入院中に介護認定を受けるには?申請方法や退院前に進める手続きを解説

入院をきっかけに介護が必要になるケースは少なくありません。退院後の生活を考えたとき、介護認定はいつ申請するべきかと迷う方もいるでしょう。介護認定を受けないまま自宅へ退院すると、家族の負担が大きくなったり、本人が生活の変化に戸惑ったりする場合があります。入院中に介護保険を申請しておけば、退院後に必要な介護サービスの準備が可能です。
本記事では、入院中に介護認定を申請する方法や手続きを解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
入院中でも介護認定を申請することはできる?

入院中でも、介護認定は申請可能です。介護認定の基本とあわせて、入院中でも申請できる理由や、退院前に申請しておくメリットを解説します。
介護認定(要介護認定)の基本
要介護認定は、その方の心身の状況を客観的に評価し、介護サービスの必要度を判断する制度です。認定調査の結果と、医学的視点で作成される主治医意見書をもとに判断します。認定結果に誤りや乖離が生じないよう、コンピュータによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定を経て決定される方針です。
介護保険制度は、介護が必要になった高齢の方を支える公的制度です。認定区分は、日常生活の多くを自力で行える方は要支援1・2、継続した介護が必要な方は要介護1~5に分けられます。介護の必要性が認められない場合は非該当となり、介護保険サービスの対象外です。
それぞれ区分に応じて、1ヶ月に利用できるサービスの支給限度額が決まる点は覚えておきましょう。
入院中でも申請できる理由
入院中でも、介護保険の申請は可能です。退院後の生活をスムーズにするためには、入院中から手続きを進めておくことが推奨されます。
要介護認定は調査や主治医意見書の作成、介護認定審査会による判定など複数の手順を経るため、結果が出るまで一定の期間が必要です。原則として、認定結果は申請から30日以内に通知されます。
そのため、自宅に戻った時点で介護サービスを開始するには、入院中に申請を済ませておくことが重要です。退院後の生活に支障が出ないよう、早めの手続きを検討しましょう。
退院前に申請しておくメリット
退院前に介護認定を申請しておくメリットは、退院から介護サービス開始までの空白を作らず、切れ目のない生活を築きやすくなることです。制度の準備だけでなく、退院後の生活に対する安心にもつながります。
厚生労働省の報告によると、令和4年度下半期における要介護認定の事務処理に要する日数の平均は39.4日でした。退院後に申請した場合、結果の通知が届くまでに時間がかかることがあります。
退院後すぐに介護サービスを利用したい場合は、退院予定の1ヶ月前を目安に申請しておきましょう。
参照:
『要介護認定の認定審査機関について』(厚生労働省老健局)
『仕事と介護 両立のポイント詳細版』(厚生労働省)
入院中に介護認定を申請する方法

入院中に介護認定を申請する方法として、申請できる方や申請先の窓口、必要書類や準備するものを解説します。
申請できる人
入院中の介護認定は、本人だけでなく代理人でも申請できます。申請できるのは、次のような方です。
- 家族・親族
- 医療ソーシャルワーカー
- 成年後見人
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業者
介護認定は、代理申請や、郵送での手続きが可能です。一人暮らしの方やご家族が遠方に住んでいる方の場合は、医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターなどが、中心になって手続きを進められます。
申請先(市区町村の窓口)
介護認定の申請先は、住民票のある市区町村の介護保険担当窓口です。入院している病院の所在地ではないため、間違えないよう注意してください。
窓口の名称は自治体によって異なりますが、一般的には介護保険課や高齢福祉課などです。申請手続きが不安な場合は、地域包括支援センターや医療ソーシャルワーカーに相談するとよいでしょう。
必要書類と準備するもの
介護認定の申請には、下記のものが必要です。
| 書類の名称 | 備考 |
|---|---|
| 要介護認定申請書 | 各自治体の窓口や地域包括支援センター、Webサイトなどで入手できる |
| 介護保険被保険者証 (65歳以上、第1号被保険者の場合) |
市区町村から交付されている |
| 加入している医療保険の保険証 (40~64歳、第2号被保険者の場合) |
健康保険証や国民健康保険証など |
| 本人確認書類 | 運転免許証やマイナンバーカードなど |
| 主治医の情報がわかるもの | 主治医の氏名、医療機関名、所在地など(主治医意見書の作成に必要) |
代理申請の場合は、委任状や印鑑、代理人の本人確認書類などが必要になる場合があります。自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
また、オンライン申請に対応している自治体もあります。詳細は、各自治体の案内やマイナポータルのぴったりサービスで確認できます。
参照:
『ぴったりサービス(介護保険)における標準様式の新規追加について』(厚生労働省老健局)
『マイナポータル(ぴったりサービス)について』(デジタル庁)
入院中に行われる要介護認定の流れ

