目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 介護TOP
  3. コラム(介護)
  4. 介護の入浴介助|基本手順や注意点、負担を減らすコツを解説

介護の入浴介助|基本手順や注意点、負担を減らすコツを解説

 公開日:2025/12/18
介護の入浴介助|基本手順や注意点、負担を減らすコツを解説

入浴は、清潔を保つだけでなく心身のリフレッシュにもつながる大切な時間です。しかし、高齢の方や身体の不自由な方にとっては、入浴が大きな負担や事故の原因になることもあります。そのため、安全に介助するためには、正しい知識と準備が欠かせません。本記事では、入浴介助の基本手順や注意点、無理なく行うためのコツをわかりやすく解説します。

小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

プロフィールをもっと見る
・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

入浴介助前の準備と安全確認

入浴介助前の準備と安全確認

ここではまず、入浴介助を始める前に必ず確認したいポイントや環境づくり、準備物、避けるべきタイミングなどを解説します。事前準備をしっかり行うことで、事故を防ぎ、介助者・被介助者双方の負担が軽くなるため、必ず確認しておきましょう。

入浴介助を始める前のチェックポイントを教えてください

入浴前にまず本人の体調を確認します。顔色が悪い、息が荒い、熱っぽいなどの様子があれば、その日は入浴を控えましょう。血圧や脈拍を測れる場合は、普段より高すぎたり低すぎたりしないかも注視しておきましょう。皮膚に傷や湿疹があるときはお湯がしみることがあるので、痛みの有無を本人に確認すべきです。また、トイレは事前に済ませておくと、途中で慌てる心配がありません。

浴室や脱衣所の環境整備で注意すべき点はありますか?

室温が急に下がらないよう、暖かい季節でも冷えを感じにくい環境にしておくと快適に過ごしてもらいやすいです。タオルや着替えは、手の届く位置に置き、必要なものを探したり取りに行ったりしなくて済むようにしておきましょう。床は水滴を残さず拭いておくと、足元が安定しやすくなります。

入浴介助に必要な道具や準備を教えてください

バスタオルや着替え、シャンプーや石けんのほか、座って洗えるようにシャワーチェアも用意しておきましょう。お湯の温度は、38〜40度が目安で、熱すぎるお湯は身体に負担がかかります。介助者自身も滑りにくい靴やエプロンを身につけ、動きやすい服装にしておくとよいでしょう。

入浴に適さない時間帯や避けるべきタイミングはありますか?

食後すぐや飲酒後、激しい運動の直後などは入浴を避けましょう。血圧や心拍が変動しやすく、身体に負担がかかります。体調が悪い日や発熱、めまいがあるときも無理をせず、清拭で代用することをおすすめします。

また、寒い朝や深夜も体温変化が大きく、事故が起こりやすい時間帯といわれています。入浴はできるだけ体温が安定している日中の時間帯に行いましょう。

介護の入浴介助の基本手順

入浴介助の目的は、身体を清潔に保つだけでなく、気分をリフレッシュしてもらうことでもあります。慌てず、本人のペースに合わせて進めましょう。

入浴介助の基本的な流れを教えてください

入浴は「準備→洗身→入浴→着替え・保湿」の順番で行います。

脱衣所で服を脱ぐ際は、転倒しないように支えながら、身体を冷やさないようバスタオルなどで覆ってあげましょう。浴室に入ったら、急な温度変化を避けるために、まずは、ぬるま湯のシャワーで身体を流します。その後、身体や髪を洗い、湯船にゆっくり浸かります。入浴後はすぐに身体を拭いて保湿をし、着替えを済ませたら水分補給も忘れず行いましょう。

全体を通して、こまめな声かけを行うことが大切です。

身体や髪を洗う際の介助のコツはありますか?

