認知症の方向けの施設とは?入居できる施設の種類と選び方のポイントを解説

認知症の方が入居できる施設を検討する際、「どの施設を選べばよいのかわからない」と悩まれる方は少なくありません。施設の種類は多く、それぞれ役割や対象者、提供されるサービスが異なるため、違いを理解しないまま選んでしまうと、後から「合わなかった」と感じる可能性もあります。
本記事では、認知症の方が入居できる施設の種類や特徴、状態別の選び方、家族が確認しておくべきポイントを解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
認知症の施設選びが難しい理由

認知症の施設選びは、単純に空き状況や費用だけで決められるものではありません。認知症は進行によって状態が変化し、それに伴って必要な支援や生活環境も変わります。
また、介護保険制度のもとで施設ごとに入所条件や役割が定められているため、本人の状態によっては選べる施設が限られる場合もあります。例えば、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、少人数での共同生活を前提としたサービスで、対象者や利用条件が明確に定められています。
認知症の施設選びが難しい主な理由を解説します。
参照:『認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)』(厚生労働省)
認知症の進行度によって適した施設が変わる
認知症は進行に伴って状態が変化するため、同じ施設に居続けられるとは限りません。
例えば、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、少人数での共同生活を通じて自立した生活を支援する施設ですが、一定の生活能力が保たれていることが前提です。
そのため、症状が進行して介護量が増えた場合や、常時の見守りや医療的対応が必要になった場合には、より手厚い介護体制の施設へ移行が必要になるケースもあります。
参照:『どんなサービスがあるの? - 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)』(厚生労働省)
認知症の状態によって入所できない施設がある
介護施設には入所条件があり、本人の状態によっては希望しても入れない場合があります。
例えば、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、認知症の診断を受けていることに加え、要介護認定や共同生活が可能であることなどが条件です。
また、厚生労働省の基準では、著しい行動症状や医療的対応が常時必要な場合など、施設の運営上受け入れが難しいケースも想定されています。
制度上の条件や施設の受け入れ体制によって選択肢が制限される点も、施設選びが難しい理由です。
認知症の方が入居できる施設の種類

認知症の方が入居できる施設には、介護保険制度に基づく公的施設から、民間が運営する住まいまでさまざまな種類があります。役割や対象者、提供されるサービスが異なるため、本人の状態や目的に応じて適切な施設を選ぶことが重要です。
認知症の方が入居できる主な施設の種類とそれぞれの特徴を解説します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、常に介護が必要な高齢の方が生活するための公的施設です。入浴・食事・排せつなどの日常生活の支援に加え、機能訓練や療養上のケアを受けることができます。
また、入所者一人ひとりの意思や人格を尊重し、その方らしい生活を支えることが基本とされています。
入所対象は原則として要介護3以上の方であり、要支援1・2の方は利用できません。さらに、要介護1・2の方も、特別な事情がある場合を除き新規入所は難しいとされています。
参照:『介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)』(厚生労働省)
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目的とした中間的な施設です。病院での治療を終えた後、自宅での生活に戻ることを目指し、一定期間入所してリハビリや介護を受けることができます。
医師の管理のもとで看護やリハビリテーションが提供される点が特徴です。理学療法士や作業療法士などの専門職が関わり、利用者の状態に応じたケアプランに基づいて、身体機能の維持・回復を支援します。
また、食事や入浴、排せつなどの日常生活の介護に加え、診察や投薬などの医療ケアも受けられるため、医療と介護の両方が必要な回復期の方に適しています。
対象は、要介護1以上の認定を受けており、入院治療の必要はないものの、リハビリや看護・介護を必要とする方です。入所期間は概ね3〜6ヶ月と定められています。
介護医療院
介護医療院は、長期的な療養と日常生活の支援を一体的に受けられる施設です。
医師による療養管理のもと、看護や介護、機能訓練などが提供されます。加えて、食事や入浴、排せつなどの日常生活の支援も行われるため、医療と介護の両方が必要な方に適しています。
介護医療院には、利用者の状態に応じて2つの類型が設けられています。Ⅰ型は医療依存度が高い方が、Ⅱ型は状態が安定している方が対象です。
グループホーム
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の方が少人数で共同生活を送りながら支援を受ける施設です。家庭に近い環境のなかで生活することで、安心感を保ちながら日常生活を続けられる点が特徴です。
食事・入浴・排せつなどの日常生活の支援に加え、掃除や調理などもスタッフのサポートを受けながら行います。
また、少人数での生活により、孤立の防止や不安の軽減、精神的な安定につながることが期待できます。
対象は、認知症の診断を受けており、共同生活が可能な要支援2または要介護1以上の方です。なお、要支援2の方は介護予防認知症対応型共同生活介護の対象です。
また、グループホームは地域密着型サービスとして提供されるため、原則として施設と同じ市区町村に住民票があることも条件です。
参照:『認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)』(WAMNET)
有料老人ホーム
有料老人ホームは、民間事業者が運営する高齢の方向けの住まいで、食事の提供や生活支援などのサービスを受けながら生活できる施設です。公的な介護保険施設とは異なり、入居は施設と本人との契約によって決まる点が特徴です。
居室は個室タイプが中心で、一般的なマンションのような居住環境です。入居形態には、入居時にまとまった費用を支払う利用権方式や、月額費用を支払う賃貸方式など複数の種類があり、費用体系は施設ごとに異なります。入居一時金が高額な施設もあれば、初期費用を抑え月額費用が高めに設定されている施設もあります。
サービス内容によって介護付、住宅型、健康型の3つに分類されます。
介護付有料老人ホームは、施設の職員が介護サービスを提供するタイプで、介護が必要になっても同じ居室で生活を継続できるのが特徴です。住宅型は生活支援が中心で、必要に応じて外部の介護サービスを利用します。健康型は自立した生活が前提で、介護が必要になった場合は退去が必要となる点に注意が必要です。
また、一定の条件を満たし指定を受けた施設では、介護保険サービス(特定施設入居者生活介護)を提供しています。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー構造の住まいに、見守りや生活相談などのサービスが付いた高齢者向けの賃貸住宅です。自立した生活を基本としながら、安心して暮らせる環境が整えられています。
「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づいて創設されており、一定の基準を満たした住宅のみが登録されています。住宅としての機能に加え、安否確認や生活相談などの支援サービスが必ず提供される点が特徴です。
主な対象は高齢の方の単身世帯や夫婦世帯で、日常生活は基本的に自分で行いながら、必要に応じて支援を受ける形です。家事支援などの生活サービスが提供される場合もあり、生活の負担を軽減できます。
認知症の状態別・施設の選び方