入院中の要介護認定の流れも、調査や主治医意見書の作成、介護認定審査会の順で行われます。
認定調査(訪問調査)
要介護認定を受けるために必要な流れのひとつが、訪問調査です。市区町村の調査員が病院を訪問し、本人と面会して動作の確認や生活の聞き取りを行います。
本人が「困っていない」と答える場合でも、家族や看護師からの情報を加えることで、より正確な生活状況を把握できます。可能であれば家族も同席し、以前からの変化や補足情報を伝えましょう。
入院中の環境は、自宅と異なり段差が少なく、車いすやベッドなどの福祉用具も整っています。入院中の様子だけでは、退院後の生活を正確に予想できない場合があることを知っておきましょう。
主治医意見書の作成
次は、介護の必要性を示す主治医意見書の作成です。各自治体から依頼を受けた入院中の担当医が、意見書を作成します。申請者が、直接医師と書類の受け渡しを行うことはありません。
入院中の担当医は、退院後の生活まで細かく把握や予想ができていない場合があります。そのため、麻痺や認知症の有無などでできなくなったことや、不安に思っていることを伝えておくと反映してもらいやすいです。
主治医意見書は、退院後の生活に関わるため、病状を把握している医師に依頼しましょう。
参照:『4月からの要介護認定方法の見直しについて』(厚生労働省)
介護認定審査会による判定
市区町村に設置されている介護認定審査会によって、要介護度や要支援度が決まります。調査員による認定調査の結果と主治医意見書をもとに、保健・医療・福祉の専門家が二次判定として審査する仕組みです。
介護サービスの開始には、介護度の認定が必要です。入退院に伴う症状の変動や、自宅退院や施設入居など生活環境が短期間で変化する可能性がある場合は、原則より有効期間が短く設定されます。
退院後に介護サービスを利用するまでの流れ

退院後に介護サービスを利用するには、ケアマネジャーに下記の流れでケアプランを作成してもらいましょう。
ケアマネジャーへの相談
まず、ケアマネジャーに介護保険サービスを利用したいことを伝えましょう。ケアマネジャーは、介護に関する悩みや不安を相談できる専門職です。
ケアマネジャーの主な役割は、次のとおりです。
- ケアプランの作成
- サービス事業者や入所施設との連絡調整
- ご本人の心身状態や生活の把握(モニタリング)
- 介護保険に関する手続き
- 相談対応
退院後の生活全般に関する介護の相談は、ケアマネジャーを通しましょう。
ケアプランの作成
次に、介護保険サービスを利用するための計画を立てます。ケアマネジャーは、ご本人やご家族の意向を聞き、支給限度額を超えないように内容を調整します。退院後の生活に合ったケアプランのためには、ケアマネジャーも病院を訪問してご本人や病院スタッフと面談を行うことが望ましいです。
下記は、退院後の生活を見据えて検討する例です。
| 必要な項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 住宅環境の整備 | 介護ベッドの導入、スロープの設置、段差の解消 |
| 心身機能の支援 | 排泄の状況の確認、訪問介護による入浴介助 |
| リハビリテーションの実施 | 訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションの検討 |
| 医療行為との連携 | 訪問看護による全身状態の確認、往診 |
頻度や内容の組み合わせは個人によって異なるため、必要な介護サービスを組み合わせて利用します。
介護サービスの利用開始
要介護度または要支援度が確定し、ケアプランの内容が決まると介護サービスが始まります。作成されたケアプランに基づき、各サービス事業者と契約を結び、サービスが開始されます。
申請日にさかのぼって適用されますが、認定結果が出るまでは、介護度は不明なままです。
そのため、認定結果が出る前であっても、暫定ケアプランを活用してサービスを始める場合があります。あくまで暫定であり、予定と大きな差が出ないプランを立てることが大切です。
入院中に介護認定を申請する際の注意点

入院中に介護認定を申請する場合、退院のタイミングや状態の変化などに注意が必要です。困った場合は、病院の医療ソーシャルワーカーに相談しましょう。
要介護認定が退院に間に合わない場合の対処法
要介護認定が退院に間に合わない場合は、暫定ケアプランの利用を検討しましょう。認定結果が出ていなくても、予想される介護度に基づいて介護サービスを開始できます。
ただし認定結果が非該当、もしくは想定より軽い・重い介護度になった場合、利用限度額や自己負担額が変わる可能性があります。例えば月の介護サービス費用が10万円だった場合、1~3割負担であれば自己負担は1~3万円ですが、非該当になると全額の10万円を自己負担しなければなりません。
見込み違いによる負担を避けるためには、生命維持や安全確保に必要なサービスを中心に計画しておくことが大切です。
入院中の状態と退院後の状態が異なることもある
入院中の状態と退院後の状態は、異なる場合があります。要介護認定の結果が出るまでの間に、症状の回復や自立が進む可能性があるためです。一方、退院後の環境の変化に適応できず、認知症の症状が悪化したり介助量が増えたりする場合もあります。これは、段差などの障害が少なく常に見守りがある病院の環境と、自宅での生活環境の違いが影響するためです。
退院後の状態と認定結果に乖離がある場合は、有効期間の満了を待たずに区分変更申請ができます。退院後の生活で変化がみられた場合は、ケアマネジャーにも早めに伝えておきましょう。
病院の医療ソーシャルワーカーに相談できる
入院中の介護認定は、病院の医療ソーシャルワーカーに相談できます。医療ソーシャルワーカーは、退院後の生活を見据えた制度の利用や支援の調整を行う専門職です。
例えば、次のような内容を相談できます。
- 退院後の生活や介護サービスの利用
- 介護施設への入所の検討
- 医療費や障害年金、生活保護などの制度利用
- 介護保険の申請手続き
- ケアマネジャーや介護サービス事業所との調整
医療ソーシャルワーカーは、主に社会福祉士などの専門職が担っています。退院に関する不安や困りごとは、相談しておくとよいでしょう。
参照:『職業情報提供サイトjobtag 医療ソーシャルワーカー』(厚生労働省)
まとめ

入院中でも、介護認定の申請は可能です。認定結果が出るまでには一定の期間がかかります。退院後に介護サービスが必要になる可能性がある場合は、入院中から手続きを進めておくことが大切です。
申請や退院後の生活に不安がある場合は、地域包括支援センターや医療ソーシャルワーカーに相談するとよいでしょう。
不安の少ない退院後の生活を迎えるには、余裕を持って準備しておくことが重要です。
参考文献



