【日本産科婦人科学会が発表】不妊治療の着床前検査、条件付きで容認へ
日本産科婦人科学会は、体外受精した受精卵の染色体を調べて子宮に戻す「着床前検査」について、不妊治療としての実施も条件付きで認める方針を明らかにしました。このニュースについて浅野医師に伺いました。
監修医師:
浅野 仁覚 医師
目次 -INDEX-
着床前検査とは?
まず、着床前検査について教えてください。
浅野先生
着床前検査は、体外受精によってできた受精卵から細胞を一部取り出し、染色体などを調べる検査のことです。
この検査には、異常がない受精卵を選んで子宮に入れることで、出産につなげる狙いがあります。日本産科婦人科学会は、成人になる前に日常生活を著しく損なう状態が出たり、生存が危ぶまれる状態になったりする疾患や習慣流産を検査対象として認めてきました。
その一方で、特定の病気や障害のある子どもが生まれないようにすることにつながりかねないとの強い懸念を持たれている検査でもあり、不妊治療として実施するかどうかについては慎重に議論されてきました。
今回新たに示された内容は?
日本産科婦人科学会が新たに示した「着床前検査」についての方針を教えてください。
浅野先生
日本産科婦人科学会は10月23日にオンラインで開催されたシンポジウムで「移植可能な受精卵があれば流産率が低下するため、不妊治療として有用である」との見解を示しました。
また、対象者の条件としては、子宮に受精卵を2回以上移植しても妊娠に成功しない人や、過去に流産を2回以上繰り返している人などを挙げました。
実施施設についても臨床研究と同様、受精卵の取り扱いなどに関して厳しい管理を求められる見込みです。対象年齢については今後議論されるそうです。
今後の課題とは?
条件付きで不妊治療への着床前検査が認められる方針になるとのことですが、今後の課題を教えてください。
浅野先生
今後、問題となる可能性としては、「倫理的な問題(種の選別など)」と「長期的な影響が不明」でしょうか。
前者の病気をもった胚を除外するということは、同じ疾患をもつ人の存在を否定してしまったり、差別を助長したりする心配があります。もう一方、後者は胚の一部を吸い取って調べるため、検査自体がその子の発育や発達、一生涯に及ぼす影響が本当に無いのかという点において、長期的な影響が分かっていない部分があります。今後、そういった事実が明らかにされる可能性もあるということですね。
まとめ
これまでは、命の選別になりかねないという懸念から臨床研究に限って実施されてきた着床前検査が、条件付きとはいえ不妊治療での実施が容認されることは大きな転換点だといえます。今後定められる具体的な条件について引き続き注目が集まりそうです。