認知症の方に適した施設は、症状の進行度によって異なります。必要となる支援や生活環境が変化するため、状態に合った施設を選ぶことが重要です。
認知症の進行段階ごとに適した施設の選び方を解説します。
軽度認知症の場合
軽度の段階では、できるだけ自立した生活を維持できる環境が適しています。
日常生活の大部分を自分で行えることが多いため、見守りや生活相談を受けながら暮らせる住まいが選択肢です。サービス付き高齢者向け住宅のように、安否確認や生活支援を受けながら生活できる住まいもあります。
また、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)も、家庭的な環境で生活機能の維持を目指す施設です。
中等度認知症の場合
中等度では、日常生活で介護の必要性が高まり、見守りだけでなく継続的な支援が必要です。
認知症への対応体制が整った施設を選ぶことが重要です。グループホームのように少人数での生活を通じて支援を受ける環境や、介護サービスが充実した有料老人ホームなどを選びましょう。
また、身体機能の低下が見られる場合は、リハビリを行いながら在宅復帰を目指す介護老人保健施設(老健)も選択肢の1つです。
重度認知症の場合
重度では、日常生活のほとんどに介護が必要で、常時の見守りや医療的な対応が求められるケースが増えます。
長期的に生活を支える施設や、医療と介護を一体的に提供できる施設が適しています。特別養護老人ホームは、要介護高齢者の生活の場として位置づけられ、日常生活の介護を中心に支援が行われます。
さらに、医療依存度が高い場合には、長期療養と生活支援を兼ね備えた介護医療院が選択肢となります。
認知症の方の施設選びで家族が確認すべき5つのポイント

認知症の方の施設選びでは、施設の種類だけでなく、実際にどのようなケアが受けられるかの確認が重要です。
家族が施設選びの際に確認しておきたいポイントを解説します。
認知症ケアの専門性
認知症の方への対応は、一般的な高齢者介護とは異なる専門的な知識や対応力が求められます。
例えば、認知症対応型サービスでは、少人数での生活支援や個別ケアを通じて、生活機能の維持を図ることが目的とされています。
そのため、職員が認知症への理解を持ち、本人の行動や心理に配慮したケアが行われているかの確認が重要です。
夜間の見守り体制
夜間にどの程度のスタッフが配置されているか、緊急時に対応できる体制が整っているかを事前に確認しましょう。厚生労働省の基準では、夜間や深夜でも職員配置や見守り体制の構築が求められており、追加の人員配置や見守り機器の設置などが規定されています。
看取り対応の有無
将来的に施設で最期まで過ごすことを考える場合、看取り対応の有無の確認が必要です。
厚生労働省の制度では、看取りを行う施設に対して、指針の整備や職員研修、医療職との連携などが求められています。
施設によっては看取りに対応していない場合もあるため、最期まで同じ場所で過ごせるかを事前に確認しておくことが安心につながります。
面会や外出の取り扱い
家族との関わり方や生活の自由度も、施設選びでは重要です。
面会の頻度や時間、外出・外泊の可否は施設ごとにルールが異なります。本人の生活スタイルを尊重できる環境かどうか、家族が継続的に関わりやすいかの確認が大切です。
特に、生活の質を重視する場合は、柔軟な対応が可能かどうかを見ておきましょう。
医療機関との連携
認知症の進行や体調変化に対応するためには、医療機関との連携体制も重要です。
厚生労働省では、介護施設と医療機関が連携し、24時間連絡できる体制の確保や、重度化時の対応方針の整備が求められています。
また、地域全体で医療と介護が連携する仕組みの整備も進められています。
まとめ

認知症の方が入居できる施設には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などの公的施設から、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間施設まで、さまざまな選択肢があります。それぞれ目的や役割が異なるため、違いを正しく理解することが大切です。
施設ごとにケアの質や体制には差があるため、認知症ケアの専門性や夜間の見守り体制、医療連携などを事前に確認しておくことで、入居後の安心感につながります。
施設選びは、生活の質を大きく左右します。本記事の内容を参考に、ご本人とご家族にとって最適な環境を見つけましょう。
参考文献


