緊急避妊薬 具体的検査方法記述を添付文書から削除
厚生労働省は緊急避妊薬について、薬の添付文書を改訂し、内診など処方の際におこなう具体的な検査方法の記述を削除することを決めました。このニュースについて前田医師に伺いました。
監修医師:
前田 裕斗 医師
今回、厚生労働省が決定した内容とは?
今回、緊急避妊薬をめぐって厚生労働省が決定した内容について教えてください。
前田先生
今回の決定は、1月24日に開かれた厚生労働省の専門家部会でおこなわれたものです。専門部会では「特定の検査が一律に必要だとすることで、服用の機会を逃すおそれがある」として、内診など具体的な検査方法についての記述を添付文書から削除することを決めました。
緊急避妊薬は、性行為から72時間以内に服用すれば高い確率で妊娠を防ぐことができるとされていて、国内では医師の診察を経て処方を受ける必要があります。すでに妊娠している場合は処方の対象にはならないので、薬の取り扱い説明書である添付文書には、医師の指や器具で体の中を診察する内診や尿検査などを行って妊娠の有無を確認するよう定められていました。また、添付文書には、妊娠中に誤って服用してしまった場合、女性胎児の外性器の男性化や男性胎児の女性化が起こることがあると書かれていますが、海外での研究で胎児への異常は認められなかったとして、この記述も削除されるということです。
緊急避妊薬とは?
緊急避妊薬について、教えてください。
前田先生
性行為から72時間以内に服用すれば、80%以上の確率で妊娠を防ぐことができる薬で、アフターピルとも呼ばれています。主に、コンドームが破損するなどして避妊に失敗したかもしれないと思ったときや、性暴力の被害に遭い、望まない妊娠の場合などに使用されることがあります。
また、緊急避妊薬は、24時間以内に飲めば95%以上の確率で妊娠を防ぐことができるというデータもあります。副作用についてはほとんどないとされていますが、稀に吐き気などが出るとされています。産婦人科などの医療機関で手に入れることができ、価格は6000~2万円程度になりますが、保険適用外です。
今回、厚生労働省が決定した内容への受け止めは?
今回、厚生労働省が決定した内容について、どう受け止めればいいでしょうか?
前田先生
今回の添付文書改訂は、日本の「性と生殖に関する健康と権利(Sexual Reproductive Health and Rights)」の向上に向けた大事な一歩です。ただし、添付文書は改定されましたが、当然性暴力被害に遭った場合は性感染症の検査や被害の記録のために内診などの検査が必要となります。
まとめ
厚生労働省は、緊急避妊薬について薬の添付文書を改訂し、内診など処方の際に行う具体的な検査方法の記述の削除をすることを決めました。緊急避妊薬をめぐっては、厚生労働省の有識者会議で薬局での販売についても議論が進められており、今後も注目が集まりそうです。