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「イソフラボンの摂取が多いと認知機能障害リスクが高まる」と国立がん研究センターが報告

 更新日:2023/03/27

国立がん研究センターの研究グループが、「イソフラボンの摂取が多いと認知機能障害リスクが高くなった」との研究結果を報告しました。このニュースについて中路医師に伺いました。

中路 幸之助 医師

監修医師
中路 幸之助(医師)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した報告とは?

今回、国立がん研究センターの研究グループが報告した内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回のニュースは、国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクトの研究グループ報告したものです。調査の対象になったのは、1990年に長野県佐久保健所管内に在住していた男女のうち1995年と2000年に実施した食物摂取頻度調査票に回答した、うつの既往がなく2014~2015年におこなった「こころの検診」にも参加した1036人です。対象者はイソフラボン、大豆製品全体、豆腐、味噌、納豆、発酵性大豆食品の摂取量の平均値を算出し、摂取量の多さで4つのグループに分類されました。

今回の研究では、イソフラボンの主な種類であるゲニステインとダイゼンの間で高い相関が認められたことから、ゲニステイン摂取量をイソフラボン摂取量の代替として用いています。研究では、記憶やそのほかの認知機能に関する4つの検査と医師の判定により、軽度認知障害(MCI)が346例、認知症が46例と、併せて392例が認知機能障害と診断されました。解析の結果、イソフラボンの摂取量が多い群ほど認知機能障害のリスクは上昇したということです。一方で、大豆製品の摂取量、豆腐、味噌、納豆、発酵性大豆食品の摂取量については、認知機能障害との関連は認められませんでした。

今回の報告への受け止めは?

国立がん研究センターの研究グループが報告した内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

この臨床研究において研究グループは、長野県の住民を対象とし、イソフラボンの摂取量が多い群ほど認知機能障害のリスクは上昇する一方で、大豆製品の摂取量、豆腐、味噌、納豆、発酵性大豆食品の摂取量については、認知機能障害との関連は認められなかったと報告しています。したがって、認知機能障害と食生活との関連を知るうえで、大変興味深い貴重な研究報告です。

しかし、「イソフラボンの多量摂取例は高齢者に多く、年齢によるバイアスを除外できなかった可能性」「もともと対象は大豆の摂取量が多く、高リスク群の摂取量は、これまでの研究報告と比較して多かった可能性」「イソフラボンは腸内細菌によりエクオールに代謝されるが、代謝されない場合もあるため、イソフラボン摂取量が体内での作用する量を正確に反映していない可能性」など、研究の限界も指摘されています。今後、同様のテーマでのさらなる研究報告の集積が期待されます。

認知症の現状は?

日本における認知症の患者数など現状を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

厚生労働省によると、日本では65歳以上の認知症の人の数は約600万人いると推計されていますが、2025年には高齢者の5人に1人の割合にあたる、約700万人が認知症になると予測されています。また、65歳未満で発症した認知症である若年性認知症の人は3.57万人いると推計されています。さらに、普段の生活に支障はないものの、記憶力などが低下し、正常とも認知症とも言えない状態である軽度認知障害(MCI)の約半数は、5年以内に認知症に移行すると言われています。したがって、軽度認知障害の段階から予防的活動を開始することで、認知症の進行を遅らせることが期待されています。

まとめ

国立がん研究センターの研究グループが、イソフラボンの摂取が多いと認知機能障害リスクが高くなったとの研究結果を報告したことがわかりました。認知症は多くの人が高い関心を持っているだけに今後もこうした研究が注目を集めそうです。

この記事の監修医師