インフルエンザの感染が異例の速度で拡大中。去年の約150倍の患者数との報告
毎年気をつけたい感染症の1つがインフルエンザ。今年も全国でインフルエンザ感染が異例のスピードで拡大しています。このニュースについて中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
インフルエンザの感染状況とは?
現在懸念されている、今シーズンのインフルエンザの流行について教えてください。
中路先生
厚生労働省の統計によるインフルエンザの感染状況については、2023年9月4日から9月10日までの1週間で1定点あたりの患者数が4.48人となり、前の週に比べて1.75倍に増加しています。また、去年の同時期では1定点あたりの患者数は0.03でしたので、今年の患者数は去年の149.3倍という異例の流行になっています。都道府県別で最も多いのは沖縄県で、1箇所あたりの患者数が13.43人となりました。沖縄県は基準値とされる10人を超えたことから、9月14日に注意報を発令しています。続いて多くなったのは長崎県で、1箇所あたりの患者数は8.80人でした。また、千葉県も一箇所あたりの患者数が8.58人と多くなりました。全国の入院患者数は197人で、60歳以上の割合が49.2%でした。さらに東京都による調査では、9月17日までの感染者数は1医療機関あたり11.37人で、前の週のおよそ2倍となったほか、流行注意報を出す基準の10.0人を超えました。このため、東京都は今後、さらに流行が拡大する可能性もあるとして9月21日にインフルエンザの「流行注意報」を出しました。
9月に注意報が出されるのは統計を取り始めた1999年以降2回目で、これまでで最も早い発令となります。また東京都によると、9月17日までの2週間で、幼稚園3校、小学校138校、中学校45校、高校21校のあわせて207校にて学級閉鎖などの臨時休校になったということです。
今シーズンの流行についての懸念は?
今シーズンの流行について懸念されていることを教えてください。
中路先生
すでにインフルエンザの注意報が出されている自治体はありますが、今シーズンのインフルエンザ流行についての懸念は夏ごろから浮上していました。この懸念の根拠となるのが、南半球のオーストラリアでのインフルエンザ感染者数の急増です。南半球のオーストラリアは日本と季節が逆であり、日本で夏季の時期にオーストラリアでは本格的な冬季を迎えます。新型コロナの世界的なパンデミック最中である2020~2021年はオーストラリアでのインフルエンザの流行が見られませんでしたが、2022年6月に大規模なピークを迎えました。そのため、日本感染症学会は「同様の流行が日本でも起きる可能性がある」と警鐘を鳴らしていました。また、オーストラリアの保健省は「2023年はインフルエンザ患者が5月から急増し始める」と報告していました。さらに、WHO(世界保健機関)によると南米のチリやパラグアイなどでもインフルエンザ感染者数が増加しています。日本も、9月の感染状況から見るとしっかり注視・対策をしていかないといけない状況であると思います。
インフルエンザの感染を防ぐために重要なことは?
インフルエンザの感染を防ぐために重要なことを教えてください。
中路先生
今年はすでにインフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの同時流行が始まっている状態と考えられます。この状態が続くと、これら2つのウイルスに同時感染することも考えられます。同時感染となると、症状が長引く、特定の症状が重くなる可能性があります。そのため、早めのインフルエンザワクチン接種(新型コロナウイルスワクチンとの同時接種も可能です)やこれまでの手洗いなどの基本的な感染予防策を行い、インフルエンザの感染を予防することが重要です。
まとめ
全国でインフルエンザ感染が異例のスピードで拡大していることが今回のニュースでわかりました。しっかりと手洗い・うがいや咳エチケットに気をつけて感染防止対策を行うことが重要です。