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次長課長・河本準一さんが「うつ病」を公表、“顔つきや表情”の特徴・対処法を医師が解説

 公開日:2025/06/02

お笑いコンビ・次長課長の河本準一さん(50)が、自身のSNSでうつ病パニック障害を患っていることを明らかにしました。今年の2月には、体調不良で休養することを報告していました。そこで、うつ病の人に見られる顔の表情、行動の特徴のほか、パニック障害について医師の伊藤有毅先生に解説してもらいました。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

うつ病の方の顔の表情・行動・よく使う言葉の特徴

悩む女性

うつ病の方の顔の表情の特徴を教えてください。

うつ病にかかると気分が落ち込みます。そのため、無表情でぼんやりとした表情など、感情の表出が乏しくなるのが特徴でしょう。うつ病の人の顔の特徴には、以下のようなものがあります。
  • 無表情
  • ぼんやりしている
  • 作り笑いしているように見える
  • 悲しげで泣き出しそうに見える
  • 元気消失
  • 顔色が悪い
よく笑っていた方が笑わなくなったり、口角が下がったりするといった特徴もあります。笑っていたとしてもどこか不自然で、悲しげで泣き出しそうに見えることもあるかもしれません。夜眠れない・何度も起きるなどの症状から、目の下にクマができたり、顔色が悪くなったり、疲れた表情を見せることもあります。

うつ病で表情に変化が表れる理由を教えてください。

うつ病にかかると脳の働き全般が本調子ではなくなるため、顔つきや表情にも以前とは違う変化が現れます。また、うつ病では感情を表に出すことが難しくなるため、顔から表情が消えたようになって無表情になります。何をしても楽しいと思えない無気力感から、ぼんやりした顔つきになることもあるかもしれません。このような脳機能全般の不調が、うつ病で顔つきが変化する主な理由と考えられるでしょう。

うつ病の方の行動の特徴を教えてください。

うつ病は気分障害の一種で、脳の機能低下によって心身や行動にさまざまな症状が現れる精神疾患です。うつ病の方の行動には、以下のような特徴があります。
  • 周りの人とコミュニケーションしなくなる
  • 仕事などでミスが増える・遅刻や欠勤が増える
  • 夜眠れなくなる・朝起きられなくなる
  • アルコール・タバコなどに依存するようになる
  • 自宅に引きこもり外出しなくなる
  • 急に泣き出す・怒り出すなど感情の起伏が激しくなる
うつ病は、適応障害のように「会社に行きたくない」といった何か特定のストレスが原因となって発症するわけではありません。自分でも原因がはっきりとはわからないまま、「何もやる気が起きない」「生きているのが辛い」といった言動も多くなるため、それに続く行動にも注意が必要です。早めに精神科・心療内科での適切な検査・診断が必要となります。

うつ病の方がよく使う言葉の特徴を教えてください。

うつ病の方は何事も悲観的にとらえてしまいがちになり、生きることに意味を見出せずに「自分は不幸だ」「絶望的だ」など否定的な言葉をよく使うようになります。「絶対~だ」「~しなければいけない」「こうしなければだめ」 といった断定的な言葉使いも増えるでしょう。ネガティブで否定的な言葉・決めつけるような断定的な言葉のほかにも、視野が狭くなるため「わたしは」「ぼくは」「自分は」など一人称単数で話すことが多くなります。なかには、死を意識する方もおり、マイナスな言葉や消極的な言葉をよく使うようになるのも特徴でしょう。

身近な方がうつ病かもしれない場合の対処法

男性を慰める女性

身近な方がうつ病かもしれない場合どのような対処をしたらよいですか?

身近な方がうつ病かもしれない場合は、まずは静養を優先しましょう。心の不調のときこそ、家族や身近な方がゆっくり休息できる環境を支えることが大事です。いつもと違う態度や行動に戸惑うかもしれませんが、励ましや厳しい言葉ではなく、さりげない気遣いによって苦しむ患者さん本人が静養するように見守りましょう。ゆっくり憩いの時間を過ごし、身体の回復を待ってから、病院にいくことをすすめてみましょう。

うつ病の方の話を聞く際の注意点を教えてください。

うつ病の方は、多くの悩みを抱えており、話を聞いてもらうことで自分を理解してもらえたことに喜びや勇気を得ることができます。話を聞く際には、プライバシーが守られ、落ち着いて話せる場所を用意しましょう。うつ病の方の話を聞く際は、相手の感情や体験を理解しようとする態度を示し、話の腰を折らずきちんと聞くことが大切です。また、うつ病の方は自分を過小評価し、自分に価値がないと思い込む無化価値感の症状が現れることがあるかもしれません。その場合は、否定的な言葉かけをしない・不用意に激励してプレッシャーを与えないことにも注意しましょう。否定的な言葉かけを行うと症状に追い打ちをかけ、さらに心理的な窮地へと追い込んでしまう可能性があります。うつ病の回復には長い時間がかかることもあることを知っておき、本人のペースを尊重し、焦らずに支えることが求められます。

医療機関への相談を促した方がよいですか?

