【厚生労働省が発表】「抗体カクテル療法」の予防目的投与を条件付きで承認
厚生労働省は11月5日、「抗体カクテル療法」と呼ばれる新型コロナウイルス治療薬「ロナプリーブ」の発症予防目的での使用について「特例承認」に基づき薬事承認しました。このニュースについて工藤医師に伺います。
監修医師:
工藤 孝文(医師)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
新たに薬事承認された内容とは?
11月5日に厚生労働省が特例承認に基づいて薬事承認した内容について教えてください。
工藤先生
今回厚生労働省が承認した内容は、「抗体カクテル療法」と呼ばれる中外製薬の新型コロナウイルス治療薬「ロナプリーブ」の発症予防目的での使用になります。
通常とは異なり、緊急時に審査を簡略化できる特例承認に基づいて薬事承認されました。発症を抑える初めての予防薬となります。予防目的で投与できるのは、「新型コロナウイルスに感染した人の同居家族など常に一緒に生活する濃厚接触者か無症状の感染者」、「新型コロナウイルスの重症化リスクが高い人」、「ワクチン未接種か免疫抑制剤の投与などで効果が不十分である」という3つの条件をすべて満たした場合に限定されることになります。
抗体カクテル療法とは?
今回承認された抗体カクテル療法とは、どのような治療法なのでしょうか?
工藤先生
新型コロナウイルスが増殖するのを防ぐ2種類の抗体を混ぜ合わせて使用するため、抗体カクテル療法と呼ばれています。
それぞれの抗体は「カシリビマブ」、「イムデビマブ」といいます。抗体がウイルスの表面にあるスパイクタンパク質に結合することで、人の細胞に侵入するのを防ぐことができます。発症から7日以内の軽症から中等症、特に肺炎を起こしていない初期の患者に投与することで、ウイルスの増殖を阻止し、重症化を防ぐ効果がある治療法です。
日本での販売権は中外製薬が持っていますが、海外の治験で患者の家族の濃厚接触者に投与した結果、感染して発症するリスクを81%減らす効果が確認できたなどのデータから、発症を予防する目的での投与も認めるよう追加で申請をしていました。
今回の承認で期待できることは?
抗体カクテル療法の発症予防目的の承認で期待できることを教えてください。
工藤先生
濃厚接触者となっても、これまでは対策ができませんでした。しかし、今回の承認により、濃厚接触者となった際の不安が取り除けるでしょう。また、発症前からの投与で重症化を防ぎ、入院の必要性が下がれば、医療体制のひっ迫度合いが弱まることも期待できます。
まとめ
これまで新型コロナウイルスの発症を抑える方法はワクチン接種のみでしたが、今回新たに抗体カクテル療法が特例承認に基づいて薬事承認されました。投与の対象は限定されますが、その効果に期待が集まります。