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フレイルとは?基礎知識やフレイル予防のポイントも併せて解説

 公開日:2025/12/16
フレイルとは?基礎知識やフレイル予防のポイントも併せて解説

「最近、疲れやすくなった」「外出が面倒になってきた」そんな変化を感じていませんか?高齢になると、体力や気力が少しずつ低下していくのは自然なことですが、そのまま放っておくと”フレイル”と呼ばれる状態に進行することもあります。

本記事ではフレイルとは?について以下の点を中心にご紹介します。

  • フレイルとは
  • フレイルの原因
  • フレイル予防の3つの柱

フレイルとは?について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

フレイルの基礎知識

フレイルの基礎知識

フレイルとは何ですか?

フレイルとは、加齢により心身の活力が少しずつ低下し、健康な状態と介護が必要な状態の中間に位置する“虚弱”な状態を指します。英語のFrailty(フレイルティ)が語源で、日本老年医学会が2014年にフレイルという言葉を提唱しました。

従来の虚弱や老衰といった表現は不可逆的な老いを想起させますが、フレイルは介入によって回復可能な状態(可逆性)である点が特徴です。

フレイルは筋力低下や活動量の減少、社会との関わりの減少などが重なって生じやすく、放置すると要介護状態に進むリスクが高まります。

フレイル・サイクルについて教えてください

フレイル・サイクルとは、加齢や病気などによって心身の機能が少しずつ低下し、悪循環に陥ってしまう状態を指します。

例えば、筋力や筋肉量の減少が始まりとなるケースでは、身体を動かす力が弱まり、歩く速度が遅くなったり疲れやすくなったりします。その結果、外出や運動の機会が減って活動量が低下し、消費エネルギーも少なくなります。
活動量が減ると自然と食欲も低下し、食事の量や栄養摂取が不足しがちです。すると、タンパク質などの栄養不足により筋肉がさらに減り、筋力低下が進行していくという悪循環が生じます。

このように”筋力低下→活動量の減少→低栄養→さらなる筋力低下”という流れが繰り返されるのがフレイル・サイクルです。放置すると転倒や骨折、慢性疾患の悪化などを引き起こし、要介護状態に進行するリスクが高まります。

プレフレイルとはどのような状態ですか?

プレフレイルとは、フレイルの前段階にあたる状態で、体力や健康にいくつかの兆候が見られるものの、まだフレイルにいたっていない状態です。
フレイルの基準に基づくと、プレフレイルは5つの項目のうち1〜2項目に該当する場合とされています。

具体的には、体重が6ヶ月で意図せず2kg以上減少したり、疲れやすく感じることが増えたりすることがあります。さらに、歩行速度が遅くなったり、握力が低下したりすることもプレフレイルの兆候です。身体活動が減少し、週に1回も軽い運動やスポーツをしなくなることもこの状態に関係しています。

プレフレイルは、まだ介護が必要な状態ではありませんが、放置するとフレイルに進行するリスクが高まります。

フレイルはサルコペニアやロコモティブシンドロームとは違うのですか?

フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームは、それぞれ異なる概念ですが、密接に関連しています。

フレイルは、身体的、心理的、社会的な側面を含む広範な状態で、健康と要介護の中間に位置する虚弱な状態を指します。

これに対して、ロコモティブシンドローム(ロコモ)は、身体的フレイルの一部として、運動機能の低下により移動能力が損なわれる状態です。つまり、ロコモはフレイルを引き起こす原因のひとつであり、骨や関節、筋肉などの障害が特徴です。

さらに、サルコペニアは、ロコモの原因のひとつでもあり、筋肉量の減少に伴って筋力や身体機能が低下する状態を指します。

フレイルの原因と症状

フレイルの原因と症状

フレイルになる主な原因を教えてください

フレイルの主な原因は、身体的、精神的、そして社会的な要素が複合的に関与しています。身体的要因としては、加齢による筋力の低下が大きな要因です。筋肉量や筋力が衰えると、日常生活での移動や活動が困難になり、フレイルが進行しやすくなります。
また、糖尿病や心疾患といった慢性疾患も身体機能の低下を招き、フレイルを引き起こすリスクが高まります。さらに、ポリファーマシー(多剤併用による薬物の副作用・相互作用)もフレイルの原因となることがあります。

精神的・心理的要因では、特に高齢の方のうつ病が大きな影響を与えます。うつ病は活動意欲を減退させ、生活の質を低下させるため、フレイルを加速させることがあります。また、認知症も自己管理能力を低下させ、フレイルのリスクを高める要因です。

社会的要因としては、孤立や経済的困窮が挙げられます。社会とのつながりが薄れると、活動の機会が減少し、栄養や外出の機会も限られ、フレイルにつながりやすくなります。

フレイルの身体的な症状にはどのようなものがありますか?