以前と違う様子や状態が続くようでしたら、医療機関への相談をすすめてみるとよいでしょう。厚生労働省の全国医療機関検索サイトでは、全国の精神科・心療内科を紹介しています。うつ病などという言葉を使わずに、疲れが抜けない状態がずっと続いているから心配だと気持ちを伝えて受診するよう打診します。初回の受診には家族が付き添うことが望ましいでしょう。また、長時間労働の恐れがある場合は、総合労働相談や労働条件相談など医療機関以外にも相談をした方がよいかもしれません。過重労働がうつ病の発症につながっていると考えられる場合など、家族の方からでも相談は可能です。

パニック障害の原因や症状

頭を抑える女性

パニック障害の原因を教えてください。

パニック障害の原因については、はっきりとした原因がわかっていません。パニック障害の原因としては、ストレスや危険を感知する扁桃核という脳の一部分の働きが弱まり、自律神経の過剰な興奮を起こすことによって生じると考えられています。パニック発作は脳の機能障害が引き起こし、以下3つの脳の部分が関係しているという考えがあります。
  • 自律神経を統御する脳幹部
  • 予期不安は情動などを司る扁桃体を中心とした大脳辺縁系
  • 広場恐怖による逃避行動などには前頭葉
本来は命を守るための脳のアラーム(警告)機構が障害されたことで、発作が起こるのではないかという指摘があります。こうした脳の機能異常を引き起こしやすい環境要因は、本人の性格傾向やストレスフルな日常生活、過去のトラウマ(心的外傷)などです。その他にノルアドレナリン・セロトニン・GABA(r-アミノ酪酸)・グルタミン酸などの脳内の神経伝達物質、体質なども発症と関係しているとされています。

パニック発作が起こるとどのような症状が出ますか?

パニック発作では、強い恐怖や不快感に加えて、以下の身体症状と精神症状のうち4つ以上の症状が突然現れます
  • 胸の痛みや不快感
  • 窒息感
  • めまい・ふらつき・気が遠くなる
  • 死への恐怖
  • 正気を失うことや自制を失うことへの恐怖
  • 非現実感・違和感・外界への遊離感
  • ほてりや悪寒
  • 吐き気・腹痛・下痢
  • しびれまたはピリピリ感
  • 動悸または頻脈
  • 息切れまたは呼吸困難
  • 発汗
  • 振戦またはふるえ
症状は通常10分以内にピークに達し、数分ほどで徐々に改善します。その後は、ひどい発作がまた起こることへの恐怖心が残りますが、医師の診察を受けても身体的な症状はほとんど見られません。

パニック障害の予後不安について教えてください。

予後不安は、パニック障害で見られる症状の1つです。パニック発作になったときの苦しさや怖さから、「また発作が起きたらどうしよう」と心配になることが多く見られます。予後不安を感じるため、以下のような状況を避けるようになります。
  • 電車
  • 飛行機
  • 高速道路
  • 人混み
  • 頼れる人がいない状況
  • 一人で出かけること
  • エレベーター
  • 映画館
混雑している場所やすぐ逃げられない場所、一人になる状況を避けるようになる傾向です。

パニック障害の広場恐怖について教えてください。

広場恐怖とは、広場が怖いという状態ではなく、発作が起こるかも知れないと感じる苦手な場所ができてしまった状態のことです。対象となる場所は患者さんによってさまざまで、複数の場所が苦手と感じるケースもあります。電車やバスなどに乗ることや、映画館などのように囲まれた場所、人混みにいることなどに強い不安や恐怖を感じることがほとんどです。広場恐怖の症状が軽い場合は、特定の1つか2つの状況を避けるだけで、問題なく日常生活が送れるケースもあります。症状が重い場合は、ほとんどの交通機関を利用できず、近場の必要な場所にしか出かけられないこともあります。

編集部まとめ

落ち込む男性 今回は、うつ病の方の顔の表情の特徴・パニック障害の原因や症状などについて解説しました。うつ病やパニック障害は、患者さんが心身の変調を自覚していないこともあり、治療が遅れる傾向があります。今回お伝えしたようなうつ病の表情や顔つきは本人にはわからないため、心療内科を受診するまでには、相当の時間を要することもあるかもしれません。表情の変化やうつ病特有の顔つきや言動が現れた場合には、早めに精神科や心療内科を受診することをおすすめします。 また、うつ病・パニック障害は誰でもなりうる、れっきとした心の病気です。患者さん本人と周囲の方が、そのことをしっかりと理解することが治療への第一歩となるでしょう。

※この記事はメディカルドックにて『「うつ病」を発症すると「顔の表情」はどのように変化する?うつ病の方が使う言葉も解説!』『「パニック障害の症状」はご存知ですか?発症しやすい人の特徴も解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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