年齢を重ねるにつれて、体力や筋力の衰えを感じることは少なくありません。特に病気やケガなどをきっかけに身体を動かさない期間が続くと、心身の機能が著しく低下してしまうことがあります。
このような状態は廃用症候群と呼ばれ、多くの方にとって深刻な悩みの種です。ご本人だけでなく、介護を担うご家族の負担も大きくなる傾向にあります。
本記事は、廃用症候群の原因や症状について詳しく解説します。さらに寝たきりや認知症との関係性、日常生活でできる具体的な予防法まで幅広くご紹介しますので、ご自身やご家族の健やかな毎日を守るための参考にしていきましょう。
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【経歴】
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長
廃用症候群を予防するための知識

廃用症候群はどのような状態ですか?
廃用症候群とは、長期間にわたって身体を動かさない状態が続くことで生じる心身の機能が低下した状態をさします。病気やケガによる長期の安静状態が、引き金になるケースが少なくありません。具体的には筋肉が痩せ細ったり、関節が硬くなったりする身体的な問題が生じやすくなります。また、精神的な意欲低下や、抑うつ状態を招くこともあります。健康な方でも数日間寝込んだだけで、体力が落ちたと感じることがあるでしょう。廃用症候群は、それがより深刻化した状態だといえます。高齢の方においては進行が早い傾向にあるため、日頃からの注意が求められます。少しでも身体を動かす機会を作ることが、状態の悪化を防ぐポイントです。
廃用症候群の原因を教えてください。
主な原因は、過度な安静と活動量の低下です。骨折による入院や重い病気による長期の臥床などがきっかけとして挙げられます。身体を動かさない期間が続くと、不要な機能だと判断して筋肉や骨を弱らせてしまいます。また、痛みへの恐怖から、動くことを避けることも少なくありません。周囲の過剰な配慮も、要因の一つになりうるため注意が必要です。家族が危ないからと考えて身の回りの世話をしすぎることで、ご本人の動く機会を奪うことがあります。適切なサポートを行いつつ過保護になりすぎない姿勢が、原因を取り除くうえで不可欠です。
廃用症候群の症状を教えてください。
身体面と精神面の両方に、さまざまな症状が現れるのが大きな特徴です。身体面では筋肉量の減少による筋力低下や、関節の動く範囲が狭くなる拘縮がみられます。これにより立ち上がりや歩行が難しくなることが少なくありません。さらに心肺機能の低下や、褥瘡(床ずれ)の発生も症状として挙げられます。精神面においては無気力状態に陥りやすく、認知機能の低下を伴うことも珍しくありません。これらの症状が、互いに悪影響を及ぼし合う点が大きなデメリットです。筋力が落ちて動けなくなると、さらに心肺機能が低下するという悪循環に陥ってしまいます。症状の連鎖を防ぐための早期対策が大切です。
廃用症候群は完治しますか?
進行具合や年齢によって状況が異なるため、一概に完治すると断言することは難しいです。しかし適切な対応と継続的なリハビリテーションにより、症状の改善は十分に期待できます。早期に発見して対策を始めた場合、もとの生活レベルに近づく可能性があります。ただし、高齢の方では回復には配慮が必要です。若年層に比べて、筋肉の合成力が落ちているため、焦らずご本人のペースに合わせて取り組みましょう。無理な運動はケガのリスクを高めてしまいます。専門家の指導を仰ぎながら根気よくサポートを続けることが回復への近道です。
もしも廃用症候群になってしまったらどうすればよいですか?
まずはかかりつけ医や、リハビリテーションに対応している医療機関に相談することが大切です。現在の状態を正確に評価してもらい、適切な対応方針を立ててもらう必要があります。ご家庭では、身の回りのことをご自身で行うよう促すことが挙げられます。着替えや食事など、日常の動作そのものが活動量を保つうえで大切です。しかし痛みや強い疲労感がある場合は、無理をさせない配慮が欠かせません。できない部分はサポートしつつ、できる部分は見守るという姿勢が求められます。ご本人の意欲を尊重しながら支援することが、症状改善への大きな第一歩です。
廃用症候群の治療法はありますか?
主な治療法は、低下した機能を回復させるためのリハビリテーションです。理学療法士や作業療法士といった専門家が、患者さん一人ひとりの適切なプログラム作成に努めます。具体的には関節を動かす訓練や、歩行などの基本的な動作の練習を行います。また、栄養状態の改善もとても重要なアプローチの一つです。筋肉の材料となるタンパク質を適切に摂取することが、機能回復の効果を高めます。包括的な治療で、全身の健康状態の向上に期待は持てますが、ご家族の精神的なサポートも大切です。
廃用症候群と寝たきりや認知症の関係

