「オミクロン株は重症化しにくいのではないか」アフリカのデータをもとにWHOが指摘
WHO(世界保健機関)は12月9日、オミクロン株のアフリカでの感染状況に関する報告を発表し、「オミクロン株が最初に報告された南アフリカの初期データにおいて、感染しても重症化しにくい傾向が示された」と指摘しました。このニュースについて上医師に伺いました。
監修医師:
上 昌広(医師)
WHOの発表の内容とは?
まず、今回WHOが発表した内容について教えてください。
上先生
「オミクロン株が重症化しにくいてのではないか」とWHOが言及したのは12月9日のことです。オミクロン株の感染力の強さを警告する一方で、同株が最初に報告された南アフリカの初期データにおいて、感染しても重症化しにくい傾向が示されたと指摘しました。
オミクロン株が広がりはじめた11月中旬から12月初旬の間に、南アフリカの病院の集中治療室ICUの占有率は6.3%となっていました。デルタ株による7月の感染ピーク時と比べると低い数値になっていることから、オミクロン株に感染しても軽症にとどまる可能性が示されたということです。
ただし、この症状の程度については情報が足りておらず、WHOも12日の声明で「毒性がどの程度低いのかは、明らかになっていない」と9日の会見をトーンダウンさせています。
WHOのオミクロン株の感染力についての見解は?
世界60カ国以上で感染が確認されているオミクロン株の感染力について、WHOはどのように指摘しているのでしょうか?
上先生
WHOは12日の声明で、「オミクロン株の市中感染が起きている場所で、今の流行の主流となっているデルタ株の感染をオミクロン株が上回りそうだ」との見解を示しています。また、オミクロン株にはワクチンの有効性を低下させることを示唆する情報があるとも指摘しています。さらに、WHOは「現在限られている証拠に基づく」と前提条件をつけた上で、オミクロン株はデルタ株よりも感染の拡大が速いと分析しています。
オミクロン株の感染力が強い理由は?
オミクロン株がなぜこれほど感染力が強いのか、考えられる理由にはどのようなものがあるのでしょうか?
上先生
オミクロン株では、ウイルスがヒトの細胞に感染する際のとっかかりとなるスパイクタンパク質の遺伝子に、30カ所以上の変異が生じています。このことが感染力を強めていると考えている研究者もいますが、オミクロン株の感染力が強い本当の理由は、現時点ではよくわかっていません。
まとめ
WHOが12月9日、オミクロン株のアフリカでの感染状況に関する報告を発表した際に、オミクロン株が最初に報告された南アフリカの初期データにおいて、感染しても重症化しにくい傾向が示されたと指摘したことが明らかになりました。しかし、いまだ確定的なことは見えておらず、今後も感染状況を注視していく必要があります。