すると胃がんのリスクが高まる主な理由として、塩分が胃の粘膜に損傷を与え、炎症を引き起こすことが挙げられます。慢性的な炎症は遺伝子変異の増加につながり、これが発がんの原因となる可能性があります。また、塩分摂取量が多いほど、胃がんの主な原因であるヘリコバクター・ピロリ菌の感染を助長する可能性も報告されています。ただし、これらの研究結果はあくまで「関連性(相関関係)がある」ことを示しており、「直接的な因果関係」を証明したものではありません。 胃がんのリスクには、ピロリ菌感染、肥満、喫煙、飲酒など多くの要因が複合的に関与しているため、塩分摂取のみが胃がんのリスクを決定するわけではない点にも注意が必要です。塩分摂取量の増加と胃がんリスク上昇の間に明確な因果関係を示すには、さらなる継続的な研究が求められています。大切なのは、塩分のみならず、ほかのリスク因子や栄養バランスを考慮し、総合的に判断することです。

編集部まとめ

塩を日常的にかけすぎる食習慣が、胃がんリスクを高めるかもしれないことが大規模調査で示されました。予防には、塩分控えめの食事やピロリ菌の検査・除菌、野菜や果物の摂取、ストレス管理、定期的な検診が大切です。今日からできる小さな意識で健康を守っていきましょう。

この記事の監修医師