新型コロナウイルス患者 3割が後遺症発症と報告
アメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の研究グループは、新型コロナウイルス感染症患者の3割が後遺症を発症しているという報告を医学雑誌に報告しました。このニュースについて中路先生にお話を伺います。
監修医師:
中路 幸之助(医師)
UCLAの研究グループが報告した内容とは?
UCLAの研究チームが報告した内容について教えてください。
中路先生
この研究は、UCLAの研究グループが新型コロナウイルス感染症後急性後遺症に関連する因子について検討したものです。対象になったのは、新型コロナウイルスへの感染が確認され、2020年4月~2021年2月にUCLAの新型コロナウイルス外来プログラムに登録されて治療を受け、退院や外来受診から30、60、90日後に急性後遺症に関連する因子について調査を受けた1038例です。検討の結果、全体の29.8%にあたる309例が急性後遺症と認められました。退院や外来受診から30日後の調査で報告されたうち、73.2%を占めたのが倦怠感で最も頻度が高くなりました。息切れは63.6%、発熱・悪寒が51.5%、筋肉痛が50.6%に認められたそうです。退院や外来受診から60~90日後で最も多かった症状は倦怠感で31.4%、ついで息切れで13.9%、味覚や嗅覚障害は9.8%でした。研究グループは「この研究では新型コロナウイルス後遺症の軌跡を理解し、既存の併存疾患、社会人口統計学的要因、ワクチン接種状況、ウイルス変異型などの個々の要因が新型コロナウイルス後遺症の症状の種類と持続性にどのように影響するかを評価するため、多様な患者の集団を縦断的に追跡する必要があることが示された」と考察しています。
報告への受け止めは?
UCLAが調査した新型コロナウイルス患者の約3割が後遺症を発症していた今回の報告について受け止めを教えてください。
中路先生
今回の研究で著者らは、新型コロナウイルス感染の後遺症について急性期から少なくとも60日後の調査で症状が持続していた場合、倦怠感が最も多い症状と報告しています。新型コロナウイルス感染症の後遺症を検討した興味深い報告と考えられます。しかし、この研究も含めて同様の研究では対象の人種のちがいや後遺症の期間の定義にはバラつきがあり、この研究結果をそのまま日本の現状には当てはめにくいと考えます。ただし、新型コロナウイルス感染症から大半の人は回復していますが、その一方で後遺症に悩まされる人が一定の割合で存在するというこれら研究から得られるエビデンスは、新型コロナウイルス感染の社会全体に与える影響が経済的損失を含め大変大きいものであることを示していると考えられます。
後遺症の疑いがある場合はどうしたらいい?
新型コロナウイルス感染症の後遺症が疑われる場合、どうしたらいいのでしょうか?
中路先生
新型コロナウイルス感染症の後遺症と思っても、ほかの疾患の発症や基礎疾患(持病)の悪化などの可能性もあるため、自己判断は禁物です。かかりつけの医師や新型コロナウイルス感染症後遺症の専門外来の受診をおすすめします。
まとめ
アメリカのUCLAの研究グループが、新型コロナウイルス感染症患者の3割が後遺症を発症しているという報告を医学雑誌に報告したことが今回のニュースで明らかになりました。こうした後遺症についての情報は今後のコロナウイルス対策にとっても大事なことと言えそうです。