フレイルの身体的な症状は、主に筋力や身体機能の低下に関連しています。加齢に伴い、筋肉量が減少し、それにより歩行速度が遅くなったり、握力が弱まったりします。これらは日常生活の動作に支障をきたし、移動や物を持つことが困難になります。また、筋力低下が進行すると、身体を支える力が不足し、転倒や骨折のリスクが高まります。

加えて、身体機能の低下が進むと、不活動が習慣化し、心臓や呼吸器、消化器などの臓器機能にも悪影響を与える可能性があります。
このように、身体的フレイルは筋力や活動力の低下から始まり、全身の機能に広がるため、早期に対策を取ることが重要です。

フレイルの精神的・社会的な特徴はありますか?

フレイルには身体的な側面だけでなく、精神的・社会的な特徴も関わっています。

精神的・心理的フレイルは、定年退職や大切な方との別れなど、加齢に伴うライフイベントの変化によって引き起こされます。その結果、認知機能や判断力の低下、意欲の減退、うつ状態などが現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。また、軽度の認知症や抑うつなどの精神的症状も見られることがあります。

一方、社会的フレイルは、社会とのつながりが薄れることによって生じる孤立感や孤独感が特徴です。高齢になると、家族や友人との交流機会が減少し、ひとり暮らしや経済的な困窮が進行することがあります。その結果、外出の機会や社会的な活動への参加が減り、生活範囲が狭まることで心身に悪影響を及ぼします。しかし、独居でも友人や近所とのつながりがあれば、健康リスクは低く保てることもわかっています。

フレイル予防|栄養・運動・社会参加の3つの柱が大切!

フレイル予防|栄養・運動・社会参加の3つの柱が大切!

フレイル予防のために栄養面で気を付けるポイントを教えてください

フレイル予防のためには、栄養バランスの取れた食事が欠かせません。
筋肉の維持にはたんぱく質が重要です。高齢になると筋肉を作る力が低下するため、成人男性の推奨量(1日65g)よりも多めに摂取することを意識しましょう。

たんぱく質を豊富に含む食材は、肉や魚、豆類、卵などがあります。さらに、筋肉の強化をサポートするきのこ類や魚介類、卵などのビタミンDを含む食材も積極的に摂取しましょう。

また、骨を丈夫に保つためのカルシウム摂取も重要です。乳製品や緑黄色野菜、魚などに豊富に含まれています。栄養素だけでなく、食事全体のバランスにも注意を払い、野菜や果物、全粒穀物、魚介類を取り入れるよう心がけることが大切です。加工食品や食品添加物の摂取はなるべく控え、自然な食材を選ぶことを意識しましょう。食事後の歯磨きも、口腔内の健康を守り、オーラルフレイル予防に役立ちます。

フレイル予防のために運動面で気を付けるポイントを教えてください

フレイル予防には、運動が重要な役割を果たします。
筋力低下を防ぐためには、定期的な運動を取り入れることが重要です。軽い散歩を日常的に行うことは、筋肉や骨を維持するために必要なビタミンDを体内で生成し、血流をよくすることで免疫力を高めます。天気がよい日には外に出て、30分から1時間程度のウォーキングを心がけましょう。
外での運動が難しい場合でも、家のなかでできるスクワットや足踏みなどのエクササイズを取り入れるとよいでしょう。正しい姿勢で行い、椅子の背もたれを使ってサポートしながら行うことが、初心者にはおすすめです。

フレイル予防のためにどのような社会参加がおすすめですか?

フレイル予防には、身体的な活動だけでなく、社会的な交流も重要です。
人とのつながりが希薄になると、認知機能の低下や精神的な不安が増す可能性があるため、意識的に友人や家族と連絡を取り合うことが大切です。電話やオンラインでの会話など、ちょっとした挨拶や雑談を通じて心の安定を保てます。

また、外出や社会的な活動に参加することもフレイル予防に役立ちます。買い物や地域の文化活動、地域イベントへの参加は、身体を動かす機会を増やし、自然と運動不足を解消できます。さらに、趣味活動やボランティア活動を通じて、異世代の方々と交流することで、脳を刺激し、認知機能の低下を遅らせることが期待されます。社会的なつながりを持つことで、心身の健康が維持され、フレイル予防につながるのです。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで、フレイルについてお伝えしてきました。フレイルについての要点をまとめると以下のとおりです。

  • フレイルとは、加齢により心身の活力が少しずつ低下し、健康な状態と介護が必要な状態の中間に位置する“虚弱”な状態
  • フレイルの主な原因には、身体的、精神的、そして社会的な要素が複合的に関与している
  • フレイル予防には、栄養・運動・社会参加の3つの柱が大切

フレイルは誰にでも起こりえるものですが、ちょっとした心がけで予防できます。今日からできることを少しずつ始めて、いつまでも元気な毎日を目指しましょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師