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介護の清拭(せいしき)とは?正しい手順や注意点、効果的に行うコツを解説

 公開日:2025/12/18
介護の清拭(せいしき)とは?正しい手順や注意点、効果的に行うコツを解説

入浴がむずかしい高齢の方や要介護者にとって、清拭(せいしき)は清潔と快適さを保つための大切なケアです。温かいタオルで身体を優しく拭くことで、汚れを落とすだけでなく、血行促進やリラックス効果も期待できます。ただし、やり方を誤ると冷えや皮膚トラブルを招くこともあります。この記事では、清拭の基本知識から準備、正しい手順、注意点などを解説します。

小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

介護における清拭(せいしき)の基礎知識

介護における清拭(せいしき)の基礎知識

ここではまず、「清拭とは何?」という基礎知識から学んでいきましょう。いつ必要なのか、混同しがちな入浴介助との違いについても解説していきます。

清拭とはどのような介護ケアですか?

清拭(せいしき)は、入浴が難しい方の身体を温かいタオルや蒸しタオルなどで拭いて、皮膚をきれいに保つ介護ケアです。濡れタオルを使って身体の汚れ(汗・皮脂・ほこりなど)を拭き取ることで、清潔を保つことを目的とします。

拭く範囲は身体全体を対象とする全身清拭、あるいは手・足・お顔など部分的に拭く部分清拭があります。また清拭は、身体を濡れタオルで拭くことで温かさや水分を加えるという点で、単に乾いた布で拭くのとは意味合いが異なり、皮膚を傷めにくく、拭くときの刺激も考慮したケア方法です。

清拭が必要になるのはどのような場合か教えてください

清拭は、体調や身体の状況により入浴ができないときに行われます。例えば、病気やけが、手術後、寝たきりの状態、体力の低下などで浴室へ移動できない場合です。また、入浴の間隔が空くときや、汗をかいて皮脂がたまりやすい時期にも有効です。

日中の軽い汚れやべたつきを取り除く部分清拭を行うことで、不快感を軽減し、皮膚の炎症や感染を防ぐことができます。さらに、清拭の過程では皮膚の状態を直接確認できるため、赤みやかぶれ、床ずれ(褥瘡)の初期症状などを早期に見つけるきっかけにもなります。

清拭は、清潔保持だけでなく健康観察としての役割も担う重要な介護ケアといえます。

清拭と入浴介助の違いを教えてください

どちらも清潔を保つためのケアですが、清拭はタオルで身体を拭くことで汚れを落とすのに対し、入浴介助は湯船やシャワーで全身を洗い流す方法です。清拭は居室やベッド上でも行うことができるため、身体への負担が少ないのが特徴です。

一方、入浴介助は湯に浸かることで血行が促進され、よりしっかりと汚れを落とすことができますが、移動や体位の変化が必要になるため体力を使います。体調が安定しているときは入浴介助を優先し、体調が悪い日や入浴が難しいときには清拭で代替するなど、状況に応じて使い分けるのが理想です。

介護で清拭を行う前の準備とチェック項目

介護で清拭を行う前の準備とチェック項目

清拭を行う前には、いくつか事前に整えておくべき項目があります。覚えておきたい注意点もあるため、それぞれしっかりとおさえておきましょう。

清拭を始める前に準備すべきものを教えてください

まず、温かいお湯を入れた容器(バケツや洗面器)を複数用意します。石けん用と拭き取り用に分けておくと、拭くときの切り替えがスムーズです。次に、タオル類を確保します。身体用、顔用、陰部用、それぞれ替えを含めて数枚用意しておきます。乾いたタオルもすぐ使えるように近くに置きましょう。

さらに、使い捨て手袋、清拭料(必要な場合)、着替えも準備しておきましょう。また、拭く部位以外を覆うバスタオルやシーツを用意しておくと、冷え対策になります。

清拭前に利用者の体調や状態を確認すべきですか?