廃用症候群と寝たきりの関係を教えてください。
廃用症候群は、寝たきりの直接の引き金となるケースが少なくありません。筋肉が衰えて関節が硬くなることで、自力で起き上がったり歩いたりすることが困難になるためです。一度寝たきりの状態になると活動量がさらに減少し、症状が悪化するという悪循環に陥ります。この負のスパイラルを断ち切ることは、決して容易なことではありません。軽い風邪で数日間寝込んだことをきっかけに、そのまま寝たきりになってしまう高齢の方も存在します。寝たきりを防ぐためには日々の活動量を維持することが極めて重要です。日中はベッドから離れて過ごす時間を、少しでも作るよう心がけてみましょう。
廃用症候群と認知症の関係を教えてください。
身体を動かさないことは、脳への刺激を著しく減少させてしまいます。これが認知機能の低下を招き、認知症の発症や進行を早める要因と考えられています。廃用症候群による外出機会の減少は、他者とのコミュニケーションを減らしてしまう大きなデメリットです。社会的な孤立は精神的な落ち込みを招き、抑うつ状態や認知症のリスクをさらに高めます。また、認知症が進行すると活動意欲が低下しやすい点にも注意が必要です。それが結果的に、廃用症候群を悪化させる原因になる可能性があります。身体と脳の両方に適度な刺激を与え続けることが、両者の進行を防ぐ鍵です。
廃用症候群の予防法

廃用症候群を予防するために日常生活でできることを教えてください。
とても手軽で効果的なのは、こまめに身体を動かす習慣をつけることです。家事や趣味の時間を活用し、座りっぱなしや寝っぱなしの時間を減らすよう心がけましょう。テレビを見ながら足首を動かしたり、洗濯物を干す際に少し背伸びをしたりするだけでも十分な運動です。また、規則正しい生活リズムを保つことも、予防において重要なポイントです。朝は決まった時間に起きて太陽の光を浴びることで、心身の活力が保たれます。注意点として、ご自身の体力を過信せず無理のない範囲で継続することが大切です。少しの活動でも毎日続けることが、長期的な予防につながる大きなメリットだといえます。
廃用症候群を予防するためのリハビリテーションはありますか?
予防を目的としたリハビリテーションは数多く存在し、ご自宅でも安全性を重視して行えるものがあります。座ったまま行えるストレッチや、軽い筋力トレーニングなどが代表的な方法です。椅子に深く腰かけて膝の曲げ伸ばしを行うだけでも、太ももの筋肉を維持するのに役立ちます。また地域の介護予防教室などに参加することも、有効な選択肢の一つです。専門家の指導を受けられるだけでなく、他者との交流が生まれるため、精神的なリフレッシュにもつながります。新しい運動を始める際は必ずかかりつけ医に相談し、適切なメニューを提案してもらいましょう。安全第一で取り組むことが何より大切です。
編集部まとめ

ここまで、廃用症候群に関する寝たきりや認知症との関係、予防法を見てきました。難しく見えるテーマですが、重要なのは動かない時間を減らし、早めに相談することです。
廃用症候群は、不活発な生活や安静によって心身機能が広く低下する状態です。筋力低下だけでなく、関節拘縮や心肺機能低下、抑うつ、見当識障害など多面的な変化が起こりえます。
進行すると寝たきりや要介護につながることがあり、認知機能の低下とも関係します。一方で、予防や改善の余地がある点も重要です。
日常生活そのものが予防の場であり、歩く、立つ、会話する、役割を持つことの積み重ねが予防につながります。
体力や持病に不安があるときは、自己流で無理をせず、医師やリハビリテーション専門職に相談しながら進めることが大切です。