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アプリを処方!? 高血圧の「治療用アプリ」が治験開始!

 更新日:2023/03/27

日々新たな開発が進むスマホやタブレットアプリ。これまでアプリの活用が考えられなかった分野にもさまざまな技術やシステムを駆使したアプリが誕生し、私たちの生活は大きく変化しています。
医療分野もその一つ……。2015年にはスマホなどを用いたオンライン診療が解禁となり、さまざまアプリが誕生しています。そして2017年10月には、ニコチン依存症に対する「治療用アプリ」の治験がスタート。対象疾患は増え、2020年には高血圧治療用アプリの第3相臨床試験がスタートします。

そこで今回は、「治療用アプリ」の現状と今後の課題について詳しく解説します。

成田 亜希子 医師

監修医師
成田 亜希子 医師

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弘前大学医学部卒業後は、内科医として勤務。また、国立医療科学院でも研修を積み生活習慣病や感染症予防などの公衆衛生分野の知見を習得。日本内科学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本公衆衛生学会の各会員。

「治療用アプリ」ってどんなもの? メリットは?

「治療用アプリ」とは、医学的知識を搭載したAIが日々の治療データを解析し、患者それぞれに適した治療方法や生活習慣改善などをアドバイスするアプリです。

成田 亜希子 医師成田先生

アプリの結果は担当医にも共有され、医師の知見とAIのアドバイスを融合したよりよい治療・生活指導が可能になるとされています。

では、治療用アプリのメリットについて詳しく見てみましょう。

「治療用アプリ」ってどんなもの? メリットは?

成田 亜希子 医師成田先生

継続した服薬治療が必要な疾患のある患者でも、通院頻度は1~2か月に1回ほど。通院していない期間、治療の継続は患者本人や家族などに任されることになります。このため、治療を自己中断してしまう方、誤った服薬を続ける方、治療意欲がなくなる方も少なくありません。

治療用アプリは通院していない「空白期間」もそれぞれに合わせた治療や生活改善のアドバイスを発信するため、治療継続や治療効果アップに一役買ってくれることが期待できるのです。

医療格差を解消?

治療用アプリは多くの新しい医学的知識が搭載されたAIによる解析が行われるため、医療体制が十分でない地方部でも平等な医療が提供されます。
また、自宅にいながらアドバイスを受け取ることができるため、医療機関が少ない遠隔地の方や通院手段のない方も問題なく医療を受けることが可能に。医療格差解消に大きな効果があると考えられています。

「治療用アプリ」の現状と課題とは?

2017年、ニコチン依存症患者に対する「治療アプリ®」を発表したのを皮切りに、さまざまな疾患に対応した「治療アプリ®」の開発を進めるCureApp社(本社:東京都中央区)。2020年1月には、自治医科大学と共同で高血圧治療用アプリの第3相臨床試験を開始することを発表し、21年中に承認申請を目指すとのことです。承認されれば世界初となる高血圧治療用アプリとなりますが、今後の普及を目指すにあたってはどのような課題があるのでしょうか?

降圧薬を使用せずに血圧下降を目指す?

今回の治験対象となるのは、降圧薬を服用していない本態性高血圧症患者360名です。日本高血圧学会のガイドラインに則った生活習慣改善のアドバイスを受け取るアプリを使用したグループと使用しないグループの血圧の変化を比較。その結果から、治療アプリ®の効果を測る調査が行われます。

成田 亜希子 医師成田先生

高血圧などの生活習慣病は生活習慣の悪化が発症に大きく関与しており、早期の段階では第一に生活改善指導が行われます。今回の治験で使用されるアプリは、患者の状態に適した食事・運動などの生活習慣のアドバイスが継続的に実施されるため、患者の意識・行動変容につながることが期待されています。

治療用アプリの課題と今後について

生活習慣を「監視」することで血圧下降を目指す治療用アプリは、確かに内服治療開始前だけでなく、内服治療を継続している方にも一定の効果があると考えられます。医療格差解消にも役立つでしょう。
その一方で、スマホやタブレットなどを扱うことができない高齢者などには新たな医療格差を生む結果となることも考えられます。また、元々健康リテラシーが低い方はアプリのアドバイスに忠実に従うか…といえば疑問が生じるものです。
このような問題を解決するには、誰にでも操作可能な簡便性を追求し、アプリの治療効果を定期的にチェックするシステム作りが必要となるでしょう。

この記事の監修医師