はい、必ず確認しましょう。まず、顔色や呼吸の様子、痛みや不快感がないかを声かけで確かめます。特に、食後すぐや体力が落ちている時間帯は避けた方が安全です。また、食後は消化や血流の変動が大きくなるため、少なくとも1時間程度空けて実施するのが望ましいです。

室温や環境面で注意すべきポイントを教えてください

清拭中はお肌が露出するため、室内は暖かく保つことが重要です。目安として22~25度に保つとよいでしょう。また、窓や扉からのすきま風はできるかぎり遮断し、カーテンを閉めたり戸を閉じたりして冷気が入らないように配慮します。

さらに、拭かない部位はバスタオルなどで覆っておくと、寒さを感じにくくなります。

清拭用のタオルやお湯の適切な温度はどのくらいですか?

お肌に触れるタオルは40〜42度程度が目安です。これより低すぎると冷たく感じやすく、逆に高すぎると火傷のリスクがあります。このため、用意するお湯は少し熱めの50〜55度程度にしておくと、タオルを浸して絞ったときにちょうどよい温度になります。

清拭の正しい手順と各部位のケア方法

清拭はただ拭くだけでなく、順序・力加減・観察を意識して行うことが大切です。ここでは基本の流れと、各部位ごとの拭き方のコツ、注意点も含めて解説します。

清拭を行う際の基本的な手順を教えてください

まずは、清拭を行う前に声をかけて了承を得ましょう。それから体位を安定させ、拭かない部位をバスタオルで覆って身体が冷えないように配慮します。タオルやお湯は手の届く場所に準備しておき、適温に調整しておきましょう。拭くときは、拭いた部分はすぐに乾いたタオルで拭き取り、最後に保湿剤や着替えで体温低下を防ぎます。

身体を拭く順番やコツはありますか?

清拭は、きれいな部位から汚れやすい部位へ進めるのが基本です。一般的な順番は「お顔 → 手・腕 → 胸・お腹 → 脚 → 背中・お尻 → 陰部」です。手足は先端から身体の中心に向けて拭くと、血行促進にもつながります。タオルは常に清潔な面を使い、同じ部分で繰り返し拭かないようにしましょう。

お顔や胸、背中、陰部など各部位の拭き方のポイントを教えてください

お顔は目元を優しく拭き、耳の後ろや首のしわも忘れないようにしましょう。胸やお腹は円を描くように拭いてください。女性の場合は胸の下も丁寧に優しく拭くようにしましょう。背中やお尻は身体を横向きにし、骨に沿って優しく拭きます。脚は足先から太ももへ向け、陰部は前から後ろへ一定方向に拭くのが基本です。

拭き終えたら乾いたタオルで水分を取ります。

清拭中に気をつけるべき点はありますか?

身体が冷えないように、拭かない部位はバスタオルで覆っておき、作業時間は10分前後を目安にしましょう。力を入れすぎず優しい動きで拭くのが原則です。拭いている最中は顔色・表情・呼吸などを観察し、異変があれば中断できるよう注意します。

衛生管理で特に注意すべきことを教えてください

タオルは部位ごとに使いわけ、拭く面はこまめに交換します。石けんや清拭料を使った場合は洗い残しがないように優しく丁寧に拭き取り、最後に拭き取り・乾拭きを徹底します。

介護者自身の手指衛生も怠らず、使い捨て手袋や手洗い・消毒を組み合わせて交差汚染を防ぎましょう。皮膚の赤み・はれ・ひび割れなどを毎回チェックし、異常があれば専門家に相談することも大切です。

編集部まとめ

清拭は、入浴できないときに体を清潔に保つための大切なケアです。正しい準備と順序を守ることで、利用者の快適さと安全を両立できます。優しく丁寧に拭くことで皮膚の異常にも気付きやすく、健康管理にも役立ちます。清拭の目的は清潔を保つことだけでなく、心地よさを届けることでもあります。一人ひとりの体調に合わせ、安心できるケアを心がけましょう。

この記事の監修医師