洗うときは、力を入れすぎず、お肌をなでるように優しく洗います。洗う順番は、頭から足先へと上から下に進めると効率的です。

髪を洗うときは、首を支えながら泡がお顔にかからないように注意しましょう。身体を洗うときは、皮膚の薄い部分や関節、傷のある箇所を避け、スポンジややわらかいタオルを使います。洗い流すときはお湯を勢いよくかけず、手で温度を確かめながら、ぬるま湯で丁寧にすすぎます。

湯船への出入りを安全に介助する方法を教えてください

浴槽への出入りは、入浴時のなかでもっとも転倒しやすい場面です。浴槽の縁をまたぐときは、片手で手すりや浴槽のふちをつかみ、もう片方の手で介助者が支えます。立ち上がりやすいよう、浴槽の底に滑り止めマットを敷くのも効果的です。

入るときは、まず足先からゆっくりお湯に慣らし、急に腰まで浸からないようにしましょう。出るときは、お湯の温度差で立ちくらみが起きやすいため、すぐに立ち上がらず、いったん座った姿勢で身体を拭いてから移動するのがおすすめです。

湯船に浸かる時間の目安と注意点を教えてください

湯船に浸かる時間は5~10分程度が目安です。長く入りすぎるとのぼせたり、血圧が下がったりすることがあります。お湯の温度は38~40度くらいのぬるめに設定すると、身体への負担が少ないです。入浴中は、「暑くないですか」「気分は大丈夫ですか」と声をかけながら、顔色や呼吸の変化を確認します。少しでも辛そうな様子があれば、すぐに湯船から出るようにしましょう。

入浴介助で注意すべきリスクと対策

入浴介助で注意すべきリスクと対策

入浴は心身のリラックスにつながる一方で、体調の変化や思わぬ事故の危険もあります。安全を第一に考えて介助を行いましょう。

ヒートショックを予防するための対策を教えてください

ヒートショックとは、急な温度差によって血圧が大きく変動し、失神や心筋梗塞などを引き起こす現象です。特に冬場は、ヒートショックが起こりやすいため注意が必要です。

ヒートショックを予防するには、脱衣所と浴室をあらかじめ暖めておくことが大切です。入浴前に暖房を入れたり、シャワーで壁や床を温めたりしておくと温度差をやわらげられます。いきなり熱いお湯に入らず、手足から順にお湯をかけて身体を温めてから入浴するのも予防の一つです。お湯の温度は38〜40度を目安にし、長湯は避けましょう。

浴室内での転倒を防ぐ方法はありますか?

浴室は床が濡れて滑りやすく、転倒事故が起こりやすい場所です。対策として、滑りにくいマットを敷くほか、手すりやイスを活用しましょう。介助の際は、本人に「右足を上げますね」などと声をかけて動作を確認しながら行います。急がず、1つひとつの動きをゆっくり進めることが大切です。

入浴中の脱水症状を防ぐにはどうすればよいか教えてください

お風呂に入ると汗をかくため、多くの水分が失われます。入浴の前後は、コップ1杯ほどの水分をとるようにしましょう。お茶や水、経口補水液など、常温で飲みやすいものがおすすめです。

もし入浴中にのぼせや息苦しさを感じた場合は、すぐに湯船から出て休ませましょう。高齢の方や持病のある方は、身体の水分調整が難しいこともあるため、介助者が様子を観察しながら、無理のない範囲で入浴時間を短めにすることを心がけてください。

入浴介助中に利用者のプライバシーを守る配慮を教えてください

入浴介助は、身体を見られる恥ずかしさや抵抗感を持つ方も少なくありません。できるだけ本人の気持ちを尊重し、声かけをしながら進めることが大切です。身体を洗うときは、必要な部分だけをタオルで覆い、見えすぎないように配慮します。同性介助が望ましい場合は、できる限りその希望に沿うようにしましょう。

また、ほかの家族が不用意に出入りしないよう、ドアを閉める・声をかけてから入るなどの工夫も大切です。

編集部まとめ

入浴介助で何より大切なのは、安全と安心です。体調や環境を整えたうえで、それぞれのペースに合わせてゆっくり行うことが基本となります。無理をせず、できる範囲を一緒に確認しながら進めることで、介助する側・される側のどちらも心地よい時間になります。清潔を保つだけでなく、入浴を「心のケアのひととき」として穏やかに楽しめるよう、日々の介助に役立ててください。

この記事の監修医師