新型コロナ、短期間で抗体減少=再感染の可能性
スペイン保健省は、「新型コロナウイルス感染後に、体内で作られる抗体が短期間で減少した」とする研究結果を発表しました。つまり、抗体の減少によって、集団免疫を獲得できない可能性があるということです。ここでは、新型コロナウイルスの抗体減少と集団免疫の獲得について、中島先生に詳しくお伺いしました。
監修医師:
中島 由美 医師
新型コロナウイルスの抗体の減少について
新型コロナウイルスの抗体が短期間で減少することについて、詳しく教えください。
中島先生
スペイン保健省は、2020年7月6日に「新型コロナウイルス感染後に、体内で作られる抗体が短期間で減少した」とする研究結果を発表しました。研究の方法は次のとおりです。
【対象者】
約7万人のスペイン人
【方法】
3か月にわたり抗体検査を3回行う
【結果】
1回目の検査で陽性だった被験者のうち14%が3回目の抗体検査では陰性でした。また、最終的に抗体が体内に残っている被験者は、全体の5%との結果になりました。これは、多くの被験者が短期間で抗体が減少していることを示します。
抗体の減少によって起こり得る問題とは?
新型コロナウイルスの抗体が減少することで起こり得る問題について詳しく教えください。
中島先生
新型コロナウイルスの抗体が短期間で減少した場合、集団免疫による感染拡大の防止効果が期待できなくなります。集団免疫とは、集団の中で特定の病原体に対する抗体を多くの人が獲得することで、集団内での感染拡大が止まる作用のことです。
一度、感染すれば二度と感染しなくなる病原体であれば集団免疫の作用が期待できます。しかし、新型コロナウイルスは短期間で抗体が減少することで再感染する可能性があるとのことですので、集団の中で多くの人が感染しても、いずれ再び感染する恐れがあるのです。
新型コロナウイルスには何度も感染する可能性がある?
短期間で抗体が減少することで、新型コロナウイルスには何度も感染する可能性があるのかどうか詳しく教えください。
中島先生
抗体の減少により、新型コロナウイルスに何度も感染するかどうかは現時点では不明です。抗体は、人の免疫のうち「液性免疫」を見るためのものですが、他にも「細胞性免疫」というものもあります。
さらに、2回目の感染時にメモリー細胞から大量に抗体が生産される「既往抗体反応」もあるなど、免疫系は非常に複雑です。そのため、抗体が陰性でも、再び新型コロナウイルスにかからない可能性があります。
現時点では明確な答えが出ていませんが、警戒は必要でしょう。
まとめ
新型コロナウイルスに感染して体内で作られた抗体は、短期間で減少する可能性があることがわかりました。ただし、抗体が減少したからといって、必ずしも新型コロナウイルスへの感染を繰り返すとは限りません。「抗体検査の精度の問題」、「複雑な仕組みの免疫系」などが関係するため、現時点では判断できないでしょう。新型コロナウイルスへの感染の有無に関係なく、感染症対策を続けていくことが大切です。